おなかは第二の「脳」
体に不快感や痛み、違和感がある「不定愁訴」の多くは腹部に起因します。「不定愁訴」のほとんどは、おなかをさすればなくなります。
手のひらでおなかにやさしい弱刺激を与えると、内臓の働きが活発になって自律神経が整えられ、「不定愁訴」が解消していくのです。おなかをさすり続けるだけで、あなたの痛みやつらさから解放される日も遠くはないのです。
自律神経の集まる「第二の脳」
小さな子どもがぐずっているとき、母親が無意識におなかや背中をさすってなだめるという行為が古来より伝えられています。
あるいは、急におなかが痛くなったときに、おなかに手をあててなでさすっているうちに落ち着くこともあります。
これらはごく自然に行なわれていることばかり。ではなぜ、おなかをさすると気持ちも痛みも落ち着くのでしょう。
不安やイライラしているとき、急におなかが痛くなったりしたときに、おヘソの上あたりの「みぞおち」をグーッと押すと、奥のほうに重苦しい感覚があるのがわかります。
じつは、ここは「第二の脳」といわれる太陽神経叢が存在する場所なのです。
おなかには、胃腸をはじめとする多くの臓器が収納されています。これらの臓器は、誰がどのように働かせているのでしょうか。
食事のとき、人は自分の意思で料理を噛んで飲み込みます。また、食後にはトイレに行き、自分の意志で排尿排便を行ないます。
ところが、このほかの消化や吸収などといった臓器の働きは、自分の意志とは無関係に自律的に進められていくのです。このとき、臓器がうまく働くようにコントロールしているのが「自律神経」です
そして、この「自律神経」をコントロールしているところが、「第二の脳」と呼ばれる「太陽神経叢」なのです。
小腸と大腸の働きが弱まると、病気になりやすくなる
おなかにある臓器の中でも、人間の免疫機能の約七〇パーセントを担っている、とりわけ重要なものが小腸と大腸です。小腸と大腸の機能が低下して働きが弱くなると、カゼをひきやすくなったり、病気にかかりやすくなったりします。
また、近年問題になっているアレルギー(代表的なものはアトピー性皮膚炎)も一因といえるでしょう。
心配ごとや悲しいできごとがあったときのことを、思い浮かべてみてください。食欲がなくなったり、何を食べても胃が重くてもたれる状態になったり、背中が張ったりすることが稀ではありません。
そんなときは、おなかを支配している交感神経はたかぶっていて、おなか全体の働きは低下しています。
内臓の働きも低下していますから、食べたものが小腸にたどりついても、十分に消化吸収されないままに大腸に運ばれます。
小腸から大腸に移行する部分は回盲部といいますが、十分に消化されない食べ物は、回盲部に滞留してしまうのです。
そうすると、下腹部が張って重苦しさを感じ、軟便や下痢を起こします。おなかの調子を整えるためにも、常に自律神経が正常に機能するような状態を継続させることが、健康を保つ秘訣となります。
全身を整える「大腸&小腸さすり」
「ヘソさすり」という本のタイトルになっていますが、おヘソというのはあくまでおなかの中央点の指標であって、おヘソそのものをさわったりなでたりするのではありません。
おヘソを中心にしたおなかのなかを意識するのです。
なかでも、主に小腸と大腸のあるエリアが重要です。免疫機能の七〇パーセントを担う小腸や大腸の上をさすることをイメージしながら、スルスルと円を描くようにおなかをさすっていきます。按撫することで弱った小腸と大腸が改善し、病気になりにくくなります。
また、小腸の左上の曲がり角部分を「空腸」、右下腹を「回腸」といいます。
消化された食べ物が滞留する時間が少ないことから空っぽの腸「空腸」、小腸から大腸に移行する回盲部を含む部分は「回腸」と呼ばれます。
小腸は長い臓器ですから、厳密な区分けはできませんが、おおむねそのあたりの位置を指しています。
●さすり方
❶まず、仰向けに寝ます。内臓はおなかの中にぶら下がるように入っていますので、立っているときには本来の位置からやや下がってしまうのです。「ヘソさすり」は、基本的に仰向けに寝た状態で行ないましょう。
❷次に、手のひらをおなかにあてて按撫します。やさしくなでるようにさすり、強く押さないように注意します。さする方向は、常に時計まわりです。
❸効果はすぐに表れますが、不定愁訴をしっかり改善させるためには、毎日続けるようにすることが大切です。
つらい症状がなくなる! ヘソさすり |
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