糖尿病合併症 自力で正す!血糖値を下げる!  重藤 誠 (著)

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糖尿病合併症 自力で正す!血糖値を下げる! 薬を減らすための生活習慣、GLP-1を増やして血糖改善。 (EIWA MOOK)

糖尿病と合併症は治らない病気ではない。

自覚して上手に血糖をコントロールすること。

もはや糖尿病は、昔のイメージのような「不摂生の結果起こってくる病気」ではなく、「社会構造が変化した結果、激増した病気」になっており、個人のレベルでは解決が難しいことも事実です。

しかし、個人の力でできることはたくさんあります。糖尿病は、患者さんの知識量が多いほど経過がよいことがわかっています。

生活する上で、何に気をつけたらよいのかを知っていれば、良好な血糖コントロールを行い、
合併症を起こさずに、健康な人と同じように生活できます。

また、糖尿病が見つかった時点で合併症があったとしても、それを進行させることなく日常生活をおくることができます

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日本人は糖尿病になりやすい

日本では過去50年間で2型糖尿病が約50倍に増加しました。一方、

欧米では約10倍と増えてはいますが、日本と比べて緩やかです。

欧米人に比べ、日本人の摂取カロリーは少なめで肥満者も目立たないのに2型糖尿病が多いのは、日本人が民族的に2型糖尿病になりやすい体質を持っているためだと考えられます。

日本人は歴史的に多くの飢饉を経験してきており、飢餓に強い人たちが生き残ってきました。
食事の内容も、少なくとも弥生時代以降は、穀物中心の低カロリー低脂肪なメニューが中心でした。

その結果、日本人の遺伝子は少食でも生存できるように、エネルギー効率が非常に高くなったと考えられます。

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数千年かけて適応してきた環境が、わずか半世紀の間に激変し、高カロリー高脂肪食になった結果、体が適応しきれずに糖尿病が爆発的に増えました。

遺伝的素因が日本人と変わらない日系2世のアメリカ人は、現地の白人と比べると数倍以上も糖尿病が多いという事実からも、白人よりも日本人のほうが圧倒的に糖尿病になりやすいことなどがわかります。

ただし、日本でも肥満糖尿病は増えてきています。

日本人の遺伝子も徐々に飽食の時代に適応しているのかもしれません

糖質制限の問題点。

とくに、日本で流行っている糖質制限は、糖質(炭水化物)さえ摂らなければステーキや焼き肉は食べ放題、カロリーは気にしなくてよいという認識のため、高脂肪・高たんぱく食になっています。

動物実験でも「高脂肪食」のグループをつくって代謝を狂わせるというデザインがあるくらいで、高脂肪食の害は明らかです。

心筋梗塞、脳梗塞が増えることはもちろん、がんのリスクも増加することが、多くの論文で報告されています。

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さらに、皮肉なことですが、高脂肪、高たんぱく食は、2型糖尿病の発症率を37%高めるという報告もあります。

穀物を摂らないと寿命が短くなるというデータもでており、どう考えても長期的にはマイナスが多いといってよいでしょう。

環境負荷が高く継続できない

肉を多く食べる食事は、環境負荷が高くなります。肉類の生産は、環境負荷が非常に高く、牛肉を1㎏作るのに穀物8〜16㎏作るだけのエネルギーを消費します。

世界の飢餓人口が8億5千万人の現在、肉中心の食事が継続可能とは思えません。環境負荷の点からも、穀物食が最も合理的です。

仮に、科学的に低炭水化物食がすばらしい健康食で病気も治ることが証明されたとしても、世界でそれができる人はごく一部でしかありません。

本当の健康食というのは、世界中の人間が実行可能であるべきだと思うのです。自分さえ好きなだけ肉を食べ、その分、どこかで飢える人間が増えるのを顧みない方法論が正しいとは思えません。

低炭水化物食の始祖 アトキンス医師

アメリカ人医師・循環器学者のロバート・アトキンス博士は、通常必要な炭水化物量200〜300gを約10分の1にする食事法を提案した最初の人です。

2002年のニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスンに、「炭水化物を減らし、
たんぱく質を十分に摂る食生活を送れば、副作用なく体重を減らせる」という研究報告が掲載され、アメリカで大ブームになりました。

現在、日本で宣伝されている低炭水化物系の食事法は、多かれ少なかれ、これがもとになっています。

当時、アメリカ人の半数が試したともいわれるアトキンス式ですが、ブームの真っただ中の2003年4月に歩行中に倒れ、72歳で突然死しています。

アトキンス博士は心筋梗塞、鬱血性心不全、高血圧の既往歴があり、死亡時の体重は117㎏だったことが明らかにされました。

入院前は88㎏だったともいわれていますが、それでも肥満しています。一例から話をするのはあまりよいことではありませんが、現在までに明らかになった事実と矛盾はありません。

その後、アメリカでは低炭水化物食は急速に廃れ、日本食がもてはやされるようになりました。

日本のブームが終わるのも時間の問題だと思います。

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