食べない、死なない、争わない (人生はすべて思いどおり--伝説の元裁判官の生きる知恵)
食べないから健康、死なないから幸福、争わないから平和。
ベストセラー『食べない人たち』に登場する「不思議なI先生」こと稲葉耶季が遂にベールを脱いだ!
渋谷は公園通りの東京山手教会に生まれ、裁判所で判事を務めるかたわら、ヒマラヤで学校づくりに奔走し、現在は尼僧−−−−本能のままに行動して、すべてを実現させる生き方を余すところなく紹介した一冊。
不食で飢餓をなくせるか
不食について、よく呈される疑問の一つが、「食べずに生きていけるのなら、アフリカなどで餓死する人はいなくなる。なぜ、その知識を広めて餓死を食い止めないのか」というものです。
不食を、単に「食べなくても生きられる現象」ととらえると、当然、この疑問がわいてきます。
しかし、秋山さんがご著書の中で述べているように、不食の重要な要素は、「食べないほうが、心と体にとってどれだけらくで、どれだけ多くの幸福をもたらすかを知ること」です。
そうなるには、心身が満たされていて心地よく、自由であるという前提が必要です。
不食に至る人は、食べ物以外で心身が満たされるという前提があって、結果的に自然に食べなくても生きていける心身のシステムができていくのです。
その前提がないなか、飢餓で苦しむ人たちに不食を広めるのが困難であることは、たやすく想像できるでしょう。
ただし、これは現状をもとにした論理であって、将来的に「人は条件さえ整えば食べ物をとらなくても生きていける」ということが普通に語られ、信じられるようになったときには、本当に飢餓の根本的な解決につながるのかもしれません。
一方、餓死が存在するのは、「ものを食べないと死んでしまう」という思い込みや恐怖が、食べない人を死に至らしめるからだ、という意見もあります。
私たちは物心ついたころから、「食べないと体が弱って病気になり、やがては死ぬ」ということをくり返し刷り込まれ、「食べなくても生きていけるかもしれない」などとは、普通は微塵も考えません。
確かにそれは、食べないこと自体より、食べない恐怖のほうが体を蝕むと、じゅうぶんに思えるほど強力な刷り込みです。
しかし、仮にそうだとすると、まだ思い込みや不食への恐怖がないはずの赤ちゃんも、食べない(ミルクや母乳を飲まない)でいると餓死を免れないのはなぜでしょうか。
仮説ですが、先に述べたような腸内細菌の働きや原子転換、呼吸のシステムやプラーナのとり込みなど、不食のメカニズムが、乳児はまだ未熟とも考えられます。
その期間は、どうしてもミルクや母乳が必要なのかもしれません。
もしも、物心ついたときに、ほんの少し食べさせるようにして、「しっかり呼吸してね」「食べなくて大丈夫よ」「お日さまに当たってね」と自然にいい聞かせていたら、「ああ、食べなくていいのだな」とわかり、不食になれる人は格段にふえるかもしれません。
いずれにしても、不食の道を歩むには、自分の意識の高まりが不可欠と思われます。
もう一つ、不食が簡単には広まらないことの意味を示唆する記述が、『あるヨギの自叙伝』の中にあります。
ヨガナンダが不食を続けるギリバラに、「世のほかの人々にも、食べずに生きられる方法を教えてあげたらいかがですか?」とたずねる場面です。
ギリバラは即座に首を振り、こう答えました。
「創造に関する神様のご計画にむやみに千渉することは、先生のお望みにならないことでございます。
もし私が、食べずに生きる方法を人々に教えたら、お百姓たちはさぞ私を恨むことでしょうし、おいしい果物も、地面に落ちてむだに腐るばかりです。
不幸や、飢えや、病気は、私たちに人生の真の意義を探求させるための、カルマのむちではないでしょうか」
「では、あなただけが何も食べずに生きてゆけるよう選ばれたのは、何のためでしょうか?」と問われた彼女は「人間が霊であることを証明するためでございます」といいました。
「人間は、霊的に向上するにつれて、しだいに、食べ物ではなく“永遠の光”によって生きられるようになるということを証明するためでございます」と(引用部分は原文ママ)。
やがては誰もが歩み始める道だが、いまはまだそのときではないということでしょう。
人間にとって、それが普通になるまでには、宇宙の時間でいえばほんのひととき、人間の時間でいえばまだまだ悠久のときが必要なのでしょう。
しかし、すでにその変化は始まっており、いまを生きる私たちが、人間にとって大いなる変化のときに立ち会っていることは間違いありません。
そのことを楽しみながら、まずは自分にとって無理がなく、幸せな範囲で、少食や不食に取り組んでいけばよいのではないでしょうか。
目次
第1章: 食べない 〜5ヵ月間の不食体験と現在〜
第2章: 死なない 〜死はふるさとに帰るうれしいイベント〜
第3章: 争わない 〜武器を持たないことこそ強い〜
付 章: いまを生きる16の知恵
食べない、死なない、争わない (人生はすべて思いどおり--伝説の元裁判官の生きる知恵) |
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