【噛む力が強いほど生命力が強い】「卑弥呼の歯がいいぜ」をモットーに

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船瀬俊介連載コラム

わたしは角顔である。エラが張っている。つまりアゴが人並み外れて頑丈なのである。友人の歯医者にブリッジを入れてもらった。

ところが、ふつうの食事でブリッジを噛み砕いてしまった。

友人はわたしのアゴを触りながら「アベレージを超えてますからね。歯科技工士が『人生で初めて』とショックを受けてましたよ」とニヤリ。

これではまるでキングコングだ……。

しかし、噛む力が強いほど生命力が強い。これも常識。食物を噛むと文字通り、こめかみが刺激される。

米を噛む、つまり咀嚼力は頭脳への血行もよくする。噛む力が強いに越したことはない。

ところが咀嚼力が弱いと、なんと死亡リスクに最大5倍近い大差が出る、という最近医学リポートに驚きました。

心臓病の死亡リスク4.6倍差

なんでもバリバリ豪快に食べる人と、噛む力の弱い人の死亡率を調べた興味深い研究報告。

九州歯科大が福岡県内の80、81歳の男女約700人を対象に、4年間にわたって咀嚼力と死因の関係を調べた。

まず、咀嚼力を「弱い」から「強い」まで4段階に分類して、死因との関連を調査。その結果、死亡率に予想外の大差が出た。

特に心筋梗塞や心臓麻痺など心血管系疾患の死亡例では、咀嚼力の最も「弱い」グループは、最も「強い」人たちに比べて死亡リスクは4.6倍にも達していた。

「噛む力」イコール「生命力」それが驚くべき大差で証明された。

噛む力が衰えると認知症に

噛むと脳も活性化する。それは、眠気覚ましにガムを噛むことからもわかります。

逆にいえば、噛む力が衰えると驚くほど脳は衰える。1994年、九州大歯学部の高齢者対象の研究もショッキング。

認知症の程度が進むほど残存歯数も少なくなっていく。義歯の使い方も下手になる。噛む力も弱くなる。重度認知症では、ほとんど噛む力を失ってしまう。

つまり、噛む力と脳の退化は、平行して進行する。

ある小学校で「噛む力」と「知能指数」を調べると、大きな相関関係がありました。「噛む力」こそ「脳のカ」つまり知能を高めるのです。

噛まないオトコは精子も少ない

噛む力が弱い男性は、精子の数も少ない。

なるほど、現代人の精子減少の大きな要因は環境ホルモン汚染だといわれています。それは、正しい。

しかし「噛む力も大きくかかわっている」と主張するのは神奈川歯科大の斎藤滋教授。

「動物実験では唾液も精子減少に関係している」という。根拠は雄マウスの唾液腺を切除すると「精子数は3分の1に激減、精子運動も半分以下になる」というアメリカの研究報告。

唾液は食物消化を助けるだけでなく、精子の生成作用にも関わっている。その唾液分泌は噛むことによって促進される。

ところが、現代人は柔らかいものばかり食べる。噛む力が衰える。すると唾液分泌も減り、精子減少につながっていく。

顎関節症から「頭痛」「めまい」

最近の若い男性は、みんなアゴが細い。最近もてはやされている小顔だ。しかし、この「小顔現象」の背景で「顎関節症」が広がっている。

現代人の「噛む回数」は戦前の約2分の1、卑弥呼の時代に比べると、なんと6分の1。すると、アゴが小さくなり、歯並びが悪くなる。

さらに噛み合わせ異常から額関節症になってしまう。

「噛めない」にさらに拍車がかかる。「頭痛」「耳鳴り」「難聴」「めまい」「ふらつき」……様々な症状に襲われる。

それも、柔らかい食べ物ばかり食べた報いである。

噛む能力は運動能力にも直結している。

噛めなくなると「物をつかむ」「体バランス維持」など運動能力が失調してくる。そして、最悪は寝たきりに。

逆に寝たきりの人に入れ歯をつくり、食事ができるようにすると「ボケが改善」「起き上がる」「歩ける」ようになった、という症例報告が多数ある。

合言葉「卑弥呼の歯がいいぜ」

噛むことは、精神安定効果もある。ガムを噛む実験では、リラックスしたときに出る脳波、アルファ波が観察されている。

幼児にガムを与えて噛む訓練をさせると、最大咬交力が約二倍に向上。「食べる量が増えた」「嫌いな食物に興味を示す」などの結果も。

歯科医療関係者の間で面白い合言葉がある。

それはーーー「卑弥呼の歯がいいぜ」。

「ひ」は肥満防止。「み」は味覚向上。「こ」は言葉発音。「の」は脳の発達。「は」は歯の病気予防。「が」はガン予防。「い」は胃腸快調。「ぜ」は全力活力……。

これは覚えたいキャッチフレーズ。

(後略)

2008年10月 月刊社会民主 「船瀬俊介の躰にいいコラムVOL . 49」より転載

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船瀬俊介 (ふなせ しゅんすけ)地球環境問題評論家

著作 『買ってはいけない!』シリーズ200万部ベストセラー 九州大学理学部を経て、早稲田大学社会学科を卒業後、日本消費者連盟に参加。

『消費者レポート』 などの編集等を担当する。また日米学生会議の日本代表として訪米、米消費者連盟(CU)と交流。

独立後は、医、食、住、環境、消費者問題を中心に執筆、講演活動を展開。

船瀬俊介公式ホームページ= http://funase.net/

船瀬俊介公式facebook=  https://www.facebook.com/funaseshun

船瀬俊介が塾長をつとめる勉強会「船瀬塾」=  https://www.facebook.com/funase.juku

著書に「やってみました!1日1食」「抗がん剤で殺される」「三日食べなきゃ7割治る」「 ワクチンの罠」他、140冊以上。

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