【風力発電を問う】風の祈り 第十一章 ー誰ひとり置き去りにしない!ー

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一、驚くべき暗躍

「町内会長だけで充分。住民に説明は要らない。仁木本町にも要らない‥‥」

耳を疑うような発言が、5月11日(木)、仁木町役場で「総務経済常任委員会」の席上であった。

銀山在住の野崎明廣(あきひろ)議員が勇を鼓して、昨年5月24日に行われた銀山町内会長だけを集めた事業者説明会で、関西電力の本音を伝えた一言だった。

関電側はマネージャーを含め2名、役場は産業課参事1名、そして町内会長5名が出席の許、関電の姿勢が露呈されたのだ。

事業者と町内会長に何があったのか。さらに、関電は、「このことは、住民には、オフレコ(非公表)で」と言い含めたという。

「住民の納得無しでも、この事業は進めても通る」とした事業者の傲慢な姿勢と、内密に既に一昨年の12月にこの計画が町に知らされていたことに、傍聴席の我々は茫然として驚きを隠せなかった。

それを、町側は、何と聴いたのだろうか。未だ1年半を過ぎても全体住民に説明もなし、不問に付したままだ。

二、発電はしなくてもいい風車

そこで、すぐさま思い出されるのが、全国に流布されている三重県の歯科医師・武田恵世氏の講演内容だ。

「発電しなくてもいい。建設さえできればいい。補助金をもらえるから‥‥‥」

と、いみじくも中部電力の子会社で青山高原一帯の風力発電建設をおこなう「シーテック」の電力部長たちが武田宅を訪ねて来て、建設を薦めた。

その本音の言葉と重なる。  

事業者は公表前に先ず、地域の顔役を個別訪問し陥(おとしい)れることから始める。

全国各地で暗々裏に進める同様の手口なのだ。

住民は、泊原発の同じ轍(てつ)を踏むのか。先に、金品を渡して黙らせる。

後々、抜き差しならない事態に追い込まれるのだ。

だが、中部電力からすると、事業者の風車は、バックアップ電源調整で迷惑千万、

「風力発電は作ってもいいが電気は要らない。送電されたら困る」という風車電源が電力会社にとって歓迎されていない現実。

何のための風力発電なのか。

これと同じ筋書き、同じ結末が、仁木でも今、繰り返されようとしているのだ。

驚くべき不正と不義、そして予想外の展開が、罷(まか)り通っていることに驚きを禁じ得ない。

シーテックが、武田氏に告げたように、関電も誰かに告げていたのか。

氏は、その他、驚くべき「風力発電の不都合な真実」を、暴露している。

三、白熱した追及劇

当日、「仁木風車の会」の我々15名は、傍聴席で固唾(かたず)を呑んで、その一部始終を見聞したのだ。

町長、副町長、総務課長、財政課長、企画課長、住民環境課長、教育長の7名出席の許、緊迫した状況で、議員と町の質疑答弁が始まろうとしている。

そこで、驚くべき事態が起こった。

これまで、学習会を毎月開催して12回の約一年、毎週新聞折り込みチラシを配布しても、ほぼ無反応の町と議会。期待するにも出来ない毎回不参加の議員の意識。

そんな陰鬱な雰囲気の中、開口一番から最後まで、徹頭徹尾、疑義を町側に投げかけたのは、佐藤秀教(ひでのり)議員だった。

ほぼ10項目に亘る質疑を矢継ぎ早に、歯に衣着せぬ論調で、理路整然と迫る気迫。

耳を疑うのは、私ばかりでない、一同度肝を抜かれたような光景であった。

そういえば毎月の学習会に欠かさず参加されていた方だった。

「こういう気骨ある本気度の議員が、仁木に存在していたのか」と、驚きと感動を以て一部始終を傍聴した。

それは、暗闇にパッと朝日が射しこんだ希望の夜明けであった。

その中の論点で集中したのが、

「これほど署名が集まっているのに、何故、未だに仁木町本町での関電側による住民説明会・話合いが行われないのか」と、町長と副町長に詰問した場面。

それに対して、先の野崎議員の補足説明、「住民には要らない」発言があったのだ。

一同、発言の実態と裏工作に、驚きを隠せなかった。

我々「仁木町の風力発電を考える会」が要望した町全体での説明会実施を文書でもって快諾した関電のいとも簡単に反故にする、その不義理と不誠実さ。

信じられない大企業としての姿勢。

それに、「町も加担していたのか!? 」という有るまじき勘繰(かんぐ)りが、当然の如く一部町民に沸き起こったのは、致し方ない。

四、固定資産税で賛成推進?

「65万円の固定資産税が町に入るから、風車に反対しないように」と、喚起を促す推進派の町議が居るという。

これも、流言飛語(りゅうげんひご)の類(たぐい)であろう。

財務省課税標準に照らし、仮に20 kw未満で素人試算すれば、地方交付税75%が減額され、とどのつまり65万円が僅か16・25万円に萎(しぼ)む。仮に銀山地域に10基建つとしても年162・5万円の税収。

20年持ったとしても3250万円にしかならない。誤差があっても五十歩百歩だろう。

1基の撤退費用3億円×10基。これは全額、仁木町民負担。

その30億円を、100分の1の3000万円で、どう贖(あがな)うというのだ。

馬鹿々々しい胸算用である。目先の利害に、子孫は苦渋の債務を背負わされるだけだ。

先祖の途方もない誤算のツケが、後々(あとあと)回るのだ。町民は、今こそ声を上げねば、何時上げると言うのだろうか。

これも、佐藤議員の質疑にあって、財政課長の答えを待つまでもなく、一蹴(いっしゅう)すべき愚論である。

五、「時期尚早」?

5月22日(月)、仁木本町における各町内会長会議で、「仁木本町での関電の説明会開催の要望」が出たという。

だが、臨席した林幸治副町長から、要約すれば「時期尚早である」との一言で、その意見は封じられたと聞く。

計画から1年半も経った。

しかも昨年6月の計画公表前の1月段階で、銀山・大江での説明会に町側も参加しての開催があった事自体、時期尚早過ぎるほど、尚早ではなかったか。

その間、反対運動が起こり、反対署名約1万5000筆を添えて、今年2月17日町長に陳情書を訴えた。にも拘(かかわ)らず、何故に今が「時期尚早」なのか。

回答待ちにしては、既に期限が過ぎてはいまいか。

世界から集まった今や、この重き1万6000筆(現在)を軽々(けいけい)として軽んじ過ぎてはいまいか。

町民1000人が反対している声明に、町長はじめ町議員一丸となって真正面から向き合わねばならない。

町民から付託を受けた使命と職責を果たすべき火急の時ではないか。

町長の理由とされる「中立」という立場は、今後あり得ない。

結果は、風車が建つか、建たないかの二者択一しかないのだ。

最後、推進か、反対かの決断が迫られる。

この1年半、充分思慮熟考に値する資料と時間はあった。

学習会での山積した情報と知見は、判断するに事欠かないほど十分過ぎるほど膨大な内容だった。

既に、他県では、県民の動きに敏にして、首長の即決即断を以て、中止に追い込んだ例も少なくない。

反対住民は、事業者と町と、三者の膝を突き合せた徹底した話し合いを待ち望んでいるや、切なり。

納税している町民の声を、等閑(なおざり)にせぬよう。たかが3000人の街、されど3000人もの街なのだ。

一人のイノチは重く、尊い。

六、早期の町の勇断

確かに、「配慮書」の段階では住民説明会は、法的に規定されていない。

しかし、6,7月から次の「方法書」策定段階に移行する。

その間、事業者は環境アセスメントの調査・予測・評価のために莫大な時間と費用と人力を費やす。

向こうも抜き差しならない、引くに引けない状況を呈する。ズルズルと時の過ぎ行くのを安閑と見逃す訳には行かない。

町長の答弁「準備書」段階の判断では遅すぎる。それは初めより推進を黙認したと同様の姿勢なのだ。

現に、先日行われた小樽・余市ウインドファームの㈱双日における「準備書」手続きでは、既に手遅れ、絶望的時間の経過だった。

「白紙撤回」中止に追い込むには、早期解決が双方にとって将来必ずや、禍根を残さない最善の策ともなるのだ。

事業者として、補助金目当ても、現今の異常な物価高で10年先どころか、ここ2,3年さえも収支決算の予測が付かない。

今、再エネ業界は、不測の事態に陥っている。

最近、世界の潮流が、陸上から洋上へ、さらに風車撤退に急速に舵を切り替えていることが、頻(しき)りに報道されている。

既に、国内でも、石狩湾沿いのグリーンパワー(GPI)撤退など、その兆候が現れ出した。

佐藤議員の指摘された通り、経済産業省・資源エネルギー庁の「風力発電事業計画策定ガイドライン」による事業者は円滑確実に計画推進のために、自治体や地域住民に実施の理解を求め、地域共生の取り組みが大切なことを力説している。

それは、環境庁も、林野庁も、道も、他の自然保護団体等も異口同音に指摘し、明記している。

これまで何度も記載し、意見書・要望書で公開してきたことだ。

「(仮称)古平・仁木・余市ウインドファーム事業」計画は、元より無理無謀な自然破滅、地域破壊、経済破綻(はたん)の不毛の負の遺産でしかない。

既に、説明も内容も実態も破綻している。

佐藤議員の「事業者並びに町の誠意ある対応は敬意を表するものの、今一歩、踏み込んだ対応をしてほしかった」、「銀山・大江地区の不安材料を払拭し、住民を守っていくのが町の役目ではないか」という提言も、最も賛同するところにして、町に切に願いたい。

そして、続く野崎議員の「関電としても、住民説明を仁木ですれば一番よかったのではないか」、上村智恵子議員の「銀山長澤南の地滑りの経験から、仁木の土砂災害などの防災マップを、事業者に通告できないのか」、或いは麿議員の「風力発電のメリット、デメリットは?」との連続する質疑は、我々の意を代弁するもので、この日の心有る議員の結束感と議会に希望の光が見えた気がした。

その後の会代表の3名による主旨説明や町議との質疑応答は後日に譲るが、極めて活溌溌地とした発表と答弁の進行に胸の空(す)く思いがした。

6月22日朝より、また同委員会が開催されるという。挙(こぞ)って傍聴されん事を。

かように、町も、議会も、町民も、皆、仁木町が良くあれ、と願って止まない。

誰しも同じである。それぞれの立場や意見が異なるも、良くしたいとする方法が違うだけ。

それ故、殊更(ことさら)に関電の甘言や、詭弁や、利益誘導に惑わされてはならない。

今は、みな一致団結して、心をひとつにし、関電の風車建設を阻止する決断・勇断の時である。

七、遂に、日本弁護士連合会(日弁連)が動く

こういった目に余る事業者の行状が、法律に抵触するとして、全国4万人の弁護士が加入する日本弁護士連合会(日弁連)が結成されたのだ。これは、他人事ではない。

町としても、安閑(あんかん)としていられない。行政も問われることとなる。

そして、「メガソーラー及び大規模風力発電所の建設に伴う、災害の発生、自然環境と景観破壊及び生活環境への被害を防止するために、法改正等と条例による対応を求める意見書」意見書全文 (PDFファイル;417KB)を政府に提出し、昨年11月16日付け日弁連名で発表された。

これは、重くして重い法的に裏付けられた内容である。

政府が「再エネ」を優先する余り、新しい法律を作り規制緩和し過ぎた為、侵してはならない所まで侵してしまった混乱に対する反省と警告である。

そのために、悪徳事業者が乱開発に次ぐ乱開発で、遣(や)りたい放題の野放し状態を中止に追い込む。

そして、森林や野生動物、生物多様性を守り、外資による水源地の森、国防の山を売買できる法規制の改正を求めるものだ。

さらに、法律家500名を擁する日本環境法律家連盟(JELF)も、環境問題に取り組んでいる。

その中に、2月18日に講演頂いた市川守弘弁護士(6月24日の「仁木町学習会」に再登壇)も名を連ねて、講演されている。

連盟は、再エネ問題で揺れている宮城県の計画地を視察し、殊に事業者と加美町との契約が業者有利であることを追及、熊森協会代表の室谷悠子弁護士(10月28日仁木学習会、講演予定)が、全面的に反対派を支援して撤回要求を押し出している。

八、憲法違反の国有林伐採

国策だから、何でも許される、と誰しもが思ってはいまいか。

その施行内容によっては、法律違反である場合を、国民は知らされていない。

ましてや、「地球温暖化防止のみを理由に、国有林を伐採することは法違反」であった事を知る由もない。

平成10年に定められた国有林管理計画に関する法律第三条の

「国有林野の管理目的は、国土の保全その他、国有林野の有する公益的機能の維持増進を図る」に抵触するものである。

林野庁の森林・林業基本法第二条には、森林が有する多面的機能は、①国土の保全 ②水源涵養 ③自然環境の保全 ④公衆の保険 ⑤地球温暖化の防止・林産物の供給

この中の林産物の供給を除いたものが、公益的機能と定義されている。

しかも、全ての項目が維持増進されなければならない、とある。

そして、これが全う出来ない事業は、伐採すべからずという権利が国民にあったのだ。

実際、日立造船が計画した広大な森林伐採を伴う「会津大沼風力発電事業」の発表後、福島県会津の「日本の天然林を救う全国連絡会議」(渡部康人事務局長)は、わずか2週間で白紙撤回させたのだ。

これは、渡部氏がこの国有林野事業の法律を熟知していた事で追及出来たからだ。

さらに、北は八甲田山から南は蔵王山に至る奥羽山脈尾根伝い、幅2㎞距離400㎞、さらに保護林を含め14万7千haの「緑の回廊」を守ろうとされている。

何と、その林野庁の経営企画課が、「緑の回廊に風車を造れる」という法の主旨、この逸脱した通知を出したという。

規制改革実施計画(令和3年6月18日閣議決定)の全面規制緩和、いわゆるザル法である。

いわば、林業という経営が破綻して、背に腹は代えられず、侵すべからざる聖域を、自ら侵してしまったのだ。

省庁といえども、許されるべき事柄ではない。

国有林は開発も林業もせずに、国民の財産として永劫守って行くべき生ける国宝である。

その守るべき指導・監視の立場の林野庁自体が、法律を改竄(かいざん)した国と共に、林野庁の立場を自ら放棄し破ったのだ。

さらに、決定的な事項は、絶滅危惧種の生息保全にあるという。

日本自然保護協会の調査によって、仁木・余市・古平一帯は、「イヌワシ」の生息地帯で、風車64基を建造しては、この緑の回廊は崩壊して絶滅するだろう。

それを知って、何故、あえて強行に突破しようとするのか。また、出来るのか。最後、省庁の認可がなくては出来ないはずだ。

最後に、風車は民間事業。

矛先は、関電に在り。

敵の陣中は、関電しかないのだ。

事業者に諦めさせる以外に、道はない。そして、自治体が反対すれば、事業は止まる。

町長が毅然(きぜん)として事業者にNOを突きつけられるかに、子供の未来、仁木の命運がかかっている。

町長の覚悟と勇気や、如何(いかん)。

九、「日本国憲法」違反

銀山在住の今村照子さん。

長年、児童養護施設に従事された御年87歳ながら、学習会や委員会議の常連とも言うべき女丈夫(じょじょうぶ)である。

いつも、憲法の基本的人権の侵害を訴えられている。

「風車設置の反対理由は、10か条以上あるが、第一に憲法違反に当たるのではなかろうか。

『日本国憲法』(昭和21年制定)の前文。「‥‥主権が国民に存することを宣言する…」以下の第三章、第25条生存権、第29条財産権が侵され、何よりも第11、12、13条の基本的人権の幸福権の追求・享有が妨げられる。

そして、第32条に賠償権があることです。

無理に遂行した場合、集団訴訟にもなりかねない。私は矢面に立って戦う覚悟です。」

この風車という直面した現実を前に、憲法論議は場違い、観念論だろう、と思う人がいるかも知れない。

しかし、それは違っていたのだ。

今村女史の主張こそ、本質的で、根源的な正論なのだ。

大道を行かずして、小道を行く勿れ。

ここを掘り起こさない限り、根本問題の解決にはならない。

些末な枝葉にわたっての追及は、いかようにも言い逃れる。

しかし、国を支え、自然を支え、人間を支えるところの憲法の主軸、「人間の基本的人権」こそ、論議訴求すべき究極ではないか、と主張する女史の論点と熱情を悟った。

風車建設により、森林を破壊し、景観を損なう事で、心象を害し、幸福感を損なうなれば、これは人権侵害であるはずだ。

ましてや「風車病」や「土砂災害」に至っては、これは憲法を逸脱した加害行為である。

言下に女史は、これは「轍鮒之急(てっぷのきゅう)」(差し迫った危急や困難の譬え。

車の通った跡の窪みに溜った水の中で、苦しみ喘いでいる鮒の意から)であると『荘子』を引用した。

今国内は、「累卵之危(るいらんのあやうき)」、正に火急の事態、大乱の時なのだ。

法曹界が乗り出したという最大の理由が、ここにあった。

そして、驚くべきは、今村宅が、銀山駅の隣にあり、すぐ見上げる稲穂峰伝いには、メガ巨大風車が立つのだ。

誰よりも最至近距離で、その強烈な超・低周波音の影響被害が直撃するだろう。

その眼下には、「桜ヶ丘学園」「銀山学園」などの児童養護施設、知的障碍者成人施設、授産施設多数、小中学校が集中して近接に立ち並ぶ。

それらを、町はどう判断し、どう行動に移すのか、既に結果は自明の理である。

十、ヒグマ被害頻繁

そして、更に今村家の裏山は、稲穂峠の尾根伝いに通じ、いわゆる獣道(けものみち)「緑の回廊」であって、裏の立木にクマの爪痕があるという。

罷(まか)り間違えば、いつ何時(なんどき)襲われても不思議ではない。

風車が立たずして、既に身の危険が迫っている。これほど、肉薄する地域は、そうないだろう。

まほろばに「アルカヌム」というオリジナルサプリメントがある。

天然の素材を、ロシア、チベット、北海道に求めて、殊に笹の王者「クマイ笹」を幌加内で採取・加工している。

その自生地・朱鞠内湖で、先月14日、釣り人がクマに襲われ、胃から肉片が発見されたという、身の毛も弥立(よだ)つようなニュースが全国に流れた。

それからというもの、道内各地にクマの出没のニュースが日々雪崩(なだれ)のように流れた。

札幌西野のまほろばから何丁も離れていない住宅街で親子のヒグマを発見、今異常事態の緊迫が続いている。

1990年を境に「春グマ駆除制度」を取り止めた為に、ヒグマの頭数が1万7000頭を越し、年々増加の一途を辿る。

これも急増するエゾ鹿に餌を奪われ、人家に近づかざるを得ない。

さらに、凄惨な事故が懸念される風車建設。

これ以上の森林伐採は、クマの縄張り、獣道(けものみち)を寸断し、餌場を奪い、当然の如く、人里に下る。

それは、止めようにも止まらない野獣の行き場で、人間との対立、殺傷を生むだけだ。

もとより、そうさせたのは人間だ。

都会人・役人による机上での里山開発は、観念空想でしかない。

現実の恐怖、自然への畏敬が欠落しているのだ。

ましてや自然度9・10、保安林100%の原生林を薙(な)ぎ倒すなど、人間の奢(おご)り以外の何ものでもない。

即刻中止すべきである。

十一、「誰ひとり置き去りにしない」…ある主婦の告白…

5月20日(土)に、北大助教・田鎖(たぐさり)順太氏による「風車騒音による健康影響についての科学的知見」と題した講演会が開かれた。

推進・反対の立場を択(と)らず、あくまでも客観的な科学的視点で、データと知見により、低周波音と風車病の関係を解説された。

そして、最後、それを判断し決定するものは、「誰ひとり置き去りにしない」という結論であった。

これは当会の瀬川代表のグループホーム「あんごの森」設立の趣旨であり、願いでもあった。

それは、宮澤賢治の「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」という信条からも来ている。

賢治には、母イチから毎晩就寝前に繰り返し聞かされた言葉があった。

それは、「人というものは人に何かしてあげるために生まれてきたのです」

この「自己犠牲」や「利他精神」の真逆を行くものが、風車であった。

目の前に、既に4基の風車が立ち並ぶ小高い古平歌棄(うたすつ)地区。

そこの横に立つ授産施設、古平福祉会「共同の家」。

積丹町在住の主婦が、田鎖先生の講演会の質疑応答の席上、こう語られた。

「一昨年冬より、耳の閉塞感を含めた違和感を感じ、病院を受診しましたが、異常なし。

偶然かもしれませんが、 時期としては古平に小型の風車が建った頃でした。

また同じ時期に夜にペットが騒いで飼い主が眠れない、との話も耳にしています。

不眠症はなかなか寝付けないだけではなく、眠りが浅く昼間の活動に支障をきたすものも、不眠症であると、今回田鎖先生からご回答を頂きました。

風車からの低周波音によるものと氣が付かず、体調不良と思い込んで入る方もいらっしゃるのではないかと感じています。

私自身も冬の間眠りが浅く昼間の活動に支障をきたしていましたが、最近強風や無風で風車が動いてないことが増えていることで、眠りが深く体調が良いのでは思ったりもしています。

また今HSC ( Highly(非常に)Sensitive(敏感な)Child(子供) ) HSP ( Highly(非常に)Sensitive(敏感な)Person(大人) )が5人に1人の割合で存在するとされている様ですが、巨大風車による低周波音による影響も懸念されます。

私自身がHSPだから、この様な症状が出ているとしたならば、HSCやその傾向を持っている子ども達への影響はどうなのでしょうか…。

風車からの低周波音は豊かで柔らかな子どもの感覚にどう入ってしまうのでしょうか。

未来ある子ども達に豊かな自然を残し、低周波音からの健康被害から子ども達を含め私達の健康を守っていきたいと願ってやみません」

「誰ひとり置き去りにしない」とは、今流行りのSDGsの精神でもあるという。

ならば、SDGs、その脱炭素の象徴でもある風車によって被害者が出ている矛盾を、どう答えるだろう。

かかる被害者が一人でも出て苦しむなら、今こそ止めるべきが筋ではなかろうか。

一企業の利益利権のために、多くの犠牲者が出ることを、どうして国は許すべきであろうか。

町も加担できるであろうか。

「誰ひとり置き去りにしない」という佛菩提の精神。

とりもなおさず、日本人の「みなのために生きる」という清らかな国柄(くにがら)、潔(いさぎよ)き心を取り戻したい。

風車は、それを教えに来たのだ。

日本再生のために来たのだ。

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宮下周平

1950年、北海道恵庭市生まれ。札幌南高校卒業後、各地に師を訪ね、求道遍歴を続ける。1983年、札幌に自然食品の店「まほろば」を創業。

自然食品店「まほろば」WEBサイト:http://www.mahoroba-jp.net/

無農薬野菜を栽培する自然農園を持ち、セラミック工房を設け、オーガニックカフェとパンエ房も併設。

世界の権威を驚愕させた浄水器「エリクサー」を開発し、その水から世界初の微生物由来の新凝乳酵素を発見。

産学官共同研究により国際特許を取得する。0-1テストを使って多方面にわたる独自の商品開発を続ける。

現在、余市郡仁木町に居を移し、営農に励む毎日。

著書に『倭詩』『續 倭詩』がある。