磯貝昌寛の正食医学【第124回】食養指導録 肝臓が悲鳴をあげている
肝臓のはたらき
肝臓には主に3つの働きがあるといわれます。
◎胆汁の生産
◎養分の貯蔵と流通
◎毒素の分解
食物中の脂肪分はすい臓から分泌される膵液によって消化分解されるのですが、脂肪分は炭水化物やタンパク質などよりも分解されにくく、その分解を補助するのが胆汁です。
膵液によって消化分解された脂肪酸を腸内でより吸収しやすい形に変えるのも胆汁の働きです。
脂肪分の摂り過ぎが肝臓に負担をかけるというのはこのためです。
脂肪には、植物性脂肪と動物性脂肪がありますが、消化分解が圧倒的に難しいのが動物性脂肪です。
さらに動物性脂肪に含まれるホルモン剤や抗生物質などの毒素が肝臓に強烈なダメージを与えます。
小腸で造られた血液と小腸から吸収された養分は、門脈を通って肝臓に送られます。
肝臓は、それらの血液と養分を貯蔵したり、必要に応じて全身に巡らせます。
さらに肝臓は、細胞から出た有害なアンモニアを害の少ない尿素に作り替える働きもしています。
尿素はその後、腎臓に運ばれ、ろ過されて尿として排泄されます。
肝臓に余力のある時は、食物から取り込まれた毒素は肝臓が分解してしまいますが、余力が少なくなってくると毒素は肝臓に溜め込まれます。
さらに余力がなくなってくると、毒素を分解できなくなってしまいます。
現代人の肝臓は、その多くが悲鳴をあげています。
肝臓で毒素を分解できなくなってくると、肌が黒ずんだり、シミ、そばかす、吹き出物が増えてきます。
毛穴が目立つのも、肝臓の悲鳴で心臓に負担のかかっていることを表します。
常にイライラしていたり、焦燥感が強く、何かに追い立てられているような感覚も肝臓からの悲鳴です。
肝臓を癒す食養生
マクロビオティックでは玄米菜食が基本ですが、肝臓に問題のある人は玄米の食べ方に注意しなくてはなりません。
圧力鍋で炊いた玄米を1日3食食べていると、副食との組み合わせ次第では、さらに肝臓に負荷をかけます。
玄米のぬかの部分に脂肪分が豊富ですから、いくら良質な脂肪であっても「過ぎたるは及ばざるが如し」です。
肝臓に問題のある人は、玄米に大麦を混ぜて土鍋で炊いたり、玄米に大根を入れて炊くのもよいです。
玄米だけのご飯よりも、麦入り玄米や大根入り玄米ごはんの方がおいしいようであれば、その方がよいでしょう。
お粥にすればさらに肝臓の負担は減ります。
玄米そのものを「おいしく」感じない人は、分搗き米やめん類を主体に食べるのもよいでしょう。
分搗き米にも押し麦や丸麦などの大麦を入れた方がよいでしょう。
めん類の粉は、日本の伝統的な在来の地粉を使うのがベストです。
海外のものであれば古代小麦のめん類がよいです。
さらに肝臓が悲鳴をあげている人は、マクロビオティックの基本食ではなく、野菜を大量に摂る陽性向けの排毒食が合っています。
旬の野菜をサラダで食べたり、蒸したり、茹でたり、煮たり、好きな調理法で大量に食べます。
野菜スープや野菜ジュースもよいでしょう。飲み物の方が野菜をたくさん摂れるのでお茶代わりに飲むのもよいです。
干しシイタケや干しマイタケを煮出したスープも肝臓の解毒にはとても合っています。
進行した肝臓がんの人が、キノコのスープと野菜スープを大量に摂ることで、肝臓の炎症が消えて、諸症状が緩和したこともあります。
あと何カ月命が持つかわからない、といわれた人が、すっかり元気になってもう10年以上にもなる、という実例もあります。
三年番茶やハーブティーも口に合うものをたくさん飲んでもよいでしょう。
B型肝炎ウイルスが消えた人
マクロビオティックを10年近く続け、B型肝炎のキャリアが消えたという人もいます。一般的にはB型もC型も一度罹ると、発症はしなくてもキャリアは消えない、ということになっています。
しかし、実際に消えた人がいるのです。
無双原理とは「変わらないものはない」という、変化の原理です。この世は絶対のない、常に「うつりかわる」世界です。
要は、B型肝炎ウィルスが住めない肝臓になればいいのです。肝臓は、とても活発で代謝のよい臓器です。
食養指導の経験上、肝臓の病気は治りやすい、ということを実感しています。肝炎も肝硬変も肝臓がんも、食養で治った人がとても多いのです。
肝臓の病気のほとんどが動物性食品の摂り過ぎですから、肝臓の食箋は、純正の穀物菜食が一番です。一切の動物性食品を摂らないことが大事です。
動物性食品や添加物の入った食品から作られた細胞が肝臓から消えれば、肝炎ウィルスは肝臓に必要ありません。
肝炎ウィルスは肝臓の毒素を浄化しようとして存在してくれているのですから、有り難い存在です。
自分の体に合ったマクロビオティックを根気よく続けていれば肝炎のキャリアも消えることを、その方は証明してくれたのです。
肝臓と筋肉
中国の陰陽五行では春と肝臓は密接な関係があると説かれています。
経験的、直感的に優れた中国古代の人々が確立した五行説ですが、現代的に解釈しても春と肝臓の関係は強いものだと納得させられます。
春は寒い冬を過ぎ、木々が次々と芽吹くように体の細胞も動きが活発になります。
肝臓は体の中で一番大きな臓器であり、細胞がぎっしりと詰まった臓器です。
心臓、腎臓、すい臓などとも比べても倍以上大きな臓器です。大きな臓器であればあるほど、春になり動きが活発となる細胞の活性もより高まります。
結果的に、腎臓の細胞よりも肝臓の細胞の方が、動きが活発になる量が圧倒的に多いのです。
そして、私たちの体を保護してくれている「筋肉」も、ある意味においては「臓器」とも考えられます。
陰陽五行では肝臓と筋肉も密接な関係があると考えています。実際に、筋肉は第二の肝臓的な役割もあります。
アンモニアの分解、たんぱく質の貯蔵、血糖値を下げる、マイオカイン( 筋肉から分泌されるサイトカイン(※)の総称)の分泌など、筋肉は肝臓と同じような代謝臓器としても働いているといいます。
筋肉が減ったり、活性の度合いが低下したりすると肝臓の負担が増すのです。
筋肉が少ない人が肝硬変や肝臓がんになると、通常よりも寿命が短くなる傾向もあるようです。
人間の筋肉の七割は下半身に集まっているようですから、何といっても「よく歩く」ことです。歩くことで筋肉が活性化して肝臓を助けてくれます。( 次号へつづく)
月刊マクロビオティック 2022年4月号より
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磯貝 昌寛(いそがい まさひろ)
1976年群馬県生まれ。
15歳で桜沢如一「永遠の少年」「宇宙の秩序」を読み、陰陽の物差しで生きることを決意。大学在学中から大森英桜の助手を務め、石田英湾に師事。
食養相談と食養講義に活躍。
「マクロビオティック和道」主宰、「穀菜食の店こくさいや」代表。