インプラントが、難病やガン発症の引き金になっている――これは、全国の歯科医どころか、世界の歯学者にとっても初耳でしょう。
ましてや、患者にしてみれば、寝耳に水……。仰天ものとは、まさにこのことです。
インプラントで脱灰したスカスカのアゴの骨に、病原微生物スピロヘータが巣窟を作って棲みついてしまう。
そして、インプラント感染症が、病原体を全身に飛ばし、最後はガンまで引き起こす。
これが、インプラントの底知れぬ落とし穴なのです……。
――反骨のジャーナリストが、インプラントに救う利権の構造をあぶり出し、インプラントに代わる奇跡の療法を体験してみた
まえがき
●インプラントか? 入れ歯か?
「……こうなったら、インプラントしかないですね」
歯科医は、マスクごしに、困ったような苦笑を浮かべる。
「はあ…そうですか」わたしも……ため息。
かかりつけ歯科医のS先生、ふだんは明朗快活なかたですが、今回は、わたしの顔をじっと、のぞき込んでたずねる。
「どなたか知ってる歯医者さんで、インプラントをやっているところ、あります?」
ウーン、と首をひねる。
「あとは、入れ歯ですネ。これは、保険でできますよ」
入れ歯かァ・・・・・・やだなあと、心の中の声。
考えたらわたしも六七歳。自分では若いつもりだったのに、そんなトシになったのか……と、またも、ため息。
思い切って聞く。
「部分入れ歯、あのカギで留めるヤツですね」
「そうです」
「あれってイメージよくないよね。寝てるときコップの水に、こう入れとくんでしょ。なんだか、年寄り臭くて、イヤだなあ」
それと、心配なことを聞く。
「ものを食べてるとき、すぐに外れそう。なんだか、おっかないナ」
「そうそう。外れて飲み込むこともあるんですよネ」
「エ、エーッ!それって、アブナイじゃない!」
そのあとのS先生の言葉に、絶句した。
「部分入れ歯のツメが食道に引っかかって開腹手術した、なんて話もありますね」
「…………!」
「まあ、そんなこと、めったにありませんけどネ(笑)」
S先生はあわてて打ち消したが、わたしの中で、入れ歯の選択肢は、一瞬で消えた…。
●頭に浮かんだ第三の道、「人工歯根」
高齢者で、こういう体験をなさるかたは、多いと思う。
「やはり、インプラントかぁ……」
なかばあきらめかけた頭にフッと浮かんだ。
「そうだ!『人工歯根』があった!」
わたしは雑誌の連載記事で、「人工歯根」を取り上げたことがあった。月刊『ザ・フナイ』(二○一四年―一月号)に記事を書いた。
「マスコミのタブー100連発」シリーズ。タイトルは『インプラントより人工歯根を!』。
それは、入れ歯でもない。インプラントでもない。「さらばインプラント! 決定的“人口歯根”の登場」(同誌、見出し)
歯をなくしたひとにとっては、まさに第三の選択肢だった…。記事を書くきっかけになったのは、偶然にも「人工歯根」に関する医学論文を入手したこと。
こんな治療法があったのか!本当に新鮮なおどろきだった。
それは、ボルト・ナットみたいな機械的インプラント(図1)にくらべて、人間の歯に近い丸みをおびている(図2)
そして、歯がなくなった跡に植えると、食べ物をかむ圧力で、「歯根」の周囲に歯根膜などの組織が再生されて、天然歯のように定着してくるという。
犬などで動物実験をくり返し、見事に歯根膜、歯槽骨などの再生に成功している!
さらに、ヒトの臨床例でも天然歯と変わらない固着を誇っている!
論文の「まとめ」には、多くの臨床例で、患者満足度九五%と明記されていた。わたしは、論文を精読して感嘆し首をふったあとで、首をひねった。
どうして、こんなに素晴らしい歯科医療が、まったく知られていなかったのだろう?わたし自身、者述家として医療関連の本は一00冊余り書いてきた。
医療批評家としての自負もある。だれよりも医療に精通していると思っていたわたし自身も、この論文に出会うまで、「人工歯根」の存在すら知らなかった……。
●温かい笑顔の西原先生と出会う
論文の筆頭には、著者名が明記されていた。西原克成・中桐滋。論文稲査は一九九二年。なんと二○年以上も前に「人工歯根」治療は存在していた!
西原医師は、風の便りでは、六本木方面で、クリニックを開いて「人工歯根」治療をなさっておられる・・・という。
まさに、噂のレベルで、時だけが過ぎていった。
そんなとき、ある出版社から、「西原先生が、船瀬さんに会いたい、と言っておられます」という申し出があった。
「あの、人工歯根の開発者と対談!?」
わたしは、その偶然に、なにか運命的なものを感じた。
編集者の案内で、六本木に向かうと、なるほど、六本木ヒルズを見上げるふもとに「西
原研究所」の建物。二階、三階がクリニック兼研究施設となっている。
「西原です……」
あらわれた白衣の先生は、ニコニコ笑顔の本当に温かいかたでした(写真)。
いつも、笑顔を浮かべておられる。そのお人柄にひと目で魅せられてしまった。
椅子にゆったりと腰かけられた傍らの机の上には、わたしが記事を書いた月刊『ザ・フナイ』が置かれていた。
ああ……先生に、読んでいただけたのだナ…と得心した。
●本を出すと研究所がつぶされる
何度かの面談のあと、先生から、わたしに体験取材して「人工歯根」の本を書いてもらえないか……というお申し出があった。
率直に答えました。
「先生のお名前で、書かれたらいいじゃないですか?出版社をご紹介しますよ」
先生は、首をふり、相変わらずの笑顔で答える。
「イエイエ……わたしの名前で出したら、この研究所がつぶされます」
破顔一笑、肩で笑いながら、スゴイことをさらりとおっしやった。わたしは一瞬、姿勢を正した。
ナルホド……だから、「人工歯根」の存在は圧殺、封印されてきたのか……!
この背景には、まちがいなく見えない大きな力と、深い闇が黒々と横たわっている。
ーー無知は罪である。知ろうとしないことは、さらに深い罪であるーー
これは、わたしの座右の銘である。
「人工歯根」の存在は、ぜひとも全日本国民に知ってもらわなければならない!わたしは確信した。
そして、気づいたら、大きくうなずいていた。
恐いインプラント | ||||
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