薬で病気は治らない 宇多川 久美子 (著)

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薬で病気は治らない (PHP文庫)

年々、花粉症や風邪、頭痛、生理痛、高血圧や糖尿病などで薬を服用している人が増えています。

「薬は合成化合物の王様」。

起こっている症状は体からの悲鳴であり、薬はその悲鳴を人為的に抑えているだけなのです。

医学が進歩しているのに、なぜ患者が増え続けるのか?

薬科大学での4年間はあっという間に過ぎ、卒業後も大学に残り、5年間の研究生活を過ごすことになりました。

とにかく、ほんとうに患者さんのために役立てる一人前の薬剤師になりたいという一心で、自宅と研究室を行き来する毎日が続きましたが、その時期はまだ、患者さんとダイレクトに接するわけではありませんから、なかなか患者さんのために働いているという実感はありませんでした。

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でも、28歳で実際に現場の薬剤師として、病院の薬局窓口で患者さんと接するようになると、私の気持ちは大きく変わりました。

患者さんから、「お薬、すごく効いたよ」「すっきり治った。ありがとね」と言ってもらえたときには、とてもうれしかったし、ほんとうにいい仕事に就けたと心から思いました。

しかし、そんな私が薬剤師としての経験を積んでいくうちに、ある大きな疑問を持つようになっていったのです。

医学は日々進歩しているはずです。

毎年、たくさんの新薬が承認され、すぐれた医療技術が次々と世の中に出てきます。ほんとうなら、病気が治って健康になる人がどんどん増えていくのが当然でしょう。

私自身も、担当医の指示のままに、「これは、新しく発売された、とってもよく効くお薬ですよ。副作用も少ないといわれています」と、患者さんにどんどん新薬を出していました。

もちろん、新薬が出るたびに、それがどんなによい薬なのかは、製薬会社の勉強会に出席したり、資料を読んだりして勉強もしていましたし、その薬を飲むことで、みんなが健康を取り戻せると信じていたのです。

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ところが、病気を抱える患者さんの数も医療費も増加の一途をたどるばかり、1人ひとりの患者さんが飲む薬の種類や量も、年を追うごとに増えていく一方だったのです。

医学が進歩すればするほど患者が増え、薬漬けになっていく……目の前に立ちはだかる矛盾は、薬剤師である私にとって、徐々に無視できない大きな問題となっていきました。

どんなに薬が発達しても終わらない病気との闘い

人類初の抗生物質である「ペニシリン」が、イギリスの細菌学者であるアレクサンダー・フレミングによって発見されたのは、1928年のことでした。

そのとき、人類はすべての細菌に勝利したと人々は考えました。でも、そんな甘いものではありませんでした。

なにしろ、細菌は太古の昔から過酷な環境の中で生きながらえてきた存在です。

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私たち人間が何十兆個もの細胞からできている多細胞生物なのに対して、細菌はたった1個の細胞でできている単細胞生物です。

構造も単純だし、ものすごいスピードで分裂を繰り返しますから、あっという間に変異してしまうのです。

そのため、人間が効果のある抗生物質をつくりだしても、すぐにそれに打ち勝つ耐性菌が出現してきます。

細菌ばかりではありません。

細菌よりも格段に小さく、核しか持たないウイルスはもっとタチが悪い存在です。

最近、よく話題になる新型インフルエンザにしても、日本はタミフルが有効だとして、国が備蓄しているという話もありますが、すぐにタミフルに耐性のあるウイルスが出現しています。

そんな事実を考えると、人類と細菌やウイルスとの闘いにおいては、人類のほうが圧倒的に不利だと言ってもいいでしょう。

もちろん、ワクチンを開発していくことも大切ですし、抵抗力のない子どもや高齢者のために、有効な薬剤を備えておくことも必要かもしれません。

しかし、まずは私たち自身が、細菌やウイルスに感染しない、仮に感染してもそれに打ち勝てるだけの自然治癒力、つまり免疫力を手に入れるほうが賢いと思いませんか?

細菌やウイルスの進化の力に対抗するには、私たち人間も自分自身に備わっている自然治癒力を最大限に発揮する必要があり、そのためにはまず、日常生活を見直す必要があるのです。

薬は免疫力を破壊する

自然治癒力の大もとは免疫力にありますが、その免疫力は、交感神経と副交感神経がちょうどいいバランスのときにいちばん効果を発揮するものです。

ところが、ほとんどの薬は、交感神経を興奮させてしまい、そのバランスを大きく崩してしまいます。

そして交感神経の興奮状態が持続すると、血管が収縮して末梢の血流が悪くなるために、体温が低下してしまいます。

すると鎮痛剤で痛みをとったはずなのに、体温を下げ、血行を悪くすることで、さらに強い痛みが現れてしまいます。

そればかりではありません。

体温が下がると私たちの身体を健康に保っている免疫力が低下してしまうのです。

研究者によって数字は違いますが、体温が1度下がるだけで、免疫力は13~30%も下がるとされているほどです。


(内容例)

●医学が進歩しているのに、なぜ患者が増え続けるのか?
●薬で数値が下がったのは「治癒」ではない
●医療の現場で感じた大きな矛盾
●無農薬野菜にこだわる人が、一方でせっせと薬を飲む
●なぜ薬害問題が起こり続けるのか
●日本の薬は世界で一番割高

薬で病気は治らない (PHP文庫)
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