【風力発電を問う】風の祈り 第十二章 ー仁木町選挙戦始まるー

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一、迫(はざま)小樽市長の反対表明

おめでとうございます!

これぞ、快挙?

小樽市長は、偉い。 見上げたものです。

みな絶望視していた「準備書」段階での覆(くつがえ)しは、聞いたことがありません。よくぞ、やってくれました。

令和5年6月13日、迫俊哉(はざまとしや)小樽市長の臨時記者会見があり、「(仮称)北海道小樽余市風力発電所環境影響評価準備書」について、26基の風車に依る環境保全、健康被害、景観・遊歩道への影響等、看過できないとして、鈴木北海道知事に対して建設反対の「意見書」を提出。

議会も、小樽市民の7000筆に上る反対署名を添えた「陳情書」を全会一致で採択し、本事業計画中止を求めていました。

このニュースは、全国に即伝播して、鈴木道政にも動揺を与えたことは想像に難(かた)くありません。

二、「双日」の計画中止発表

この小樽市長の声明後の同月17日に、事業者「双日株式会社」は、小樽・余市の大規模風力発電計画中止を発表。

万歳!!!

これは凄い。

どんでん返しですネ。

これまでの市民・町民の皆様による不断の訴えが実りました。

誠に、おめでとうございます。

「準備書」後の中止は異例なこと。環境アセス等の調査費など費用対効果を以てしても、全体の工事費当初計画から約3割増は厳しい。

さらに、再エネの買取価格が次第に下がっていることもあり、20年先の採算見通しが立たないことで、事業者は最終決断したのでは。

小樽市長の反対表明4日後の裏には、既に事業継続のリスクが社内で問題視され、一部住民からの賛同を得られないとは表向きで、その発表の切掛(きっか)けに過ぎないのかも知れない。

既に、関西電力の赤井川での計画が保留。実質、中止では。

さらに仁木・余市・古平の計画も中止に追い込まれんことを願うや、切!

三、第三回「特別委員会」の紛糾

打って変わって、仁木町の現状はいかに。6月22日、「総務経済常任委員会」が役場で開かれた。

「小学生の児童会の方が、まだまし。余りにも見苦しい。議員の指導、誰がやっているのか。」と、傍聴者の声が聞こえてきた。

二回目の特別委員会でも、横柄(おうへい)な議員の態度に、傍聴者から抗議が入った。注意喚起されたのだろうか。

会後、一部始終を見聞しての顛末の酷(ひど)さに、傍聴者の不満が爆発した。

狭い委員会室にメディア関係2社、立ち見も含め、35名もの傍聴人が参加した。

しかし、肝心の町長はじめ副町長、各課々長等の出席の予定は無かった。その場面の全容を見届けて欲しかった。

そして、それは仁木議会発足以来、前代未聞の大荒れの委員会になった。

「陳情書」の4つの理由

①低周波音などによる人体への影響
②自然生態系への影響
③土砂災害・水質悪化の恐れ
④社会福祉施設に近接する事業計画地

における、各議員の意見を一方的に発表するもので、論議を尽くすどころか、反論も質問もないまま終会。

その時、傍聴者の鬱積(うっせき)した疑問の矢継ぎ早の質問に、議員は座ったまま耳を傾けた。

四、不満爆発の原因

数名の議員の余りにも不勉強、不見識の意見と、会議への態度・姿勢の悪さに、傍聴者が我慢できなかったのだろう。

1つに、「‥‥‥専門家の調査を待ちたい。これから勉強したい。研究後に回答したい‥‥‥」との意見に、

「この一年間、何して来たのよ!」

「議員の資格なし!」

「風車の問題について議員さん同士が議論すると聞いてきたのに、一方的に意見を述べるだけで、議論にも何にもなっていないじゃないですか」と女性の黄色い声が、場内に響いた。

それにつられたかのように男性の声も・・・

今日までどれほど国内外の専門家の意見を網羅した資料を毎月毎週発行して、町内に配布して来たことか。瀬川代表の折り込みチラシは78号を数え、『風の祈り』は13号、『風車(議会報告)』は5号を数えて発行配布し続けている。

また、「仁木風/Niki Wind」というHPまで立ち上げ、隈なく海外・国内・道内・仁木の新情報、内閣府、経産省、環境庁など各省庁の動向まで毎日流している。

そして、この6月まで計13回の学習会に専門家を呼んで、調査研究の結果を発表して来た。

2つに、「‥‥‥関西電力からの意見を聞いてから‥‥‥」との意見に、

各議員は、少なくても1、2度の関電の説明会を聞いているはずである。

22年12月9,10日の大江と銀山における住民説明会(不参加でも、紛糾した住民説明会の筆記録は届いているはず)。

そして、10月11日、議会が要請し、議員のみ対象とした説明会。

少なくとも仁木本町の住民は、「時期尚早」という事で、未だ説明会を開いてもらっていない。その住民よりは情報ははるかに多いはずである。

「関西電力からの一方的な情報のみを受け取って、住民の声が聴けなくなっているのかも知れない」と言う人もいた。

当会からも関電に説明会開催を要請して、昨年10月20日に承諾の文章をもらい、昨年冬に開かれるはずであったが、それをいとも簡単に反故にした。

それが関西電力と言う企業なのだ。

そして聞くに堪えない関電の醜聞を、議員はどれだけ知っているだろうか。

その枚挙に暇(いとま)のない悪行に驚くばかりか、この仁木をそんな企業に任せられないというのが、当然の町民意識であり、市民感覚だ。

町も議会も早く目覚めて欲しいと願っている。

3つに、「‥‥‥建ってみないと分からない‥‥‥」との意見に。

火事になるかどうかは、火を付けてみなければ分からない、と同じ理屈なのだ。

それなら、問題を検討論議する議員は要らない。

何事にも、町民の安全安心の為、不測の事態を予測し、調査し学習し、議会で論議して、その結果を町民に知らせるのが、議員としての職責ではなかろうか。

それが付託の任であるはずだ。

これを科学の限界を理解した上で、リスクを避けるべき「予防原則」という。

五、低周波音の被害と研究

同じ町会議員の立場で、風車病罹患者として立ち上がった和歌山県・由良町の由良守生(ゆらもりお) 元議員(ご先祖が、この町の開墾者)。

彼自身が、由良町に聳え立つ数十基の風車による低周波音に依る「耳鳴り、目眩い、頭痛、首の痛み、体のしんどさ、吐き気、胸苦しさ、不眠の苦しさ、我慢できない騒音」に日夜苦しんで来られた。

これを議会に訴えても受け入れられず、町長からは「因果関係が分からない中で調査する考えはありません」(本来なら、因果関係を知るために調査すべきが、正論ではないか)と拒絶され、議員からは仲間外れ、町民からは狂人(きちがい)扱いされた。

しかし、世界各地の同じ風車病で苦しむ人々を知り、各国の現地に赴いて見聞調査した。

また長年にわたる風車病に関する研究家の汐見文隆医師に認められ、平成28(2016)年に著した『風力発電の被害』などにより、風車病の事実が国内外に広く知れ渡るところとなった。

そればかりか、海外における(超)低周波音への研究報告は数多く、ポルトガル・ルソフォナ大学教授のマリアナ・アルヴェス・ペレイラ博士のソルベニアにおける講演「超低周波音による健康被害」の動画は、世界中に拡散視聴されて、人々の認識を激変させた。  

低周波音の健康被害について40年間研究して来たペレイラ博士は、低周波音が頭痛や目眩、不眠を引き起こすだけに止まらず、人体全体に影響を与えて、心膜や血管の肥厚を誘発し、心筋梗塞や脳梗塞などの原因になっていることを明らかにした。

最早、風車病が存在することは、世界の常識になっており、疑問の差し挟む余地はない。

来る8月26日(土)、全国で活躍されている札幌在住の環境ジャーナリスト・加藤やすこさん(「いのち環境ネットワーク」代表)の講演会が開催される。

ご自身も、過敏体質で、電磁波や低周波音などの異常周波数に、即感受反応される。

しかし、我が身に拘(かか)わらず、客観的冷静な分析力・判断力を以て探求証明され、広くその実害を訴えておられる。

六、低周波の証明

―熊追い低周波音発生器―

岡山理科大・辻維周(まさちか)教授が、広島・安芸太田の日本庭園において、高低周波発生装置で、農地の獣害対策に実験開発を進めて実証されたことが報道された。

2台設置して、一つはイノシシやクマ用に100~130Hzの低周波、もう一つはシカ用に1万2千~3万Hzの高周波を出す。

実験結果、撃退効果が証明され、この機器が販売される。

この最新情報は、「風車による低周波音は、禽獣を追い出す効果あり」との逆証明で、風車が立つことで、周囲から禽獣たちが獣道(けものみち)から外れるだろう。そればかりではない。

昆虫・微生物から、あらゆる生きとし生けるモノたちの生活圏・生態系が激変する。

小さきものは死し、大きなものは逃げる。

クマは山の稜線から山里に降りて彷徨(さまよ)う。

遭遇は日常茶飯事となり、子供や年寄りは、外に出られなくなるだろう。

授産施設の多い銀山・大江地区を、このまま放置して良い訳はないだろう。

そして、佐藤秀教(ひでのり)議員は、5月20日の学習会にお招きした北大・田鎖順太助教の講話を、隅々まで聞き届け、「風車騒音が直接的に健康被影響を及ぼす可能性は低い」とする環境省の指針を誤りと否定された報告。

さらに、岡村教育大名誉教授による当地の地盤が脆弱である地質調査の結果など、4項目にわたっての詳細なる報告には、一同みな感動。

「国策で風車を是認するも、反対して止めた計画地もあり、決してこの運動は無駄ではない」という結語に、傍聴席から、万雷の拍手が沸き起こった。

七、銀山の人は犠牲になってもいい?

「本町からは、風車は見えないし、低周波って言っても、遠いし、関係ないよ。それよりも補助金もらったら、町の為にもなるし、風車賛成。何で、あんたら反対するの?」

署名活動に回っていると、時々このようなことを言う人がいる。農業委員の方にさえ言われる。

銀山の事だから、俺達には被害もないし、影響もない、との差別発言は、誠に残念で、問題ではないか。

人への哀れみや痛みは、どうだろう。地滑りの心配や、山や森が削られる悲しみは伝わるだろうか。

動物が逃げ場を失う苦しみって、どんなんだろうか。

同じ作物を育てる農民ならば、そのイノチに共感し共有していきたい。

町民が一心一体となって、他者を思いやることこそが、今、一番仁木に求められている。

そして、重ねて言いたい事。

1基65万円の固定資産税は、地方交付税75%で減額され、残り16.25万円に目減りすることを知って頂きたい。(詳しい計算法は、「風の祈り」12号を参照)

決して儲けにも得(とく)にもならない。町が潤うどころか、破綻しかねない末路。

事業者は、撤去責任を免れる構造になっている。

いわば、逃げの転売システムが法律で許されているのだ。

町税で担う撤去費用が何十億という、100倍のツケを、我らの孫・子が支払わねばならない。

目先の小利に目眩(めくら)まされ、遠くの大損を被っては、余りにも子孫がかわいそうだ。

八、重金属が流出する危険性大

NPO法人北海道総合地質学研究センター(札幌)の石崎俊一専務理事と、道教育大の岡村聡名誉教授(地質学)が、さる5月21日市民団体「小樽の地質を考える会」で講演された(仁木では4月15日に開催)。

その中で、石崎専務理事は、関西電力が計画中の風力発電事業、当地の「(仮称)古平・仁木・余市ウインドファーム」建設予定地について、「一部地域にヒ素やカドミウムなどの重金属を多く含有する土壌がある」とし、「工事で土壌表面が削られ、下流に有害物質が流れ出す可能性がある」と指摘された。

岡村名誉教授も大手総合商社の双日(東京)が、小樽市と余市町にまたがる山林で風力発電所を建設する計画について、地盤が軟弱で建設に適さないと訴えられ、遂に中止に追い込んだのだ。

それは、赤井川カルデラの外輪山、余市川カルデラも、同質の安山岩、デイサント、流紋岩等の鉱石で形成されて軟弱な為、豊浜トンネル事故のように、当然地滑りなどの土砂災害の懸念は大である。

銀山は、銀の字を付けたように銀鉱地帯で、40年前まで仁木には然別・大江鉱山、古平には稲倉石鉱山が開鉱され、マンガン・銅・鉄・金銀・鉛などが採掘された歴史があり、今なお土壌地下には多種多様な重金属が含有されている。

有害無害を問わず、重金属の宝庫である。

この6月10日、登別市美園町の住宅街で土砂崩れがあり、20戸が避難したニュースが流れた。

5軒立ち入り禁止の3軒が、知人の野崎秀夫さん宅と事務所と作業場であった。

第一回の学習会で、初めて質問に立った方だった。

事故はある日突然、街場の身近でも起こり得る。いつ何時(なんどき)土砂崩れの危険性が潜んでいるか分からない。

ましてや、ハザードマップに地滑り危険マークが点在する銀山は、過去にも度々土石流亡の歴史がある。

さらに広範囲に森林伐採に依って地盤土壌が緩むと、加速的に危険度が倍乗する不安定地帯でもあるのだ。

九、イヌワシ保護

6月24日の学習会は、市川弁護士を招いての2回目の講義だった。

「建設予定地は、天然記念物で絶滅危惧種のイヌワシの生息が確認されており、全国にも波及する問題だ。関電の建設予定地は、国内に約500羽しかいないイヌワシの生息域と重なり、ほぼ全域が保安林のため建設中止を訴えた「日本自然保護協会」の報告書を例に、真に持続可能な再生可能エネルギー推進のためにも、生物多様性に影響を与えるような計画はやめるべきだ」と語気を強く力説された。

風車中止の最終的な訴え処、決め所は、絶滅危惧種「イヌワシ」の保護にあった。

東北楽天が「ゴールデンイーグルス」とチーム名にしたほど、米国では「Golden Eagle」、至高の金冠と称されて特別保護されて来た。

本場米国での規制は厳しく、日本のような杜撰な扱いは到底考えられず、これを放置すれば、国内外で問題化することを指摘。

町の長老によると、砥の川辺りの仁木大橋の下流に、イヌワシの生息巣があったが、河川拡幅工事などで除去されて以来、観測されなくなってしまった。

雌雄二羽で生活し繁殖数がごく限られ、一度失うと二度と現れない。

現在の全国生息数は400~500羽と推定され、生息地である山岳部の森林伐採による生息環境の減少やダム建設や林道工事による攪乱が起きており、年々個体数が減少しつつある。

この古平・仁木・余市の自然度9,10の国有林・保安林100%の自然生態圏は全国でも二つと有り得ぬ稀少地。

そこに風車建設による森林伐採は、イヌワシ絶滅を助長する愚策。

生物多様性を訴える国策と真逆の方針で、即刻計画を取り止めるべきである。

1965(昭和40)年に種として国の天然記念物に、1976(昭和51)年に岩手県岩泉町と北上町が繁殖地として国の天然記念物に指定された。

1993(平成5)年に種の保存法施行に伴い国内希少野生動植物種に指定、また動物愛護管理法の特定動物に指定されている。

上村智恵子議員は、「日本野鳥の会」に所属され、バードストライクなどの被害状況も把握されており、風車に依る人災を憂慮し、反対の意向を示された。

当会も、今後イヌワシ保護に向けての働きかけを、風車反対運動と共に展開する予定である。

十、「ニシン、裏山に上(のぼ)る」

仁木町東山の中腹に見渡す大農園は、20ha(東京ドーム4・2個)、約5000本の果樹(サクランボ4000本)を栽培し、年間5万人も来園する「さくらんぼ山観光農園」。

その山野井英幸代表は、仁木町果樹農家の先駆者・功労者であります。

常日頃ご指導戴く代表から、こういう尊いお話を教えられた。

それは「ニシン、裏山に上(のぼ)る」。

戦前、余市・小樽・積丹の浜にニシンの郡来(くき)があった頃、浜には海中プランクトンが大量に生息して、それを求めてニシンがやって来たのだ。

元を辿れば、浜に流れる余市川が運ぶ扶養物であった。

それは広葉樹の雑木林(ぞうきばやし)が堆積した微量栄養素は、雨や風を通して川に流れ込み、浮遊生物プランクトンを育てる。

つまり、ニシンは見えない裏山の堆肥を餌として求めて、謂(い)わば、山に登って来たとも言えるのだ。

この想像だにしなかった自然の循環。農業も、林業も、漁業も一心一体なのだ。

農林漁が、山を育て、作物を育て、魚を養うのだ。

余市湾の豊漁は、仁木の森林あってのお陰であり、すべてが「お互いさま」「お陰さま」の世界なのだ。

なんと素晴らしい循環の町、町の交流ではないか。

ただ残念なのは戦後、雑木の伐採、建材用に針葉樹の植林を国が挙って奨励したため、落葉しない山は痩せる一方で、ニシンの郡来(くき)はとんと聞かなくなった。

国中、山は痩せ、海も痩せてしまったのだ。

一方、サケは、孵化のために母川に遡上し、ホッチャレとなって最後は絶え果てる。

それをクマが食して糞尿を、山に撒く。それが落ち葉と共に山を肥し、木々を育てる。

そして、雨がその栄養を運んで川に流す。

ニシンもサケも山に登ったのだ。驚くべき自然の摂理とダイナミズム。

それが「森は海の恋人」。3・11での復興で、宮城県気仙沼湾で牡蠣(かき)養殖を営む畠山重篤さんが、盛んに山での植林事業を呼び掛けたのは、実は遠く回って、一本の木が、一片の牡蠣を育てていることに気付いたからだ。

まさに「お互いさま」の互助世界なのだ。手元を施す前に、遠くを助ける。

それが、周り回って自らが助けられるのだ。すべてが、ありがた共同社会なのだ。

極楽では、三尺三寸の長い箸を使って、他に食べさせて、他から食べさせられる満腹世界だ。

地獄では、長い箸で自分だけ食べようとするから、御馳走にありつけぬ腹ペコ世界だ。

だから、風車建設で、山を削り、森を伐採してはならないのだ。

遠くの木々の喪失が、近くの海を貧しくさせてしまう。すべてが、繋がり合っている。

仁木も、余市も、古平も我も隣もなく一緒になって、風車建設に反対していかねばならない。

ましてや、山中の重金属を、余市川に流してはならない。

それは魚介の死をも意味するだろう。

余市川上流における鉄塔建設、トンネル掘削、道路拡幅などの造成で、濁流が下流に堆積する土砂となる。

60年に一度、百年に一度の大水害を拡散防災するために、河川整備・護岸拡幅工事が行われている。

子供の頃の地滑り体験談など、銀山の野崎明壽議員が、懇切に語ってくださった。

十一、老人力と「よそ者、バカ者、若者」

一切の世の中は、新陳代謝している。同化交替している。

一時として、同じ物、同じ流れはない。

「生々流転」が、この世の習いのだ。自然も、人も、世の中も一つ所に止まらない。

これが人の世の定めなのだ。人生なのだ。留まることなく、良き流れに、いかに流れて行くかは、「温故知新」。

故(ふる)きを温(たず)ねて、新しきを知る。これは、家も、国も、政(まつりごと)は同じなのだ。

古賢を尊びて、新材を育てる。両方の兼ね合いが、必要なのだ。

町政にも、古き良き伝統を守って人を尊び、そして新しい風と人を送り込む。

常に新陳代謝させて、古今一体になって、前進する必要がある。

これが、自然という流れ。

旧態依然とした体質を脱却して、前に向かって昇る。

それには、新しい血、新しい発想が、必ず要る。

改革するには、「よそ者、バカ者、若者」が要る。

「よそ者」。

村だけの発想は固執(こしゅう)し枯渇(こかつ)する。

そこに他所から移り住む人の発想が、マンネリから町を切り拓く。

新しい切り口で、角度で、我が町を見直してみる。

すると、見たことのない可能性が現れる。新しい刺激もまた明るく楽しいのだ。

「バカ者」。

名誉・利権等々の保身で計算することは一切ない。すべてを投げ捨てられる人。

外目からは、「馬鹿でないかい」と、思われる無欲の人でないと町の改革は出来ない。

「若者」。

この若者こそ、国の宝、町の宝なのだ。若さはイイ。力がある。元気がある。よく食べる。よく遊ぶ。

それだけでイイ。いるだけでイイ。頼もしい。それだけで町を託せる。

若者を受け入れる町は、必ず発展する。必ず伸びる。

「よそ者、バカ者、若者」を理解し、受け入れる自治体こそ、町民こそ、明日へのバネであり、本当のしなやかさなのだ。

あの明治維新の大偉業を成し遂げたのは、地方郷士の若武者の「国を変えたい!」との無欲の志だった。無私の行為だった。

田舎出の龍馬が、西郷(セゴ)どんが、国を変えたのだ。

「命(いのち)もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は、仕末に困るもの也。 この仕末に困る人ならでは、艱難を共にして国家の大業は成し得られぬなり。」

正に、彼らこそ「よそ者、バカ者、若者」だった。

常識や因習を覆(くつがえ)し、新しい町の行く手を照らすのは、若者という光なのだ。

だが、経験なき若者だけでも、ダメ。

そこには、経験深き古参の老者が要る。老獪(ろうかい)なる智慧が必ず要る。

老者と若者のドッキングだ。成功の鍵は、この妙合なのだ。町の発展は、この和合にある。

頭と足が必要。知恵力と行動力が必要。古きを尊ぶ謙虚さと、新しきを取り入れる斬新さが要る。

老若男女の混然一体の大きな心、大きな思いが大切だ。

これまでの功績を讃え、これからの世界を夢見る。

否定ではなく、融合。拒絶ではなく、超越。

誰彼となく、みんな仲良くなることだ。友だちになることだ。

和気藹々(わきあいあい)と、愉快にやろう!

町作りを。未来作りを。

選挙も近い。今の仁木、明日の仁木を思う人、考える人、行動する人。

真実の人を見分けて、判断して、心正しく、きれいに、投票しましょう。

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宮下周平

1950年、北海道恵庭市生まれ。札幌南高校卒業後、各地に師を訪ね、求道遍歴を続ける。1983年、札幌に自然食品の店「まほろば」を創業。

自然食品店「まほろば」WEBサイト:http://www.mahoroba-jp.net/

無農薬野菜を栽培する自然農園を持ち、セラミック工房を設け、オーガニックカフェとパンエ房も併設。

世界の権威を驚愕させた浄水器「エリクサー」を開発し、その水から世界初の微生物由来の新凝乳酵素を発見。

産学官共同研究により国際特許を取得する。0-1テストを使って多方面にわたる独自の商品開発を続ける。

現在、余市郡仁木町に居を移し、営農に励む毎日。

著書に『倭詩』『續 倭詩』がある。