磯貝昌寛の正食医学【第55回】~パーキンソン病~
祖父のパーキンソン病
私のマクロビオティックとの出会いの遠因として、祖父のパーキンソン病があります。
祖父は50代の頃にパーキンソン病と確定診断されたのですが、40代の頃からパーキンソン病のような症状がチラホラ見受けられたといいます。
手の小刻みな震え、無表情、無感覚は40代より若い頃からあったというのです。
元々病弱だった祖父は家業の農業を継いだのですが、病弱なために世間並みの農作業ができず、祖母や両親に頼っていたといいます。
そして、戦後普及した化学肥料と化学農薬を使う農業を取り入れ、ますます病弱になっていくのです。
祖父のパーキンソン病は、元来病弱な上に、農薬の使用によって誘発されたと私は考えています。
昨今では農薬だけでなく、車の塗料や化学溶剤などがパーキンソン病などの神経系の病気の原因となっているのではないかと疑わせる動物実験の報告が相次いでいます。
祖父が生まれる前に男児が生まれていたのですが、生まれて数ヵ月後に病弱のために亡くなり、祖父が生まれました。
祖父の両親は「この子は死なせてはいけない」と、神経を注いで育てたことでしょう。
しかし、その祖父も生まれながらに病弱なのですからなんとも無情なことかと思います。
明治から大正にかけて、田舎では一般的な農民は大麦が半分ほど入った半搗き米(三分〜五分搗き米)を食べていました。
しかし、祖父の両親は祖父には特別に白米を食べさせていたというのです。白米の方が食べやすく、無知なために、栄養もあると思っていたのでしょうか。
祖父の弟は元来元気だったために大麦のたくさん入った半搗き米しか食べられず、兄の白い飯をいつも羨ましく思っていたと話していました。
祖父が60歳になって間もないある年の初冬、肺炎をこじらせて入院しました。
パーキンソン病を患っていたこともあり、急激に脳機能が低下して痰を出すことが困難になったという判断から気管切開をしたのです。
すると、さらに脳機能が低下し、植物状態となってしまったのです。
その後約3年、祖父は植物状態のまま自宅で過ごしました。祖母が中心となって植物状態
の祖父を介護するのです。
祖父は64歳で亡くなりました。
葬式の当日、火葬場で祖父の遺骨に対面して驚きました。
前年に93歳で亡くなった曾祖母との骨の違いが鮮明だったのです。祖父の骨はボロボロで灰色や青色、紫色に変色しており、さらに薬剤のニオイがするのです。
玄米の解毒力
昭和30年代、「水俣病」が社会問題になった時、玄米食をしていた家庭で有機水銀に汚染された魚介類を食べても発症しなかったと話題になりました。
それをきっかけとして「玄米には何らかの解毒作用があるのではないか?」といわれるようになります。
昭和40年に入って毒性の強い有機水銀を農薬として使用したものが問題になった時に玄米の効果が研究されました。
左のグラフはマウスを使って残留する水銀の量を比べたもので、当時の水銀対策委員会が提出したデータに基づいています。
玄米を代表とする穀物の外皮には、特に、重金属や薬品などの毒物を体外へ排出する力が非常に強いのです。
祖父は幼少の頃から、元来の病弱さと白米を摂っていたことによって、パーキンソン病の原因物質などを排泄する力が弱かったのでしょう。
私たち家族は「もっと早くから玄米食にしていたら、祖父のパーキンソン病は回避できたのではないか」という想いをずっと持ち続けていました。
ただ、今思うと「陰極まって陽、陽極まって陰」。
病も世代を超えて極まらないと、健康に転じないものと思い至ります。
この世の無情というものは、陰陽のコトワリ(理)を知らない警鐘であっただけなのです。
パーキンソン病の正食療法
進行度合いにもよりますが、パーキンソン病の症状が顕著になってくると咀嚼力も落ちます。
パーキンソン病だけでなく、神経障害全般にいえることですが、咀嚼力を保ち、咀嚼力を強化
していくことは最も大切なことです。
グラフにもあるように、玄米の解毒力は強力なので、よく噛んで食べることです。
しかし、咀嚼力が落ちて唾液の量と質が落ちると、圧力鍋や土鍋で炊いた普通の硬さの玄米ではうまく消化することができないので、玄米粥の頻度を増やします。
大根を入れた玄米粥ならなおさらよいでしょう。玄米粥であってもよく噛むことです。
玄米粥の他は、三分搗きか五分搗きのお米に押し麦を入れたご飯を主食とします。スープや副食はその人の陰陽の度合いによって変化します。
陰性の体調には陽性の食事、陽性の体調には陰性の食事です。
手当ては、背骨にしょうが湿布と里芋パスターをします。
背骨は頸椎から尾骨まであります。パーキンソン病は頸椎、胸椎を中心にしょうが湿布と里芋パスターをしますが、時には腰椎や仙骨、尾骨にも施し、「気持ちよい」かどうかを確かめます。
体に合った手当て法は「気持ちよく」、合わないものは「気持ちよさが弱い」です。
※細かな食箋は、同じ病気であっても人により大きく異なります。パーキンソン病の典型的な食箋はなく、その人の体質と体調によって変わります。
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[月刊マクロビオティック 2016年7月号より]
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磯貝 昌寛(いそがい まさひろ)
1976年群馬県生まれ。
15歳で桜沢如一「永遠の少年」「宇宙の秩序」を読み、陰陽の物差しで生きることを決意。大学在学中から大森英桜の助手を務め、石田英湾に師事。
食養相談と食養講義に活躍。
「マクロビオティック和道」主宰、「穀菜食の店こくさいや」代表。