マクロビオティック one テーマ14 (文)ムスビの会主宰 岡部賢二
大根を使った手当て法
胃腸の働きを助け消化力を高める大根
江戸時代の儒学者で医者でもあった貝原益軒(かいばら・えきけん 1630~1714)は、長生きするための健康法を説いた『養生訓』の中で、大根について「野菜の中でもっとも上等で常に食すべし」とすすめています。
また「大根役者」という表現は、いくら食べても食当たりしないので、「当たらない役者」という意味をかけたと言われています。
大根には消化酵素であるジアスターゼが多く含まれるので、食べ過ぎによる胃のもたれや胸やけに良いとされています。
ジアスターゼとはアミラーゼと呼ばれる酵素で、胃腸の働きを助け、消化不良を解消したり、胃酸をコントロールして胃もたれや胸やけを防止したりする作用があります。
また、胃腸の消化力を高めることで食欲を増進させる効果もあるため、古くから胃腸薬として用いられてきました。
抗酸化作用や殺菌効果 体臭予防にもおすすめ
また、大根にはタンパク質分解酵素のプロテアーゼ、脂肪の消化を助けるリパーゼも含まれているので、焼き魚や天ぷら、卵焼き、和風ハンバーグ、和風ステーキなどにも大根おろしがよく用いられています。
さらに、大根の皮の部分に含まれるビタミンCには強い抗酸化作用があるため、脂肪の酸化やタンパク質の腐敗を防止し、胃がんの予防や胃粘膜の委縮を抑制する効果も期待されています。
大根の辛みの元といわれるイソチオシアネートという成分には、がんの予防やピロリ菌や大腸菌などに対する殺菌効果があると報告されています。
この成分は大根の先端に近い部分ほど多くなりますが、加熱に弱いのが難点です。
大根の酵素やビタミンCも加熱と酸化に弱いので、すりおろしてからすぐに食べることをおすすめします。
この他にも辛み成分の中には動物性食品の臭みを消す成分もあるので、体臭予防にもおすすめです。
高熱の解熱発汗剤に第一大根湯
この大根の効果を最大限に引き出す手当てが第一大根湯です。
大根おろし大さじ3杯に生姜おろし小さじ1杯、純正油大さじ1杯半~2杯を加えて混ぜ、その中に熱々の三年番茶を約2合(400㏄)注いで飲用します。
この手当ては39度を超える高熱の時の解熱発汗剤として用います。
私も風邪をひいた時に第一大根湯を飲み、布団をかぶって寝ていたら汗が大量に出て、すぐに熱が下がりました。
これは大根の繊維質が腸にたまっている腐敗したタンパク質や脂肪を分解し、洗い流したからだと考えられます。
また、醤油の原料であるは発酵によって100種類以上の酵素を作り出す働きがあり、その中には大根と同様にアミラーゼやプロテアーゼ、リパーゼが含まれています。
そこに脂肪分解酵素を含む生姜、毒素の吸着作用や抗酸化作用のある三年番茶が合わさることで、強力な腸の浄化が行われるのです。
肺・大腸の経絡に良い白く辛みのある食材
陰陽五行では、白くて辛みのある大根や生姜、玉ねぎ、白ねぎといった食材は、肺と大腸の経絡に良いとされています。
肺・大腸には人体の下水管と言われるリンパ管が集まっていて、ここに脂肪やタンパク質などの腐敗毒素が目詰まりすると、肺や腸の炎症が引き起こされます。
このリンパ管のヘドロ化が風邪の原因のひとつです。対策としては、辛みのある野菜を用いると、そこに含まれる硫化アリルなどの発汗を促す揮発成分によって、肺・大腸のリンパの汚れを排することができます。
皮膚トラブルにも効果大根おろしも日々活用を
大腸は皮膚の管理もしているので、アトピー性皮膚炎やヘルペス、とびひ、帯状といった皮膚のトラブルにも、毛穴に詰まった汚れのお掃除役として第一大根湯がおすすめです。
ただし、いっぺんに大量のおろし汁を飲用する第一大根湯は比較的陰性が強い手当てなので、心臓病や結核といった過度の陰性体質の方には用いません。
強壮な方でも1日1回、3回以上の連用は避けてください。
私が皮膚病の方におすすめするのは、梅醤番茶に大さじ1杯の大根おろしを入れて飲用する飲み方です。
これであれば、手間ひまがかからず、すぐに実践できて便利です。
また、量が少ないので、連用しても問題ありません。できたら生姜も少量しぼって入れるとさらに効果的です。
大根おろしは手当て法だけでなく、日々の食事の中でも活用してくださいね!
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月刊「むすび」 2017年2月号より
正食協会では、月刊誌「むすび」を毎月発行しています。「むすび」は通巻600号を超える息の長い雑誌です。
マクロビオティックの料理レシピや陰陽理論、食生活、子育てや健康、環境問題など幅広いテーマを取り上げています。
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Profile おかべ・けんじ
大学在学中に渡米し、肥満の多さに驚いて「アメリカ社会とダイエット食品」をテーマに研究。
日本の伝統食が最高のダイエット食品と気づいた後、正食と出会う。正食協会講師として活躍後、2003年、福岡県の田舎に移り住み、日本玄米正食研究所を開設。
2005年にムスビの会を発足させ、講演や健康指導、プチ断食セミナーやマクロビオティックセミナーを九州各地で開催している。正食協会理事。
著書は「マワリテメクル小宇宙〜暮らしに活かす陰陽五行」(ムスビの会)、「月のリズムでダイエット」(サンマーク出版)、「心とからだをキレイにするマクロビオティック」(研究所)、
「家族を内部被ばくから守る食事法」(廣済堂出版)、「からだのニオイは食事で消す」(河出書房)、「ぐずる子、さわぐ子は食事で変わる!」(廣済堂出版)、「月のリズムで玄米甘酒ダイエット」(パルコ出版)。
ムスビの会ホームページ http://www.musubinewmacro.com