茶の湯にみる陰陽五行【宇宙の摂理や秩序を肌で感じ取る】

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マクロビオティック one テーマ 17 (文)ムスビの会主宰 岡部賢二 

宇宙の摂理や秩序を感じられる茶の湯の世界

陰陽五行とは中国から日本に伝わった思想哲学で、宇宙の本質を陰陽の調和と「木・火・土・金・水」のダイナミックな循環だと捉えた考え方です。

日本の伝統文化である茶の湯の世界にもこの陰陽五行の考え方が取り込まれていて、自然の中でお茶を楽しむことで、そこに居ながらにして宇宙の摂理や秩序を肌で感じ取ることができるようになっています。

お茶の道具や所作などは全て陰と陽で表すことができ、その場に集うすべての人や物が小宇宙を創り出し陰陽の調和を取っています。

たとえば、茶室の四畳半という畳の配置そのものがスパイラル状のうずまきになっており、銀河系や太陽系といった宇宙の旋構造と共鳴しています。

ひとつの畳を中心軸(土の気を表す)にし、それを囲む様に4枚の畳(肝、心、肺、腎の気)を並べた五行の配置構造で場が作られています。

さらに茶室の正面の北側に床の間、南面(陽)に客人、北面(陰)に亭主が座して点前をするなど、ここにも陰陽五行の考え方が取り入れられています。

茶の極意から気づくゆらぎの大切さ

また茶室の中には季節の生花や掛け軸などが飾られていて、自然の移ろいや変化を感じることができます。

千利休は茶の極意として「お湯は飲みやすいように熱からず、ぬるからず、夏は涼しげに、冬はいかにも温かく、花は野の花のごとく活け…」というような言葉を遺しています。

このことは、私たちに季節や環境に応じた臨機応変性(環境適応力)という「ゆらぎ」の大切さに気づかせてくれます。

このような場にいると、ゆらぎをなくしかけた心に、ふ~っと風が吹き渡るような心地よさを感じます。

春から夏の熱い時期には風炉釜は床の上に出し(陰)、秋から冬の寒い時期には炉を床の下に切る(陽)ことで陰陽のバランスを取っています。

また昔のお茶菓子は陰陽五行のバランスが取れるような各臓器によい食材が使われていました。

砂糖を使わず、体によい小豆や米粉、寒天、葛などと塩だけで作られた、シンプルで食薬に近いものだったようです。

茶道具の陰陽五行と丸に象徴される女性性

この他にも道具の中にも陰陽五行の「木・火・土・金・水」の考え方が取り入れられており、抹茶や炉縁(ろえん)は木の精を、釜を温める火は炎の力を、陶器の器(ないしは灰)は土のパワーを、金属の茶釜や五徳は金のエネルギーを、茶釜の水や水指(みずさし)は水の気を表しています。

このようにてられたお茶には、五行の調和したエネルギーが込められているのです。

四角四面の茶室の中で使われる道具は、丸型のものが多く、茶器も茶釜も茶も茶入も水指も丸型です。

しかも所作の中には、お茶を点てるときに茶筌を回したり、お茶を飲む前に茶器を回したりするなど丸(輪・和・環)の原理が生かされています。

では、丸は何を象徴するのかというと女性性のエネルギーです。

すべてを丸く収めるといった共生、共存、共感、つながり、きずな、結びといった支え合い、思いやる、戦わない方向性、育む原理を表しています。

四角四面の社会に求められる女性性の原理

今は四角四面の世の中で、角がたち、摩擦が多く、ギスギスした我よしの社会です。

きっと戦国時代を生きた千利休も戦国武将たちの弱肉強食の男性原理に辟易(へきえき)し、四角四面の世の中に丸に象徴される女性性の原理の大切さを訴えたかったのでしょう。

水や植物、自然、丸、螺旋性という女性性の原理に、客人への心配り、気遣い、おもてなしという女性性を高める精神性を盛り込んだ茶の湯は、まさに魂の進化する道を示していると言ってもよいかもしれません。

さらに満月や新月、上弦・下弦の月、春分や夏至、秋分や冬至、立春、立夏、立秋、立冬といったエネルギーの加速する月や太陽の周期(二十四節季)のリズムでお点前をすれば、ある種の宇宙エネルギーに満たされ、人々の中に封印されていた女性性(直感力や創造性、ひらめき、インスピレーションといった能力)が開花する可能性がさらに高まるでしょう。

茶の湯で精神性を高め心地よい未来を

茶の湯の世界は究極のシンプルさの中に美しさを見出す侘び(わび)、静けさの中に豊かさを見つける寂び(さび)の世界です。

千利休は虚飾を一掃した茶室の中で清浄無な精神状態となり、宇宙からさまざまな情報を直接入手する方法(チャネリング・システム)として、時の権力者にわからないように茶の湯の作法として遺したのかもしれません。

われわれも茶の湯の世界を体験することで心地よい未来を創造するための啓示を受け、今の時代に必要な人生観や死生観を身につけたいものですね。

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月刊「むすび」 2017年5月号より

正食協会では、月刊誌「むすび」を毎月発行しています。「むすび」は通巻600号を超える息の長い雑誌です。

マクロビオティックの料理レシピや陰陽理論、食生活、子育てや健康、環境問題など幅広いテーマを取り上げています。

ぜひ、あなたも「むすび」誌を手にとってご覧になってみませんか?

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Profile おかべ・けんじ

大学在学中に渡米し、肥満の多さに驚いて「アメリカ社会とダイエット食品」をテーマに研究。

日本の伝統食が最高のダイエット食品と気づいた後、正食と出会う。正食協会講師として活躍後、2003年、福岡県の田舎に移り住み、日本玄米正食研究所を開設。

2005年にムスビの会を発足させ、講演や健康指導、プチ断食セミナーやマクロビオティックセミナーを九州各地で開催している。正食協会理事。

著書は「マワリテメクル小宇宙〜暮らしに活かす陰陽五行」(ムスビの会)、「月のリズムでダイエット」(サンマーク出版)、「心とからだをキレイにするマクロビオティック」(研究所)、

家族を内部被ばくから守る食事法」(廣済堂出版)、「からだのニオイは食事で消す」(河出書房)、「ぐずる子、さわぐ子は食事で変わる!」(廣済堂出版)、「月のリズムで玄米甘酒ダイエット」(パルコ出版)。

ムスビの会ホームページ http://www.musubinewmacro.com