オーガニック・ワインの本 田村 安 (著)

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オーガニック・ワインの本

農薬や化学肥料をつかわない、本物のワインづくり。

おいしい食事を楽しみ、地球にやさしく、食の不安から身を守る、ロハス生活のためのワイン読本決定版。

農薬はそのままワインに入る

化学農業は、確かに収量の激増のほか、不適地での栽培、手間の軽減などをもたらしましたが、土を殺し、植物個体をひ弱にすることで、本来の作物が持っていた個性、独特の味などが非常に希薄になっていきます。

どこの産地で獲れたものも、似たような、深みのない味になっていくのです。

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化学肥料・除草剤・農薬の三点セットは生態系を壊し、土を殺していき、結局、土の力ではなく、与えた化学肥料だけで作物植物を育てていることになります。

そうした作物植物は、さらにひ弱になり、よりたくさんの農薬を使わざるを得なくなります。

まさしく悪循環です。

ボワソー=アシュアール氏によると、現在フランスではブドウ栽培に1500もの化学物質の使用が認められており、しかもその使用量は毎年一四%ずつ増加しているそうです。

ボルドーは化学農業が始まるずっと昔からの大ワイン産地で、日本と違ってブドウ栽培には適していますが、それでも頻繁に農薬散布をしています。

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ボルドーの化学農業畑はサハラ砂漠並みの微生物量だといわれています。除草剤と農薬が、すべての生命を奪ってしまったのです。

(植物の実がなるためには受粉が必要ですが、農薬だらけの畑には蜂などの昆虫も少ないため、人工授粉をしなければならないほどになります。)

農薬の使用は、ワインにおいては特に重大な問題をもたらします。

前に述べたように、ワインを造る際、ブドウを水で洗うことはありません。糖度が下がってしまうからです。

とすると、農薬がついたブドウが、そのままワインにボトルされてしまうということになります。

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もちろん、現在のところ、市販のワインに含まれている残留農薬は、健康に影響を及ぼすものではないとされていますが、だからといってまったく気にしないという人は少ないのではないでしょうか

(ちなみに、もともと高温多湿で、外来種であるブドウ栽培に適さない日本では、もっと多量の農薬が必要とされます。それがそのままワインに入ってしまうことを思うと、ぞっとします)。

「亜硫酸無添加ワイン」という非常識

二酸化イオウは「亜硫酸」ですから、毒性を持った物質です。また亜硫酸ガスが大気汚染で問題になったこともあり、非常にイメージとしてよくありません。

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前述したように、ガスをびん詰め時に吹き込むだけだと量もきわめて微量で、飲まれるまでに抜ける部分も多く、人体にはほとんど吸収されず影響がないとされていますか消費者の中は、不安を感じる人もいます。

こうした人に向けて、近年「亜硫酸無添加ワイン」という触れ込みの商品が出され始めています。

こうしたワインは、殺菌や液中成分の除去など、様々な技術を駆使した方法で生産されます。発酵をコントロールするためには、酵素も使うようです。

雑菌や酸化変質する物の除去には、マイクロフィルターという、きわめて目の細かいフィルターで減過する方法を用います。

また、果汁の段階で酸素をどんどん送り込み、酸化して変色や混濁を招くポリフェノール類をあらかじめ沈殿させ取り除くという方法も(白ワインしかできませんが)行なわれています。

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さらにびん中での徴発酵や酸化変質を防ぐため、なんと、加熱処理をします。

加熱処理は、日本酒などでは認められていますが、ワインでは「御法度」です。当然ですが、ワインは熱を嫌います。

わずかでも温度が高くなると昧・香りが変質します。

さらに、この処理を行なうと、ワインとしての熟成は一切行なわれません。

そもそも、このような処理をされたワインは、とてもワインとは言えません。

ワインというものは、単にアルコールからできているのではなく、実に様々な物質が、複雑にからみあい、変化しながら、奥深い味わいを作り上げているものです。

それは、きちんとした管理のもと、ゆっくりとした時間をかけて熟成されていくものです。

無添加ワインというものは、日本の消費者のワイン文化に対する無知につけこんだ悪質な行為としか言いようがありません。

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田村 安
1958年、京都市生まれ。大手食品メーカーに勤務、ドイツ・フランスで10年間駐在員を務めた後、1998年、オーガニック・ワイン専門の輸入・販売会社「マヴィ株式会社」を設立、代表取締役を務める。

2005年、日本初のオーガニック・ワインショップを東京・赤坂にオープン。NPO・ヨーロッパオーガニック協会代表理事、オーガニックフェスタ実行委員会代表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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