船瀬俊介連載コラム
人間の心とは、おもしろいものです。
「好き」な人といると、心もウキウキして楽しい。「嫌い」な人の側にいると、なんとなく落ち行かない。
楽しいどころか、緊張して嫌な気分になる。
「楽しい」も「嫌な気分」も、冷静に考えたら、心理現象というより生理現象なのですね。最近の若い人たちは、よくこういいます。「チョー、ムカツク」。
これは、ほんとうにムカムカするからそう言っているわけで、実に正直な表現です。
ちなみに英語では”SICK!”といいます。” 病気”・・・文字通り「気分が悪いよ!」という意味です。
この「好き」と「嫌い」の生理現象の医学的解明が、近年進んでいます。
いわゆる「脳科学」です。「好き」なものに出会うと、視覚情報など五感センサーがそれを感知し、その情報は、まず情報を整理する大脳辺縁系の入り口にある「扁桃体」に伝達されます。
そこでは過去の記憶情報を点検して、これら刺激にどう対応するかを決めるのです。良いことが記憶にあると「快」情報として区分けします。
すると自律神経中枢の視床下部に刺激が伝わり、血中に快楽ホルモンのエンドルフィンが分秘されます。
このホルモンが出ると実に心地好くなります。体中が「快感」に満たされるのです。さらにドーパミンも分泌されます。
この神経ホルモンも「幸福感」を高めます。そのほか、セロトニンも。これは別名”理性のホルモン"と呼ばれています。
ゆったり落ち着いた人は、このホルモンに常に満たされている、といえます。
「嫌い」は「不快」ホルモンを分泌
さて、「扁桃体」が刺激情報を「嫌い」と判断したら、どうなるでしょう?
それは、逆の「不快」回路に回されるのです。すると、不快ホルモンのアドレナリンが分秘されます。
それは別名”怒りのホルモン“と呼ばれ、毒性があります。それは毒蛇の毒の3~4倍というから恐ろしい。
毒が血中をめぐるのです。気分が悪くなるのは当然です。つまり脳は、その「不快」刺激を外部からの”攻撃”と判断するのです。
攻撃された場合、とる行動は2つしかありません。「反撃」か「逃避」です。いずれにしても求められるのは迅速な瞬発カです。
だから、心拍数は上がり、血管は収縮して血圧も上がります。
血糖値も急上昇。交感神経は緊張し、身体は一気に戦闘モードに突入。だからアドレナリンは”攻撃“ホルモンとも呼ばれています。
動物だったら飛び掛かって噛み付くなり、サッサと逃げ出せばそれでおしまい。ところが人間ではそうはいきませんね。
上司が嫌いだからといって、ブン殴ったら即クビです。
「ふざけるな!」と席を蹴って部屋を飛び出せば、不快感は収まっていくでしょう。しかし、仕事の持ち場を勝手に離れたら、これもクビでしょう。
だから、ジッと我慢で、つくり笑い。これが、ストレスという奴。交感神経は緊張のまま、アドレナリンは体内を駆け巡ってムカムカは収まらない。
ジッと我慢の子でいると、それは胃潰瘍となって胃に穴を開けたり、神経性大腸炎で下痢に襲われたり……。最後はガンが待っています。
病気とは「気」が「病む」ことなり。よくぞ言ったものです。
“魔法の言葉“「ありがとう」
ここで矢山利彦医師(佐賀・矢山クリニック院長)は、ツキを呼ぶ”魔法の言葉“を提案しています。
それは「ありがとう」の一言。
つまり「つらい時やピンチの時にすぐに『ありがとう』と言う。すると不思議なことにそれ以上、悪い気分になりません。そして、不快の連鎖を断ち切ることができます」。
オイオイ……なんだか新興宗教のようだな……なんて思わないこと。
先に述べた脳科学メカニズムを理解すれば、この言葉のマジックが、よくご理解いただけると思います。
さらに矢山医師は、「嬉しい時、楽しい時『感謝します』と言うと、さらによいことが起こってきます」と語る。
つまりピンチな時や嫌な時「ありがとう」と口にする。
あるいは心の中で言う。するとそのプラスの言葉が「大脳辺縁系と基底核にプラスの言葉特有の『快』のイメージ情報が伝わります。
その結果、脳内に緊張状態を解くセロトニンが増えて、また、快の神経ホルモン、エンドルフィンやドーパミンも増えて、病気や痛みの原因となっていたストレス物質を取り除くことが可能になってくるのです」。
なるほど……とニッコリされたでしょう。
逆に「このやろう!」と言ったら、脳内メカニズムは、どうなるかおわかりですね。人生は言葉ひとつのマジックで180度違ってくるのです。
たったひとつの言葉で!
まずは「ありがとう」を口癖にしましょう。
(『運命が変わる、未来を変える』矢山利彦・五日市剛 共著 ビジネス社 参照)
2007年6月 月刊社会民主 「船瀬俊介の躰にいいコラムVOL . 34」より転載
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船瀬俊介 (ふなせ しゅんすけ)地球環境問題評論家
著作 『買ってはいけない!』シリーズ200万部ベストセラー 九州大学理学部を経て、早稲田大学社会学科を卒業後、日本消費者連盟に参加。
『消費者レポート』 などの編集等を担当する。また日米学生会議の日本代表として訪米、米消費者連盟(CU)と交流。
独立後は、医、食、住、環境、消費者問題を中心に執筆、講演活動を展開。
船瀬俊介公式ホームページ= http://funase.net/
船瀬俊介公式facebook= https://www.facebook.com/funaseshun
船瀬俊介が塾長をつとめる勉強会「船瀬塾」= https://www.facebook.com/funase.juku
著書に「やってみました!1日1食」「抗がん剤で殺される」「三日食べなきゃ7割治る」「 ワクチンの罠」他、140冊以上。