【薬味の効用】体験的に培われてきた日本人の知恵

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マクロビオティック one テーマ (文)ムスビの会主宰 岡部賢二

陽性過多の動物性食品に陰性の薬味でバランスを

動物性食品を食べる時には、薬味の使い方を工夫することで、胃腸への負担を減らすことができます。

そのためには、陰陽の原理を知っておくことが大切です。

陰性の食物とは拡散性エネルギーの強いもので、成分的にはカリウムを多く含み、「冷やす」、「ゆるめる」、「溶かす」といった性質があります。

反対に陽性な食物とは収縮性が強くてナトリウムを多く含み、「温める」、「しめる」、「固める」というような性質を持ちます。

料理ではこの陰陽の調和をはかることがとても大切で、陽性過多の動物性食品には陰性の強い薬味を取り合わせることでバランスを整えることができます。

お肉や卵のように火にかけると硬くなる動物性食品を摂り過ぎると、血液が固まりやすくなり、血栓や結石、腫瘍ができたり、血管が硬くなる動脈硬化や高血圧といった症状が起こりやすくなります。

この場合、匂いが強くてアクがあり、酵素を豊富に含む食材を薬味としてつけ合わせることで動物性食品の害を中和することができるのです。

これは陰性の溶かす、ゆるめるといった作用を活用したものです。

陽性の強い肉類・魚に合わせるとよい薬味の例

動物性食品の中でも陽性のパワーが最も強いのが牛肉です。

その中和にはスパイシーな胡椒や唐辛子などの香辛料、ジメジメとした環境を好む椎茸のような陰性なキノコ類、カリウムを大量に含むジャガイモやトマト、ピーマン、匂いの強いネギ科のネギ、ラッキョウ、ニンニク、玉ネギ、ニラといった野菜、強力な分解酵素を持つ酢や柑橘類をつけ合わせます。

たとえば牛丼には玉ネギ、ステーキにはポテトサラダ・生野菜、香りの強いハーブティーやコーヒーなどがよい組み合わせとなります。

他にも肉じゃがの豚肉とジャガイモ、とんかつにキャベツなどがあげられます。

また、陰性なお酢と組み合わせた酢豚のような食べ方もよいですね。

ソーセージにはケチャップやマスタード、発酵野菜のザワークラウト、とんこつラーメンには紅生姜やもやし、青ネギ、豚肉入りの餃子にはラー油やお酢・ニラが、揚げ餃子には洋辛子が合います。

鳥肉には白ネギ、七味、黒胡椒が、七面鳥にはクランベリーソースが、鳥の唐揚げにはニンニクや生姜が分解酵素になります。

魚では、最も陽性の強いマグロにはワサビを、かつおのたたきには生姜やにんにくを、やや陽性なサンマやアジには大根おろしをつけ合わせます。

鯉のような川魚には酢味噌、アユには山菜、ドジョウにはゴボウ、うなぎには山椒がつきものです。

鮭のホイル焼きにはキノコ類、魚の鍋物にはポン酢、焼き魚にはレモンやゆず、すだちといった柑橘類がピッタリです。

魚肉加工品の天ぷら類には生姜や大根おろしや七味唐辛子が合います。

体験的に培われてきた日本人の知恵

畜肉加工品のハムにはメロン、ウインナーには塩胡椒、ハンバーグにはケチャップ、甲殻類の牡蠣には味噌や酢、イカやタコには里芋、エビフライにはレモン、カニには酢を用いると胃腸の負担が減らせます。

卵料理には芳香成分の強いネギやニラ、玉ネギを用いたネギ玉、ニラ玉、オムレツがおすすめです。茶碗蒸しには椎茸、ぎんなん、三つ葉がセットになっています。

そして陰陽の最たる組み合わせがお寿司です。

酢、わさび、甘酢生姜、緑茶、大豆サポニンという強力な分解力を持つ赤味噌(八丁味噌)を用いた赤だしまで様々な陰陽の組み合わせを見ることができます。

このように日本人は、薬味の使い方にかけては名人級で、これほど理にかなった食べ方をしている国は世界でも少ないでしょう。

こうした生活の中で体験的に培われてきた日本人の知恵がなくなりつつあります。今一度、陰陽の原理をふまえて薬味の効用を見なおしてみてはいかがでしょうか。

毎日が「ハレ」の日でなく普段の素食を基本に

ただし、陰陽調和といっても、陽性過多の動物性食品と陰性過多の薬味という両極端の組み合わせではバランスを取るのが難しいです。

船の向きを急に180度変えると船のバランスが崩れて転覆する危険性があるように、人間の場合も、動物性食品を摂り過ぎた場合は、薬味を使っても体調管理が難しくなります。

ですから、動物性食品は少なめにし、普段は穀物と野菜、海藻、味噌汁や漬物といった中庸な食べ物を基本としてください。

昔は「ハレ」の日、「ケ」の日というのがありました。

「ハレ」の日は、晴れ着を着たり、神聖な食べ物である餅や赤飯を食べたり、お酒を飲んで祝ったりする特別な日でした。

いっぽう「ケ」の日は普段通りの生活を送る素食の日のことです。

もともとお祝い膳であるハレの日は節句や祭りの日などのように時々だったのですが、現代では毎日が「ハレ」の日になってしまった感じがします。

普段の素食があるからこそ、時々のご馳走の価値が増すのだと思います。日々の生活に薬味を上手に取り入れ、元気に過ごしましょう。

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月刊「むすび」 2016年05月号より

正食協会では、月刊誌「むすび」を毎月発行しています。「むすび」は通巻600号を超える息の長い雑誌です。

マクロビオティックの料理レシピや陰陽理論、食生活、子育てや健康、環境問題など幅広いテーマを取り上げています。

ぜひ、あなたも「むすび」誌を手にとってご覧になってみませんか?

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Profile おかべ・けんじ

大学在学中に渡米し、肥満の多さに驚いて「アメリカ社会とダイエット食品」をテーマに研究。

日本の伝統食が最高のダイエット食品と気づいた後、正食と出会う。正食協会講師として活躍後、2003年、福岡県の田舎に移り住み、日本玄米正食研究所を開設。

2005年にムスビの会を発足させ、講演や健康指導、プチ断食セミナーやマクロビオティックセミナーを九州各地で開催している。正食協会理事。

著書は「マワリテメクル小宇宙〜暮らしに活かす陰陽五行」(ムスビの会)、「月のリズムでダイエット」(サンマーク出版)、「心とからだをキレイにするマクロビオティック」(研究所)、

家族を内部被ばくから守る食事法」(廣済堂出版)、「からだのニオイは食事で消す」(河出書房)、「ぐずる子、さわぐ子は食事で変わる!」(廣済堂出版)、「月のリズムで玄米甘酒ダイエット」(パルコ出版)。

ムスビの会ホームページ http://www.musubinewmacro.com