森下敬一 『食べもの健康法』●じゃがいも
フランス語では、じゃがいもはポンム・ド・テール、すなわち 「大地のリンゴ」 という素敵な名前で呼ばれている。
これはおそらく、薬効の類似性に着目してつけられたものだろう。じゃがいもも、リンゴもともに整腸作用が著しく、とくに肉毒の解消に威力を発揮するものだ。
すぐれた整腸作用をあらわすのは、ぺクチン質がたくさん含まれているため。
ペクチン質は、水を吸収して軟らかくふくれて刺激物から消化管を保護すると同時に、便の通過をよくする。
腸の働きを健全に保って、便秘も治すのである。
肉毒を消すのは、第一にカリウムが多く含まれるため。すなわち過剰なナトリウムと一緒に肉食性の老廃物を体外に排泄することによって、血液の酸毒化を食いとめる。
そのため、血圧は下がり、それと同時に、脳卒中や心臓病になる危険性もそれだけ薄らぐ。
肉料理の付け合せにじゃがいもがよく用いられるのも肉食民族の生活の知恵だ。
したがって肉食をする場合は、せいぜいじゃがいもの薬効を生かすといいのだが、それよりもはるかにいいのは血液を汚す肉食を極力避けることであろう。
もっとも肉食と関係なく、適度にじゃがいもを活用しても確実な薬効はえられる。
たとえば白米や甘いものの過食によって太っていて、血圧も高いという人は、じゃがいもスープを作って、汁だけを飲んでカリウムの効用をちゃっかりちょうだいする、という手もある。
この場合、じゃがいもをよく水洗いし、皮つきのまま薄切りし、水を加えて弱火でじっくり煮込むと、カリウム分はほとんど汁の中に溶け出してしまう。
反対に、食が細い虚弱体質の人は汁も実も一緒にとる。
肝臓機能は強化され、アレルギー体質も治る。とくに消化不良や下痢を起こしやすい子供の体質改善に有効だ。
じゃがいもは、主食代わりにもなる。
澱粉質が主体で、しかも糖分が少なく、各種のミネラルも結構含まれているからである。
しばしば冷害に見舞われる北海道では、昔は米はもちろんムギ、キビなど常食できるものがほとんどとれない時期もあったが、じゃがいもだけはよくとれた。
それも、過酷な条件下では澱粉質のうまいものができるものだから、天の摂理とは大したものである。
じゃがいもの特性で、特に注目したいのは、ビタミンCが意外に多く含まれている点だ。オレンジ類には及ばないけれど、他の果物類よりは多い。
しかも熱に強いから、加熱食からC補給ができ、体を冷やしすぎる心配もない。
というより、じゃがいもは根菜類に属し、チロシナーゼという酵素も含まれ、血液循環をよくするので、適量を常食していると、体は温まり、寒さに強い体になる。
ただ発芽すると芽や皮に毒素(ソラニン)が生じるから芽をよくとり、皮も厚くむくこと。
■じゃがいもいなり
材料(8人分)
・じゃがいも・・・350g
・植物性バター・・・大さじ1
・自然塩・・・小さじ1と1/4
・油揚げ・・・4枚
・グルテンバーガー・・・150g
・玉ねぎ・・・100g
・にら・・・1/3束
・ごま油・・・大さじ1と1/2
・地粉・・・大さじ2
・揚げ油・・・適宜
<作り方>
①油揚げは熱湯で油抜きをし、2つに切り、開き、袋にしておきます。
②じゃがいもは芽を深く取り、皮つきのまま4つ切りにしてやわらかく蒸します。熱いうちに皮を取り、すりばちで、むらなくつぶして、
自然塩小さじ1/4杯、植物バターを混ぜます。
③ごま油を熱し、玉ねぎのみじん切りをよく炒め、にらの細かく切ったもの、グルテンバーガーも加えてさらに炒め、塩小さじ1杯で調味します。
④ ②③を混ぜ合わせ、8等分して油揚げにつめ、口を水溶き地粉ではり合わせ、180度くらいの油でからりと揚げ、2つに切ります。
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森下敬一 (もりした けいいち) 医学博士
お茶の水クリニック 院長 千島・森下学説『腸管造血』提唱者
東京医科大学卒業後、生理学教室に入り、血液生理学を専攻。千葉大学医学部より学位授与。
新しい血液性理学を土台にした自然医学を提唱し、国際的評価を得ている。
独自の浄血理論と、玄米菜食療法で、慢性病やガンなどに苦しむ数多くの人々を根治させた実績をもつ自然医学の第一人者。
著書に「血液をきれいにして病気を防ぐ、治す 50歳からの食養生 」「ガンは食事で治す」など約80冊がある。