人間にとって有害な食物とは何か【現代的な食生活】

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小澤博樹 連載コラム

人間の健康維持、病気予防、病気治療、長寿を実現させるために妨げとなる食物とは何か。

それは現代的な食生活そのものであり、また現代栄養学(西洋栄養学)が推奨する食生活である。

まずは、肉食の害から。肉は家畜動物(草食動物)が植物を食べてつくり上げた「製品」だとも言い換えることができる。

人間がこれを食す場合、人間の消化管がまず肉を分解してから吸収することになる。これに対し、人が植物性の食物を食した場合はそのまま消化吸収される。

このため肉に比べ消化機能に負担がかからない。野菜や穀物の消化吸収時間は2~2.5時間、肉は4~4.5時間を要し、その間、肉は人の腸内で腐敗していく。この腐敗によって毒素やアミン類が産生され、人の臓器に蓄積されていく。

これらの毒性物質は腸内でビタミンB群を合成する善玉の腸内細菌を減少させて、悪玉の病原菌を増殖させ、食物中の栄養分を血中に取り込む働きをする小腸の絨毛上皮機能の障害をおこす。

これにより腸での造血機能も障害され、清浄な赤血球が造られず汚血となり、発癌、発病するのである。(千島学説)

コラム「病気を作ったのはその病人自身であると自覚すべきである」でも述べたが、人間は肉食動物とは異なり肉を食すのに適した肉体的構造や歯の形状、消化吸収機能を有していない。

肉食動物の短い腸管は肉を消化する能力に優れ、短時間の内に処理して、残りはすぐに体外へ排泄してしまう。反対に、人間の腸管は長いため、人間が肉食をすれば腸管内で食べた肉が腐敗し、人体に有害な物質を生み出すのは当然のことである。

「腐」という漢字の中の「府」は内臓、はらわた、腸のことで、これに「肉」が入り、腸管の中で「腐る」という意味合いをもつ。

肉類に含まれる飽和脂肪酸やコレステロールが動脈硬化、高脂血症を惹起し、ひいては血流障害を来たして、心筋梗塞や脳梗塞など致命的な病気を発症させることはよく知られた事実である。

人が動物性脂肪を摂取すると、胆汁分泌が促進される。本来この胆汁は脂肪の吸収に必要なものだが、この胆汁成分である胆汁酸は腸内細菌の働きで分解され発癌物質に変化していく。これが大腸癌が増加した原因のひとつとされている。

胆汁は脂肪の消化吸収に関与する消化液である。肝で産生された胆汁は胆のうを通って十二指腸に分泌される。

胆汁には胆汁酸という成分が含まれ、これが大腸まで到達すると、腸内細菌(クロストリジウム属)の働きで二次胆汁酸となり、この二次胆汁酸に含まれるデオキシコール酸という成分が発癌促進物質として作用するのである。

肉食の害

従って人が肉食をすればする程、デオキシコール酸は増加し発癌リスクはさらに高くなる。このように、人間は肉食動物とは違い、摂取した肉を体内で処理する能力は低く、そのため発癌しやすいのである。

ちなみに発癌促進物質とは、それ自体に発癌性はなく他の発癌物質が存在する場合のみ、その発癌性を増強させる物質のことである。

また肉類を高熱で調理すると化学変化を起こし、ベンゾピリンという発癌物質を生成する。現にベンゾピリンは実験動物を発癌させるための材料として使われている。

食餌中に必要以上の蛋白質が含まれていると、その余分な蛋白は肝臓で処理され腎臓から尿素チッ素(BUN)として排泄される。

この時、水とともに体内のカルシウムや他のミネラル成分もいっしょに尿中に排泄されてしまう。

動物性蛋白を多く摂取するイヌイットや北欧の人々(ノルウェー人)はカルシウムの摂取量も多いのだが、世界中で骨粗鬆症(骨のカルシウム分が減少し、くしゃみをしただけでも骨折してしまう程、骨が弱くなる病気)が最も多い。

イヌイットは、1日に蛋白質を100g以上、カルシウムは800mg以上摂取している。

これに反しアフリカのバンツー族は1日に蛋白質を47g、カルシウムを400mg摂取するが、それにも関わらず、骨粗鬆症に罹患する者はない。

このことは後述する牛乳や乳製品がいかに有害無益であることを端的に物語っている。

ニューギニアのパプア族の食餌内容は96.4%がサツマイモで肉食はほとんどしていない。このことは現代栄養学的に考えれば、常に蛋白欠乏のアンバランスな食生活だと言うことになる。

しかし彼らの健康状態はすこぶる良好で、その上、筋骨たくましい体格をしている。

人は動物性蛋白を摂取し続けなければ蛋白不足の栄養失調になってしまうなどという通説は成り立たない。

しかしこのパプア族が4月~9月のお祭の夜、豚を殺して食すという習慣があるが、この時、しばしば壊死性腸炎という致命的な病気を引きおこす。

食肉としての家畜(牛、豚、鶏)は食物連鎖上、上位に位置し、またその育成過程においても多くの化学物質で汚染されている。これも肉食する人間に悪影響を与えるのである。

例えば、農薬栽培や遺伝子組み換え農産物を家畜に与え、抗生物質やホルモン剤を投与するなど。

また、人間の食材としての食肉は、その原料となる家畜が屠殺され食卓にのぼるまでに長時間を要すため、その間に食肉の酸化は進んでいく。

酸化した食物を人間が摂取すれば発病や老化なの原因となる。食材としての魚や牛乳、乳製品についても同様である。

これに対し、無農薬有機農法産の玄米や野菜は調理する直前まで生きており、その酸化は少ない。

第二次世界大戦中、西ヨーロッパでは、食糧に窮乏をきたし、やむなく、酪農製品と肉食の多い食餌から穀物の野菜主体の食餌に切り換えねばならない状態に陥ったが、この時期、こうした国々では心臓病による死亡率は激減している。

現代栄養学では、蛋白質、脂肪、炭水化物を三大栄養素とし、とくに食肉は良質な蛋白源として重要視している。

これら人体の構成要素である三大栄養素はそれぞれ食餌中の蛋白質、脂肪、炭水化物から生成されると信じ、これらを「バランス良く」充足する食餌内容であるべきだと主張している。

またビタミンやミネラルも同様に考えている。

しかし、前述のバンツー族やパプア族の例のごとく、また後述する長寿村の人々、そしてかつての日本人の食餌のように、食物繊維を多く含み精製加工されていない穀物菜食をするだけで、人の人体も精神を十分養うことができ、むしろそれ以上のものを食すことで健康は損なわれる。

牛や馬のような草食動物は穀類や草を食べるだけで、あの様な大きな体をつくり維持しているが、彼らが毎日カロリー計算をしたり、肉食をしたりしてその体を大きくしたわけではない。

彼らに必要な蛋白質や脂肪は彼らが摂取した穀類や草の炭水化物から体内で合成されたものにほかならない。

人体の構造、歯の形状、腸管の長さから考えても、人間に適した食性は草食動物のそれに近いものといえる。むしろ、食物繊維を含んだ炭水化物つまり玄米、野菜、海藻を摂取することにより、体内でそれらが蛋白質や脂肪に変換されていく。

西洋栄養学は酷寒の地、ドイツで生まれた学問である。この寒い気候のもとではカロリーの多い食物を摂取することで寒さから身を守ることができる。

このような環境に生活する人たちのための栄養学を日本のような温暖な気候のもとで生活する日本人にそのまま導入することは不自然であり、間違った考え方である。

ドイツよりさらに北に住むイヌイット族は海獣や魚などを食す肉食の民族である。肉食であるが故に、彼らの寿命は短く、また近代になってアメリカから現代文化が侵入するとともに成人病、慢性病が増加している。

反対に100歳を超える高齢者たちがかくしゃくとして日常生活を営んでいる南アメリカのビルカバンバ、パキスタンのフンザ、グルジアのコーカサスでは、ほとんど肉食はせず、その土地で産した農作物のみの穀菜食である。

日本でも戦後、山梨県の村は長寿で有名であった。

その当時の村の食餌も、その土地でできた農作物のみで肉食はされていなかった。しかし戦後、白米飯と肉を食すようになってから短命村になってしまっている。

これら世界の長寿村に共通したことは、肉食をしない菜食であること。

その土地でできた農作物しか食さないこと。

奥地の村のため現代文明が容易には入り込めないこと。

年をとっても土に接し肉体労働をすること、などがあげられる。

このように肉食をすることは、癌や慢性病を増加させ、長寿を保つことはできない。

また環境破壊にもつながり、まさに百害あって一利なしといえる。

イギリスでは牛肉の不買運動にまで発展し話題となった狂牛病、日本の学校給食制度を震撼させた病原性大腸炎O-157、これらも肉食のもたらした弊害であるといえよう。

イギリスでは ――イギリスだけではないかもしれないが―― 肉牛に栄養をつけて肥らせるという浅はかな考えから、余った羊の肉を牛に肉食させ、自然に反した事をすれば牛も病気になるのは当然のことだ。

そのうえ、成長ホルモン剤、抗生物質、農薬で汚染された飼料を与えられれば病気をより悪化させることとなり、これが狂牛病という形で現れている。

狂牛病は発見した人の名を取ってヤコブ・クロイツフェルト病とも呼ばれ、人に感染すると大脳皮質などが海綿状に変性し、運動機能障害や神経障害、知能低下をおこし、発症後一年以内に死亡すると言われている。

また腸管出血性大腸菌O-157は、1982年アメリカでハンバーガーによる異常な大腸菌性下痢症の流行があった時に、その原因菌としても認められている。

この大腸菌に汚染されたハンバーガー、牛肉、生牛乳、サンドイッチなどを食すと感染をおこす。

日本でも、平成2年、埼玉県浦和市の幼稚園で死者2人を含む268人に集団発生があったことが報告されて以来、平成7年度までに、この菌により10件の集団食中毒等が報告され、合計3人の死者を出している。

O-157による臨床症状は出血性大腸炎と溶血性尿毒症が特徴で、潜伏期間は4~9日、死亡率は5%、とくに幼児や高齢者が侵されやすいと言われている。

前述したように肉食をすれば人の腸内環境を悪化させ食中毒を起こしやすくなるのは当然のことだ。

しかし、これを防ぐために給食設備の消毒を徹底し食品添加物を多投すれば、その化学物質により、人間の方がダメージを受け、ひいては発病発癌していく事になる。

特に学校給食においては、肉食をやめるべきだし、学校給食を実施する事自体危険であり中止すべきだ。

また肉食による弊害はこれだけではない。1kgの食肉を生産するためには、牛肉が11倍、豚肉が7倍、鶏肉が4倍の穀物が飼料として必要となる。

もし人が肉食をやめれば、その余剰となった穀物を貧しい国々の人々や飢餓に苦しむ人々へ供与し、援助することも可能である。

現在の資本主義社会では難しいことなのかもしれないが。食肉用の家畜を肥育していく過程で種々な化学薬品が投与され、それらが家畜の体内に蓄積されている。

抗生物質や抗菌剤、寄生虫駆除剤、ホルモン剤、合成ビタミン剤、アミノ酸、酸化防止剤などである。

肉を加工していく過程でも多種の食品添加物が使用されている。亜硝酸ナトリウムなどの発色剤、増粘多糖類、色素剤、化学調味料なども使用されている。

食肉自体にも毒性があるが、それに多種の化学薬品や化学物質が添加されており、人の健康を害することは明確である。これらは魚肉にも含まれている。

肉食をするということは、動物の死体を食べるということだ。

動物が死ねば、その時点から腐敗が始まり、これらが人の食卓に登る頃にはさらに腐敗がすすんでいる。つまり酸化する。酸化した食物を人が食せば人体も酸化し、発病、発癌、老化の原因となる。

魚類や貝類にはさまざまな汚染物質

これは魚や貝を食べる場合も同様の状況となる。魚類や貝類にはさまざまな汚染物質、特に強力な発癌物質であるダイオキシンや環境ホルモンが含まれている。(表1)

きれいな海――汚染されていない海などすでに地球上には存在しないのだが――で捕れた活きのいい魚だから安全だなどとは全く言えない。

「魚にはEPA(エイコサペンタエン酸)やDHC(ドコサヘキサエン酸)が含まれているため、魚を食せば血栓症や動脈硬化を防ぐ事ができる」と現代栄養学や関連業界は魚食を勧めている。

魚にはEPAやDHCが含まれてはいるが、その他にも重金属(水銀、カドニウム、鉛、銅、ニッケル、亜鉛、ヒ素、クロム、スズなど)やダイオキシン類、環境ホルモン類を高濃度に含んでいる。

たとえば動脈硬化が防げたとしても、癌になっては意味がなかろう。

「北海道産食品の43種162試科の重金属含有量について」と題された研究論文(道衛研所の山本勇夫、長永弘、佐藤芳枝、佐藤千鶴子・著)には次のような検査結果が報告されていた。

これは昭和53、54年度9月に道内の魚類卸売場および漁協より入手された検体にについてその重金属含有量が記されてある。

ヒ素の平均含有量はツブ40.60ppm、ウグイ28.59ppm、クロガレイ8.43ppm、マダラ8.38ppm、ナメタガレイ7.23ppmと高い値を示した。

カドミウムはホタテ0.238ppm、イカ0.205ppm、ツブ0.049ppm。

総水銀量はマグロ、カツオ、サメなどで0.30~1.30ppm、アジ0.241ppm、オヒョウ0.157ppm、アイナメ0.143ppm、マアナゴ0.140ppm、ソイ類0.123ppm。

鉛は各魚種とも全般的に低く、ほとんどが0.04ppm以下であったなどと報告されている。

いずれにしても昭和50年代から今日に至るまで、日本各地で捕獲された魚介類の重金属汚染はさらにすすんでるものと考えられる。

肉や動物性食品は寒帯地域や極地では昔から食されてきた。

しかし現代と違って、汚染の少ない野生動物や半野生動物が主であった。もちろん寒い気候の元では穀物や野菜など植物性の食物が生産できず、肉食に偏った食生活になる。

この様な寒冷(陰性)な気候にうちかって生きて行くためには肉食(陽性)をして陰陽のバランスを摂ろうとするが、前述したごとく肉は毒性があり陰陽のバランスをとる事はできず短命に終わる。

温帯地域や熱帯地域など陽性な気候のもとに生活する人々は植物性の食物(陰性)を食すことでその陰陽のバランスをとることは容易である。

しかし、近代になり化学物質(農薬・化学肥料など)が多様され、それは難しくなった。

まして、温帯・熱帯の地域の人々が肉食を常とすれば、一般的には陽性過多となり、肉体のみならず精神的にも障害を来すことになる。

肉食をすると肉体ばかりではなく精神感情面も不安定となり、猜疑的、自己中心的、被害妄想的、あるいはすぐにキレやすく、攻撃的になる。現代の多くの日本人がそうであるように思考は分析的で硬直化し唯物的となる。

大航海時代(15~17世紀)、ヨーロッパ人は肉の毒消しのため香辛料(コショウ、パプリカなど)を求めアジア、アフリカへと進出していった。

また、肉食により利己的、攻撃的となったヨーロッパ人達は先住民を無視した領土権の主張とともにヨーロッパの優越、非ヨーロッパ地域の従属化をもたらした。

彼らはアジア、アフリカ、南北アメリカを植民地化し、その地域の住民を虐殺し奴隷化し、搾取していった。現在の日本社会も同様、過激で残虐な犯罪が増加している。

従って肉も魚も貝も鶏卵も食すべきではないのである。いままで、人体内に蓄積されたこれらの毒素を体外へ排出できる手段として、有機農法産の食材を使った玄米菜食が最も有効である。

【参考文献】

「食生活、エコロジカルメディスン」    小澤博樹・著  綜合ユニコム・刊

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小澤 博樹

1949年愛知県碧南市生まれ。1974年東邦大学医学部を卒業後、同付属病院にて消化器外科学、一般外科学を専攻。

1984年、碧南市にて小澤医院を開業し、「食養生」を基本とした代替医療を展開し、現在に至る。

現代医学そのものが金儲け主義であると批判。自らは最少の費用で最大の成果を提供しようと模索する。頑固と良心の共存した、清貧な医者である。

マクロビオテック(玄米菜食)による体質改善、免疫力・自然治癒力の向上を図り、病気を治療に導く有床診療所「小澤医院」のHPはこちら→小澤医院

主な著書に「治す医者か、ごまかす医者か―絶対あきらめない患者学」「医者ができること、してはいけないこと―食い改める最善医療」などがある。