味覚破壊しない石けん歯磨きのすすめ

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船瀬俊介連載コラム

私の母方の祖父は農夫だった。子どもを九人も百姓仕事ひとつで育てた。息子は九大や京大など最高学府まで学ばせた。

無口な祖父だったが、大したものだと思う。

で自慢の―つが、死ぬまで虫歯―つなかったことだ。母はいまでも誇らしげに笑う。

私は「歯磨を一生懸命したのか」と母に聞いた。母は、「じいちゃんが歯ブラシを使っている姿は、生涯一度もみたことがない」という。

私は、また驚いて聞き返す。

「なら、どうして虫歯―つなかったのか」と。

母は笑う。「じいちゃんは、いつも人差し指に塩をつけて、それでゴシゴシ歯を磨いていたのだ」と。

その光景を思い浮かべて、なおさら、いまは亡き祖父が好きになった。

毎朝、人差し指を水で濡らして、塩壺に突っ込み、その塩で歯と歯茎を磨く。なんとも豪快で、原始的で、かつ男性的ではないか。ここに、歯と口内ケアの原点があるように思う。

私は、日本消費者連盟スタッフ時代に、最初にまとめた本が『合成洗剤はもういらない』(三一新書)だった。

花王やライオンなど、8本の合成洗剤メーカーが大量CMで年間一00万トンも売りまくっているアタックやママレモンなどが、有毒で肌を荒し、手を荒し、さらに肝臓障害などの深刻な病気を引き起こしていることに愕然とした。

そして、川や海に排出されるとミジンコ、メダカ、魚など水中の生き物たちを殺し、奇形を発生させ、さらに赤潮など環境汚染の引き金であることに驚き、怒って、まとめた一冊だ。

その主成分ABS(アルキル・ベンゼン・スルフォネート)やLAS(リニア・アルキル・ベンゼン・スルフォネート)などが猛烈な毒物であるとともに、生き物にとっては催奇形性などを秘めていることも知った。

一方、昔ながらの石けんは、脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩であり、食用油とアルカリを反応させるだけでできる極めて安全性の高い洗浄剤であることも理解した。

人類最古の文明とすらいわれる五○○○年以上も昔のシュメール文明遺跡の粘士板に残る楔形文字で、なんと石けんの製法が記されていたという。

人類の歴史とともに歩んだ石けん

ちなみに石けんの製法は、各地で自然現象などでも発見され、伝承されてきたようだ。古代ギリシアにはサッフォーの丘と呼ばれる小山があった。

その頂では毎年、羊を神への感謝のしるしとして生け贄にする風習があった。

羊を火灸りすると脂が垂れる。その下には薪を燃やしたあとの灰が堪っている。さらに余熱も……。そこに夕立などで雨が降る。

すると羊の脂と灰汁と熱によって、なんと自然現象で石けん(脂肪酸ナトリウム塩)が生成されたのだ。

地元の主婦たちは、この丘の士が洗たくでよく泡立ち落ちることに気づき、そこの”白いもの“が染み込んだ土が売り買いまでされたという。

やがて、この白いチーズ状のものが汚れを極めて落とす成分であることに気づき、その製法も生け贄場所から発見された。

それはサッフォーの丘にちなんで名づけられた。

それが石けんの仏語“サボン”の由来である。英語では”ソープ”と訛った。

日本でいう“シャボン”は仏語経由できた名前だ。“シャボン玉”にも、これだけの来歴があることを知るのは楽しい。

かつて石けん運動の理論的支えとなった東京医科歯科大学の柳沢文徳教授は「石けんは食べても安全ですよ」と明快に教えてくださった。

つまり、石けんは脂肪酸のナトリウム塩なので、胃の中に人ると胃酸(HCI) と反応して“食塩(NaCl)”と“脂肪酸”に戻ってしまう。よって、胃の中で無害化してしまう。

ただし、石けんそのものはアルカリ性で、食べてもあまり美味いものではない。しかし、口の中、胃の中に入れても安全なものだ…ということは知っておいたがいい。

合成洗剤問題を追及していて驚いたのは、前回取り上げた合成シャンプーの有害性だ。

柳沢先生は「花王やライオンが“合成洗剤は安全だ“といっているけど、なら合成洗剤で体を洗わせりゃいい。肌がボロボロ荒れて、凄まじい皮膚毒性にやられる。

だから連中は合成洗剤で体を洗わせることができねぇんだ」と怒りのベランメーロ調でおっしゃったのが懐かしい。

ところが、調べてビックリ。

彼らはシャアシャアと合成洗剤で人体を洗わせていた。それが合成シャンプーとリンス。合成界面活性剤で髪と地肌を洗う。

その毒性で髪も地肌もボロボロ……。すると「髪と地肌が傷んでいませんか?」とCMでニッコリ。

あきれたマッチポンプ商法だ。この合成シャンプー中毒が、朝シャン族の悲劇を引き起こした。

二万ppmの有毒”洗剤”を口中に

実はコッケイな悲喜劇は、もう―つあった。

髪と地肌を荒らすほど、毒性の激しい合成界面活性剤が、なんと歯磨剤にまで密かに配合されていたことに愕然とした。

さすがに合成洗剤の中でも毒性が強烈なABS、LASの類いは使われていなかった。

しかし、それらに次ぐほど毒性の強い高級アルコール系(ASなど)と呼ばれる合成界面活性剤が、市販歯磨剤には申し合わせたように添加されていたのだ。

その配合率はなんと約二%。

いまでも日本人の大半は、二万ppmという高濃度の“合成洗剤”を、口の中に毎朝人れてブクブク泡を吹いているのだ。

そこで、私は得心がいった。

子どものころから歯磨をすると口の中がスースーする感じがして、朝のみそ汁の味がわからなくなるのだ。

それは、歯磨剤に配合されているハッカのせいかなくらいに思っていた。なるほど香料として、消涼感を出すためミントなどの香料を加えている。

しかし、みそ汁の味を変えた犯人は、配合されていた合成界面活性剤ASだった。台所合成洗剤や洗濯用合成洗剤が肌を荒らす、と洗剤メーカーを批判していた私は仰天した。

日本人は口の中に高濃度の“合成洗剤”を、毎朝入れてゴシゴシ歯ブラシでやっているなんて!

ところが、伝統の石けんメーカーは大したものである。消費者の安全志向の彼らは、ちゃんと「石けん配合歯磨剤」を販売していたのだ。

たとえば、石けんの老舗、太陽油脂の「パックス石けん歯磨」などなど。

合成洗剤の毒性研究で、屈指の働きをされてこられたのが元三重大学医学部の坂下栄博士だ。

最初、私は男性の研究者かと思っていたら、日消連事務所に現れたのは小柄で愛くるしい女性だったのでビックリした。

その後、本当にさまざまな面でご指導いただいた。まさに洗剤毒性研究では、世界の第一人者。

味覚破壊しない石けん歯磨のすすめ

だから歯磨も「石けん歯みがき」に替える!これが日中ケアの第一歩。サンスターやライオンなど市販歯みがき剤には、ほぼ例外なく有毒な合成界面活性剤(ASなど)が配合されている。

坂下博士の電子顕微鏡による観察で、舌表面の味を感知する味笛細胞の表面が侵されているのが歴然(写真)。

つまり合成界面活性剤にはたんぱく質を溶かす作用があるので、舌表面がやられるのだ。舌や日内の粘膜から打毒な成分が浸透するのも怖い。

粘膜は、保護層(バリアゾーン)で守られている普通の肌に比べて一○倍以上も有毒物質を吸収してしまう。

それが血管を通じてからだ全体に浸透する。それだけに、ロの中に、歯磨剤として“合成洗剤”を人れてゴシゴシやる、日本人の毎朝の儀式は、狂気の沙汰というしかない。

よくもまあ平気で、こんな有毒商品を販売し続けているものだ、とあきれる。日本人を味覚オンチにしている犯人の―つがこれら歯磨メーカーだった。

石けん配合の歯磨なら、このような味覚破壊は起こらない。

ただし、石けん歯磨に替えれば、それですべて解決かというと、そうでもない。

私は(株)ライオン歯磨に「練歯磨き」の適正使用量を質問したことがある。

その回答は「はい、お答えします。それは“マッチの頭”です」(同社、口腔衛生部)。そうして「それ以上は使い過ぎです」とアドバイスしてくれた。

その理由を聞くと「歯磨剤に研磨剤が配合されているので、歯ブラシに山盛りで歯磨剤を乗せて、歯をゴシゴシなると、歯の表面のエナメル質を削り過ぎてしまう」という。

なんとまあ正直な回答か。「なら、あのテレビCMはなんだ?」と怒りが込み上げてきた。

ここに歯磨剤メーカーのジレンマがある。

商売のためには歯ブラシにタップリ絞り出して使ってほしい。しかし、歯科衛生の面からいえば”マッチの頭“以上は使い過ぎなのだ。

逆に歯を傷める。しかし、現実は、商売が優先していることはいうまでもない。
想像してほしい。

日本人全体が、今日から一斉に歯磨き剤を、適正使用量の”マッチの頭“だけ歯ブラシに乗せて歯を磨き出したとする。

間違いなくサンスターもライオンも倒産する。しかし、われわれはサンスターなどを養うために歯を磨いているのではない。

今日から”マッチの頭”で磨きましょう!

歯のケアは「水と歯ブラシ」が原則、と呼びかけたら、ある歯科医からいわれた。「それも間違いである」と。

つまり「最も正しい歯磨き」とは「水と歯ブラシだけ」が原則という。つまり歯ブラシの目的は歯の表面、谷間に残った歯垢(プラーク)を取ること。

よって歯ブラシだけで十分ということになる。

「それで、歯の黄ばみが気になるようだったら、週に一時”マッチの頭”で磨きなさい」

こうなると練歯磨を一本買っていたら、家族全員でも数年どころか10年はもつのではないか。

売っている方には申し訳ないがシンプルライフとは、こういうものだと思う。

私はかつて『どの歯医者がいいか?』(三一新書)という本を書いたことがある。そのとき、歯の磨き方も日本人の大半が間違っていることを知った。

最もやってはいけないのが横みがき“である。それも歯磨剤をたっぷりつけて、これをやると歯の付け根を楔型に削ってしまう。歯にチェーンソーをかけているようなもの。

歯医者がすすめるのがバス法と呼ばれる磨き方。歯ブラシの毛先を歯と歯茎の付け根に45度の角度で当て、歯ブラシを前後に二~三ミリ程度に小刻みに動かす。

すると毛先が隙間の歯垢(プラーク)を掻き出す。

電動歯ブラシは、まさにこのバス法を自動的にやってくれるわけだ。

そして、歯の黄ばみを取るには歯先を合わせて口を開き、歯ブラシに歯磨剤をつけてグルグル円を描くように磨く。これを”フォンズ法と呼ぶ。

とにかく、歯のケアは「シンプル・イズ・ベスト」なのだ。

歯周病予防に塩と指マッサージ

ここで冒頭の祖父のライフスタイルが彷彿としてくる。塩と指だけでも虫歯ゼロは可能なのだ。この指先と塩によるケアもおすすめだ。

日本人の半分は五○歳過ぎから歯周病で歯を失うといわれている。高齢化すると、虫歯より怖いのが歯周病なのだ。

いわゆる歯槽膿漏この対策と治療をある歯科医に尋ねたら、指一本を出した。「これだけで十分。これで歯茎をマッサージしなさい。すると歯槽膿漏も治っていきます」。

祖父は、毎日、そのケアを実践していたわけだ。さらに「塩は歯茎を引き締め、殺菌作用で虫歯も防ぐ」と歯科医も太鼓判を押す。

母もいまは八○歳を超えて、祖父の歳に近づいたが、紺朝の塩を歯ブラシにつけて磨いている。

歯周病は歯と歯茎の間に菌が侵入して歯茎に炎症を起こし、歯を抜け落ちさせる。だから塩歯磨きは、実に理にかなっているわけだ。

月刊マクロビオティック 2005年3月号より

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船瀬俊介 (ふなせ しゅんすけ)地球環境問題評論家

著作 『買ってはいけない!』シリーズ200万部ベストセラー 九州大学理学部を経て、早稲田大学社会学科を卒業後、日本消費者連盟に参加。

『消費者レポート』 などの編集等を担当する。また日米学生会議の日本代表として訪米、米消費者連盟(CU)と交流。

独立後は、医、食、住、環境、消費者問題を中心に執筆、講演活動を展開。

船瀬俊介公式ホームページ= http://funase.net/

船瀬俊介公式facebook=  https://www.facebook.com/funaseshun

船瀬俊介が塾長をつとめる勉強会「船瀬塾」=  https://www.facebook.com/funase.juku

著書に「やってみました!1日1食」「抗がん剤で殺される」「三日食べなきゃ7割治る」「 ワクチンの罠」他、140冊以上。

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