「日本人の3人に1人が寝たきり」になる時代。
ウォーキング人口は、全国で4000万人いるといわれている。しかし、これまで「体によい」とされてきた歩き方の常識が、実は病気の引き金を引くものだったとしたら……
本書は、東京都健康長寿医療センター研究所の医学博士が、15年以上かけて導き出した、医学的エビデンスをもとにした、「健康に効く歩き方」をまとめた1冊である。
著者は、群馬県中之条町の65歳以上5000人を対象に24時間、365日の活動を追跡調査。
膨大なデータをもとに、ついに「健康に効く歩き方」「健康に悪い歩き方」を見つけた。
それが、「歩数」だけではなく、「運動強度」の視点である。
運動するほど病気になる
「毎日1万歩は歩いているから大丈夫です」
「毎朝、犬の散歩を日課にしています」
「歩くだけじゃ物足りなくて、ランニングも始めました」
人それぞれに違いはありますが、何らかの形で「ウォーキング」を生活に取り入れている人はとても多いようです。
あなたも、「ウォーキング」という言葉に何らかの関心があり、この本を手に取ってくださったのだと思います。
では、人は、いったい何のために歩いたり、運動したりしているのでしょうか?
すべての方に共通している目的が、1つあります。それは「健康」のためです。
しかし、これまで健康によいと信じてきた歩き方が、実は「健康を害するもの」であったとしたら、あなたはどう思いますか……?
この本を通じて私がみなさんにお伝えしたいのは、「誤った認識で行っている『ウォーキング』は健康の効果がないどころか、逆に不健康になってしまう」ということなのです。
私は長年、生涯を通しての健康づくりの研究に携わってきました。
群馬県中之条町に住む65 歳以上の全住民5000人にモニターとなっていただき、1日24
時間365日の生活行動データを15年にわたって収集・分析し、身体活動と病気予防の関係について調査してきました。
その結果、「誰もが健康であり続けられる歩き方」が存在することがわかったのです。
けれども、「歩き方」は、残念ながらまだまだ広くは知られていません。
そのため、「健康のためにちゃんと歩いているよ」と自負している人が健康を害してしまっているケースが、数多く見られるのです。
「歩くほど」免疫力は低下する
「毎日1万歩以上歩いてさえいればOK」という誤った認識をさらに推し進めたものが、「歩けば歩くほど健康になる」という考えです。
この言葉を信じ、毎日万歩計をつけて、1万歩よりも2万歩、2万歩よりも3万歩……と一歩でも歩数を伸ばそうと頑張っている人もいるのではないでしょうか?
けれども、「歩けば歩くほど健康になる」という認識もまた、大きな間違いです。実は運動のしすぎは、健康効果がないどころか、健康を害することになります。
なぜなら、免疫力が低下するからです。
免疫については世界各国で研究が進められ、1980年代後半あたりからさまざまなことが明らかになりました。
その結果、免疫力が下がってしまい、ウイルスや細菌などの抗原を撃退できず、病気になりやすかったのです。
これは、トップアスリートに限った話ではありません。
みなさんの「ウォーキング」でもまったく同じことがいえます。「正しい歩き方」を知らずにいくら歩いても、あなたの免疫力は下がるだけなのです。
世界初! 15年以上の追跡調査
「中之条研究」は、いったい何がすごいのでしょうか。それは、ユニークな調査方法にあります。
「中之条」とは、私の生まれ故郷である、群馬県中之条町のことを指しています。この町で行った研究を端的に表現すれば、
「65歳以上の全住民、5000人の方々、お願いです! みなさんの生活の様子を、24時間365日、10年にわたって調査させてください」というものです。
まず何よりも住民5000人の方々が「24時間、毎日? しかも10年以上も? まあ、いいよ。協力してあげるよ」と受け入れてくださったからこそ成立した、貴重な調査だったのです。
中之条研究を、ある海外の有名な学者が「中之条の奇跡」と最大級の賛辞で評価してくれたことがありました。
「1つの町の全住民を対象として、1日のほとんどの行動を調査する研究が、何年にもわたって継続している例は、世界でも希有である」
これが「奇跡」の最大の理由なのです。
やってはいけないウォーキング (SB新書) | ||||
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