断食や半断食は肺と汗腺の働きも高める

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磯貝昌寛の正食医学【第118回】食養指導録 アトピーを改善する秋の断食

秋の体と断食

秋は夏の暑さが和らぎ、高温から解放された体の細胞はストレスが減って代謝を活性化させます。

食欲の秋と云われますが、細胞の活性化がエネルギー代謝を高めるため、旺盛な食欲が出てくるのです。

しかし、現代の夏は冷房のきいた部屋で過ごすことが多く、さらに冷たい飲み物を飲むことも多いので、夏がゆえに胃腸が冷えて、本来の秋の食欲が出てこないのが現代人の特徴になっています。

秋の断食(半断食)は、本来の胃腸の働きを取り戻す絶好の機会です。

暑い環境から解放された細胞には余力がありますから、断食や半断食をすることでより活性が高まります。

私がすすめる半断食は、少量の玄米粥を徹底して噛みます。一食のカロリーは50キロカロリーに満たないので、ほとんど断食と言っていいでしょう。

お粥を噛むことは、本来それほど噛む必要のないものを徹底して噛みますから、胃腸のハタラキが高まったところに少量のお粥と大量の唾液が胃腸に送られていきます。

胃腸のハタラキが高まっても消化分解するものがありませんから、胃腸の古くなった粘膜を分解代謝していきます。

胃腸に老廃物が溜まっている人は、玄米粥を徹底して噛む半断食ですぐに排毒反応があらわれます。

頭痛や肩こり、首こり、胸やけ、強い眠気が出てくることもよくあります。

半断食合宿では食養手当て法の生姜シップを定番で行っています。生姜シップは、徹底して噛むこととの相乗効果で、胃腸を温めるのに大きな力を発揮します。

胃腸が温まると血液が温まり自然治癒力が高まります。キレイな細胞への変化を後押しするのです。

中国に伝わる五行では、秋は大腸と肺が活性化する季節と考えられています。

肺は発生学的にみて消化器に分類されますから、大腸との関係は深いのです。暑い夏から解放された細胞は消化器系の代謝を高め、特に大腸と肺の活性度を高めます。

秋に採れる食物も消化器系の働きを高めるものが多いのも五行が自然と人間の鋭い観察眼から生まれたことを物語ります。

秋の断食・半断食は胃腸の代謝を高めるのと同時に肺の活性も高めると経験的に感じています。

秋に気管支喘息や咳をともなった風邪が多いのは、夏に冷たい物や果物が多く、冷房の部屋にばかりいて、しっかり汗がかけなかった人に多いのです。

汗腺を鍛える

皮膚には汗腺がたくさんあります。

地球をぐるりと見渡すと住む地域によって汗腺の数は大きく違います。

インドやパキスタンなど赤道に近い地域の人たちは400万個以上汗腺があるといわれます。

緯度の高い、北欧の人たちは200万個以下といわれ、中緯度の日本人などは250万個前後といわれています。

しかし、これらは平均であって、実際に汗腺がどの程度活動しているかは、幼少期の食事と生活が大きく関わっています。

幼少期にしっかり汗をかき、身土不二に則った食と生活をしていれば、風土に合った汗腺の働きが十分になされます。

幼少期にしっかり汗がかけず、風土に合わない食生活をしていると、汗腺がしっかり育たず、毒素の排泄がうまくいかずに、アレルギーやアトピーを発症させてしまいます。

アトピーの人は汗腺の働きが30~40%低いといわれます。

日本人であれば250万個ある汗腺のうち、100万個ほども働いてないわけですから、毒素が排泄されずに体に溜ったままになってしまいます。

しかし、自然とは有り難いもので、溜まったままにさせずに、肌に湿疹を表出させたり、気管支から毒素を排泄しようと喘息を引き起こしたりして、体をきれいに保とうとします。

断食や半断食は胃腸の働きを高めるだけではなく、肺と汗腺の働きも高めます。

以前、半断食合宿に参加された重症のアトピーの女性がいました。

彼女は、多くのアトピー性皮膚炎の患者と同様、汗をかきにくい体質でした。

夏であっても汗をびっしょりかくという経験がなく、汗だくになったことがなかったのです。

その彼女が半断食を体験し、半断食4日目のことでした。その日は朝から強い雨が降っており、いつもの午前中のウォーキングができなかったのです。

そこで、午前中は生姜シップで体を温めることにしました。

参加者同士、生姜シップをしあって、お腹や背中を中心に十分体を温めました。

午後になり、強く降っていた雨はすっかり上がり、午前中の天気がウソのようにスカッと晴れてきたのです。

午前中、外に出られなかったので、午後は希望者で散歩に行くことになりました。

アトピーの彼女も散歩組になり、みんなでウォーキングに出かけました。

みんなの体調を見ながら距離を判断するのですが、生姜シップの効果とお天気が皆の体力を後押ししてくれたのでしょうか、いつもより足取りが軽く、小高い山を登って下りるという道、
10キロ以上をアッという間に歩いてしまったのです。

晩秋の季節でしたが、みんな汗をびっしょりかきました。アトピーの彼女も、生まれて初めて、今までかいたことのないところから汗が出てきたのです。

ウォーキングから帰った彼女は、汗をしっかりかくことがこれほど気持ちよいものだと初めて経験したというのです。

30代半ばであった彼女はこれまで生きてきた中で、その時が一番爽快であったといいます。

そして、その時の半断食を境に、アトピーが劇的に治っていくのです。

半断食によって体の中の眠っている遺伝子がONになりやすい状況下で、生姜シップで体を温め、お天道さまの後押しもあって、しっかり運動したおかげで、今まで眠っていた汗腺が短時間のうちに働き出したと想像できます。

断食や半断食は、胃腸を浄化して消化吸収力を高めることがまず第一です。体の消化器系は排毒排泄にも大きな役割を果たしていますから、胃腸がキレイになると体に溜っている毒素も胃腸を通して排泄されます。

秋の断食・半断食は、季節の波と相まって、胃腸の消化吸収力を高めます。胃腸の働きが正されると清浄な血液が作られて、病気の改善を促し、日々の健康を増進します。

現代の生活習慣病を集中的に数年で治そうと取り組むのであれば、年に4回、四季折々に断食または半断食を実践したらよいと考えています。

断食や半断食で胃腸をきれいにして、その上でマクロビオティックの食事をしっかり摂ることも大事です。この世は陰陽ですから、食を断つことも、しっかり食すことも、両方大事です。

食欲の秋です。断食や半断食で胃腸を整えて秋の味覚を味わうと、一段と深い味わいに出会うことができると感じています。

月刊マクロビオティック 2021年11月号より

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磯貝 昌寛(いそがい まさひろ)

1976年群馬県生まれ。

15歳で桜沢如一「永遠の少年」「宇宙の秩序」を読み、陰陽の物差しで生きることを決意。大学在学中から大森英桜の助手を務め、石田英湾に師事。

食養相談と食養講義に活躍。

マクロビオティック和道」主宰、「穀菜食の店こくさいや」代表。