化学物質が身体と心に問題を引き起こす【自然と化学物質】

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磯貝昌寛の正食医学【第77回】自然と化学物質

自然と身体のリズム

自然を見渡してみると、毎日朝日が昇って明るくなり、鳥や動物たちは動き回り、もちろん人間も活動し、夕日が沈み、暗くなって夜になります。

曇りや雨や雪の日もありますから、毎日が明るいわけではありませんが、夜のように暗い日はありません。

自然は毎日、暗い時と明るい時を交互に私たちに与えてくれます。

もし、私たちが自然と一体的な生活をしていたら、自然のリズムに同調して、曇りや雨や雪の日のように気分もカラッとしない日が時々はあっても、ほとんどは毎日身体も心もスカッと晴れやかで、夜になるとパタッと眠ることができるのです。

朝日が昇っても寝床から起き上がれなかったり、夜になっても眠ることができなかったり、夜中に何度も目が覚めてしまうのは、身体が自然から離れているよ、というサインです。

自然はスマートです。自然はリズムがあって心地よいものです。

私たちの身体と心も、自然に同調していればスマートでリズムある生き方ができるのです。

そんな生き方ができていないとしたら、身体の中に不自然なものが溜まっている、または今も身体に不自然なものを溜め続けているからです。

自然のリズムに同調しているのが自律神経です。自律神経失調症は、身体の中の不自然を警告しているのです。

生活における化学物質

食べ物から不自然なものを取り込むことが、現代では一番の大きな元凶になっています。

動物食や人工的なインスタント食品、化学添加物が使われたお菓子や総菜など、一般的な食料品のほとんどがそれで、自然な食品を探す方が難しいです。

食品だけではありません。洗剤や化粧品、衣類なども自然なものはほとんどなく、界面活性剤や人工染料を使ったものがほとんどです。

住宅においても同様です。人工的な接着剤などを多用した住宅はシックハウス症候群が発症するほどです。

日本の国会の議員会館でもシックハウス症候群に悩まされる議員がいるくらいですから、日本の建築も食品と同様、根本的な問題があります。

PATM( パトム)という病気があります。

身体の毛穴から石油化学物質のガスが出て、周りの人がアレルギー症状を呈するというのです。

皮膚ガステストをすると身体からトルエンなど石油化学物質が出ているというのです。

戦後の経済成長は、化学物質が生活の細部に蔓延した時代でもありました。

PATMは、現代社会の問題が凝縮された病気なのです。

化学物質と人間

私たちの身の回り( 特に衣・食・住)に関しては、自然なものに囲まれて生きることが最も大事なことです。

自動車や電車、飛行機などは移動の多い現代にあっては衣・食・住に次いで触れる機会の多いものですが、これらにも化学物質がたくさん使われています。

長野新幹線が開通したばかりの頃、新車の新幹線「あさま」に乗車した時に、ものすごい化学臭で閉口ならぬ閉鼻したことがありました。

自動車にも化学物質がたくさん使われていますが、化学物質を極力使用せずに自動車を作ろうと努力している海外メーカーもありますから、日本車メーカーにも化学物質の弊害を伝えることは大事なことです。

では、なぜ化学物質が体内に入ると私たちの身体と心に問題を引き起こすのでしょうか。

その昔、実験用のネズミの背中にコールタールを塗ったところ、背中ががん化したという話はあまりに有名です。

ごま油や菜種油などの植物性の油は肌にいくら塗ってもがん化しないのに、石油を塗るとがん化してしまう。

これは至って簡単なことで、化学物質は身体の中でうまく分解できないのです。化学物質の毒素をがん化することで分解解毒しようとしているといったらいいでしょう。

そういう点からすると、化学物質過敏症の方々は「いいものはいい。よくないものはよくない」という、細胞レベルでの判断力が優れている人と言ってよいでしょう。

人間がこれから永続的に元気に暮らしていくには、化学物質との付き合い方を再考しなくてはなりません。

病と化学物質

現代の病気と健康を考えると、化学物質は一番大きな問題を孕んでいます。

化学物質が私たちの身体に入り込んでいなければ、現代にある病気の大半はないでしょう。

生活習慣病の根本原因に化学物質があります。欧米化された食生活が問題といわれますが、ヨーロッパの伝統的な食生活は身土不二に根ざし、病気を多発させるようなものではありませんでした。

病気の根本原因はヨーロッパの伝統的な食生活ではなく、欧米が先駆けた化学物質が取り込まれた食生活にあります。

肉、卵、乳製品、さらには養殖の魚介類などは、成長ホルモン剤や抗生物質抜きには語れません。

家畜は自然な育て方をしていたら安価で毎日食べられるような食品ではないのです。

動物食は、動物食そのものの問題ももちろんあるのですが、それ以上に動物食から取り込まれる化学物質に大きな問題があるのです。

マクロビオティックと化学物質

現代のマクロビオティックでは私たちの身体に染みついたこれらの化学物質を如何に解毒するか、という問題が大きく横たわっています。

生まれた時から化学物質を孕んでいるのが現代人の特徴です。

さらに、生まれ落ちた環境にも化学物質がふんだんに使われ、食品にまで化学物質が入り込んでいる。

宇宙的なものの見方をすれば、汚れた川に生み落とされたのが私たちなのです。

しかし、逆に考えると、汚れた川の掃除にこの世に舞い降りてきたのが私たちでもあるのです。

化学物質を一切使わない生活は、飛躍し過ぎて現代ではなかなか難しい。

もちろん、一切の化学物質を使わない生活をする人がいることは、人類の叡智になります。

ただ、多くの人と歩を進めていくのに現実的に努力できることは、まずは食べ物の化学物質を減らして、なくしていくことです。

食べ物から化学物質が体内に入らなければ、人間は自然な生き方に目覚めます。

自然な生き方が心地よく、元気と本気が湧き起こってきます。化学物質が入らない身体は「やすらぎ」を感じます。

人間は、心底やすらぎを感じた時に本当の力が出るようになっています。

身体の中の化学物質を解毒排毒していくことが、現代のマクロビオティックの大きな使命です。

食養の食べ方と生活に化学物質を排毒する術が詰まっています。

掃除、玄米食、断食は排毒には必須です。もちろん、玄米や断食が合わない人がいますから、体質と体調を考慮することは非常に大事です。

そんな人のために半断食や塩断ち( 無塩食)を勧める場合も多々あります。食に陰陽があるように、化学物質にも陰陽があります。

排毒症状に陰陽の症状があらわれます。

毒素の陰陽に合わせた食と手当て、生活を繰り返していくことが、浄身、浄血、浄心に繋がります。

この世の掃除に舞い降りた人生、キレイになることが何よりの喜びです。

そんな人が一人でも増えたら、この世はきっと本当の意味で楽園になることでしょう。

月刊マクロビオティック 2018年5月号より

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磯貝 昌寛(いそがい まさひろ)

1976年群馬県生まれ。

15歳で桜沢如一「永遠の少年」「宇宙の秩序」を読み、陰陽の物差しで生きることを決意。大学在学中から大森英桜の助手を務め、石田英湾に師事。

食養相談と食養講義に活躍。

マクロビオティック和道」主宰、「穀菜食の店こくさいや」代表。