無双原理・易―「マクロビオティック」の原点 桜沢 如一 (著), 岡田 定三 (編集)

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無双原理・易―「マクロビオティック」の原点

桜沢如一が提唱し、世界に普及された「マクロビオティック」

すなわち「正食」の基礎となる宇宙観であり、生命観である無双原理について解説する。

桜沢先生が説かれた「食養」は、単に食べ物だけでなく、ものの見方、考え方、感性といった心のあり方や、生活環境や文化、生き方まで

すべてを含んだ総合的な養生法であり、その理論的なバックボーンとなるのが「無双原理」です。

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つまり、マクロビオティックは単なる自然食(穀物菜食)ではなく、宇宙の秩序、自然界の法則としての根本原理(公理)に基づいた、人聞が真の幸福に至る道の一つの入り口だということです。

私は、この公理としての無双原理が、あらゆる面で行き詰まりつつある現代の諸問題に、新たな道筋を見出すために最も有用かつ実際的なコンパス(羅針盤)となるものと

確信するがゆえに、今回あえて原書を現代的な表現に書き換えさせていただきました。

医学や健康法にとどまらない「食養」の思想

本書が底本とした『無双原理・易』は1931(昭和6年)にフランスで出版された、『東洋哲学及び科学の根本原理』の日本語訳です(邦訳は1936年)。

無双原理とは、桜沢先生が提唱し、世界に普及された「マクロビオティック」、すなわち「正食」(以下文脈によって両方を使用) の基礎となる宇宙観であり、生命観です。

ここで、まず初めに述べておきたい点は、現在一般に知られるようになったマクロビオティックは、決して食一元論に基づく玄米健康法ではないということです。

岡田定三

正食の目的は人間の幸福

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正食(食養)の目的の一つが、健康の確立であることは言うまでもないことですが、真の
狙いは万人の幸福と平和の実現にあります。

私の手元に桜沢先生の筆による一枚の色紙があります。1956年、正食協会が発足した
ときに書いていただいたものです。

「五福」

健康と長寿は五福の第一なり。福、禄、安寧、一考終命これにつづく。五福を身につける一行を正食法という。    

これは中国の『書経』という物にある言葉だと伺いましたが、この言葉を引用して、正食が人間の幸福を目指すものだと示しています。

つまり、すべての人の体の健康と心の安らぎを実現する生活法としての正食だということです。

近代科学を照らす「易」

五十世紀以上も昔、アジア大陸の高原を移動しつつ、東ヘ東へと数千年間移動してきた大民族集団の首長であった伏羲という神話的人物が発見した陰陽無双原理は、今日に至るまで訂正されることなく、最大最高の尊敬を受け、多くのアジアの民衆に人類の行路を照らす太陽のように仰がれてきた。

最近、地球の反対側に台頭した西洋科学は、このような無双原理の探究は、ほとんど不可能だとして諦めているが、「科」学が「全」学たるためには、必然的に全ての科学が綜合され、全ての分析的探究が終結を告げ、役目を果たして無用に帰する(すなわち、「科」学が「全」学に吸収消化される)必要がある。

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つまり、科学は、完成された暁には、科学を超えた全学となり、唯一無双の根本原理に昇華されるのだ。

このような予見は、ラプラースやニュートン、ポアンカレなど、西洋の最も優れた科学者たちが一致して述べている。

科学と全学との違いは、「足場」または「材料」と、それによって完成された摩天楼たる「大建築物」との違いに相当する。

西洋科学は今や基礎工事を終え、徐々にその骨を組み、煉瓦を一つ一つ丹念に積み重ねつつある。

天を摩する最高楼が、幾世紀の後に完成するのか—

(それは永久にあり得ないだろうと、ドイツの碩学、デュ・ボア・レーモンは断言しているが)

西洋科学の学徒は、そんな未来の遠さに絶望することなく、熱心に探究を進めつつある
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しかしながら、五十世紀も前に中国大陸の荒野を移住していた原始民族の首長らが、まったく別の方法で、ほかの摩天楼、すなわち「易」を完成していたのである。

古色蒼然たる摩天楼「易」は、その外貌が、あまりに奇怪であり、かつどこからでも、またいつでも眺められるために東洋の人々は親しくなりすぎている。

そして、その所在があまりに遠く、険しさを極めているために登攀しようとする者がいないのである。

太古の摩天楼「易」であれ、また近代の絢燭たる摩天楼「科学」であれ、建築の方法は正反対だが、その目的とするところは、人知の最高を究めんとする試みである。

そこで、五十世紀、あるいはそれ以上昔に完成された摩天楼「易」と、現在、基礎工事時代にある科学摩天楼の建築方法と比較してみると、かなり面白い発見をすることができる。

近代科学という建築の原理をもって「易」の建築の基礎工事や材料を吟味してみると、こ
の怪奇な古色蒼然たる摩天楼の構造が、意外にもはなはだ合理的で、巧妙なものであることを発見する。

詳しくは後章で述べるが、この点が古代建築「易」が優秀であることの証明になり、同時に近代科学の反省にもつながる。

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