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「空腹」の時間が性力を強くする
屋久島を旅行した折、「屋久島の杉(屋久杉)は、3000年もの樹齢がある……」という話をあちこちで耳にした。
そこで、「なぜ、そんなに、屋久杉は長寿なのですか」と、ある人に尋ねたところ、「屋久島全体が花尚岩でおおわれているので、土壌がやせている。
つまり、屋久島の土の栄養分が少なく、樹木は低栄養状態で育つので、かえって、生命力が強くなる……」という答えが返ってきた。
日本をはじめ文明国は、栄養過剰、飽食の状態にある。
その証拠に、高脂血症、高血糖(糖尿病)、高尿酸血症(痛風)、高体重など「高」のつく明らかな食べすぎ病で、多くの人がもがき苦しんでいる。
心臓病(狭心症、心筋梗塞)、高血圧、ガン、免疫力の低下……等々も、「食べすぎ病」の一面をもっているのは、欧米の栄養学や疫学での実験や研究で証明されている。
不妊症、……などもある面「食べすぎ病」である。
1948(昭和23)年生まれの私は、いわゆる団塊の世代(1947ー1949)である。
この時、日本は第二次世界大戦に負け、戦地から生命からがら日本に引きあげてきた人たちや内地にいた人たちにとって、米の飯など夢のまた夢で、芋や野草をお粥にして食べるほど食糧事情が悪かった。
日本人のほとんどがひもじさ(空腹)を余儀なくされていた。
にもかかわらず、爆発的なベビー・ブームが到来した。
今でも、東南アジアやアフリカなど、食糧の乏しい発展途上国は、子供がたくさんいる。
「貧乏人の子だくさん」ともいう。
人間も動物も、食糧が乏しく、自分の生命の存続が危うい時は、次の生命だけは残しておこうとする本能が働き、生殖力が増強されるようだ。
一匹の雄が、数十匹の雌を従えているオットセイの雄は、生殖期間中は、ほとんど何も口にせず、雌との交尾に励む、という。
食べない方が、生殖力が旺盛になることを本能的に知っているのだ。
逆に、食べすぎて栄養過剰の生命体(人間)の本能は、この食いしん坊の人間から子供が生まれた場合、同様に食いしん坊になり、そうすると食糧がなくなってしまう……
というような判断をするため、生殖力が落ちるのではなかろうか。
肥満している女性の不妊率が高いのも、太っている男に「男性不妊」の人が多いのも納得できるというものだ。
ライオンは空腹になると知恵を働かせて風下の草むらに隠れて草食動物を狙う。少しずつ忍び寄って、狩りを成功させることができる距離までくると猛スピードで走って、獲物を仕留める。
しかし、その獲物を食べた後はゴロンと横になり、草食動物が近くを通っても見向きもしない。
因みに、ライオンは5~6回の狩りをして、1回くらいしか成功しないので、食事にありつけるのは、3日に一度くらいだという。
空腹の時間が長いのだ
人間の歴史も、ある面「空腹の歴史」であった。
干ばつ、山火事、洪水、地震……などの天変地異のために食糧がなくなることの連続であった。
空腹になると、胃からグレリンというホルモンが分泌され、脳の海馬(記憶中枢)周辺の血行がよくなり頭脳が附える。
その結果、狩りや農耕を工夫し、種々の道具を考案し、今日の文化・文明を築くことができた、と言っても過言ではない。
エジソンが蓄音機を発明した時、222時間、水以外ほとんど口にせず、不眠、不休で頑張った、という。
日本人を含め、文明人は、運動や肉体労働も十分に行わず、3食を食べ、獲物を食い終わったライオンよろしく、体も心もだらりとした状態になっている。
よって、健康を増進し、病気を防ぎ、性力を強くするには、毎食の食事の量を少なくするか、1日1食を抜き、空腹の時間を作る必要がある。
朝から食欲のない人は「食べない」または「お茶に梅干し」程度にする。
食欲のある人でも、病名のつくような持病(高血圧、心臓病、糖尿病、痛風、脂肪肝、ガン……)もちの人は、
先にも述べた人参2本、リンゴ1個をジューサーにかけて作る生ジュースか紅茶に自分が一番旨いと感じる量のすりおろし生姜(生姜の粉でも可)と黒糖(またはハチミツ)を入れて飲むとよい。
この生ジュース、生姜紅茶で水分とビタミン、ミネラル、糖分が補える。
人間60兆個の細胞のエネルギー源は「糖」であるから、糖を補っている限り、午前中の活動に支障は起こらない。
朝食、昼食を軽くすませば、夕食は、アルコールも含めて、何でもよい。
というのが、私がこの20年間、唱えてきた「石原式基本食」である。
これを実行した人々から
「血圧が下がった」「6カ月で、体重が10kg減った」「性力が強くなった」「糖尿病が改善した」「よく眠れるようになった」「心不全が改善した」……等々、
たくさんのお便り、ご報告をいただいている。
男が老化しない生き方 (PHP文庫) | ||||
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