マクロビオティック one テーマ (文)ムスビの会主宰 岡部賢二
肝臓が疲れやすい春先 皮膚のトラブルも増える
春は木の芽時といわれますが、冬の間に体内に蓄積した老廃物が芽吹く(溶け出す)時期でもあります。
春の暖かさによって脂肪細胞等から溶け出した汚れが血液内に漏れ出すため、その浄化にあたる肝臓はフル稼働状態を強いられます。
肝臓の処理能力が強ければ問題ありませんが、ヘトヘト状態となり疲れてしまうと、浄化できなかった汚れが血液中に垂れ流されることになります。
この時に、肝臓を助けるのが皮膚です。皮膚は220万個にも及ぶ汗腺を使い、血液中に滞った老廃物を汗として吐き出す浄化装置です。
ところが、汚れが多すぎた場合、汗腺に汚れが目詰まりしてしまい、皮膚炎を引き起こします。
このため冬場の体内の汚れを浄化する肝臓が疲れやすい春先から皮膚のトラブルが増えるのです。
ステロイドの問題とそれに代わる手当て法は
近年増加しているアトピー性皮膚炎は、ステロイド(副腎皮質ホルモン)を使った治療が主になっています。
ところが問題はその副作用です。
皮膚から体内に入った合成化学物質は経皮毒となり、わずか10%くらいしか解毒されないまま体内の各所に蓄積されていきます。
なかでもステロイドの場合は利尿作用の衰えによる顔のむくみ(ムーンフェイス)、骨粗しょう症、記憶力の低下、脱毛、精子の減少といった腎・膀胱系の働きに悪影響(副作用)を及ぼします。
ですからステロイドに代わる安全なかゆみ止め、保湿剤として働く手当てが求められます。
そこでお勧めするのがマクロビオティックの手当て法「生姜油」です。
これは純正な圧搾しぼりの胡麻油(色の透明な低温焙煎のものだと香りが少なくて使いやすい)に同量の生姜(ひね生姜)のしぼり汁を加え、よく混ぜるだけの簡単で便利な手当てです。
何よりも材料が食べ物なので安心・安全です。
保湿力が高い生姜油 虫さされ・痛みに効果も
アトピー性皮膚炎で一番の問題はかゆみが強く出ることで、皮膚に血がにじむまでかきむしってしまうケースもあるくらいです。
ところがこの生姜油を塗るとかゆみが収まるのです。
さらに胡麻油が保湿剤としての役割を果たし、皮膚が乾燥するのを防いでくれます。
これは生姜油に血流を良くする働きがあるためで、末梢の細かな毛細血管内に目詰まりして炎症を起こしている老廃物が洗い流されることで、かゆみや炎症が治まるのだと考えられます。
この他にも生姜油は虫さされによるかゆみ、おむつかぶれ、湿疹、しもやけ、乾皮症、かかとの荒れ等にも効果的です。
また、顔面神経麻痺、けんしょう炎、こむら返りといった症状を和らげる抗けいれん作用や、神経痛やリューマチ、頭痛などの痛み止め効果も期待できます。
さらに頭皮に塗れば天然の育毛剤として働きます。
これは血液の循環を良くして老廃物を洗い流し、血液から酸素や栄養成分が細胞内に充分供給されることで細胞の新陳代謝機能が正常な状態に戻るからだと思われます。
コリやハリといった筋肉のこわばりにもおすすめです。
私は、胡麻油に麻の実油(ヘンプオイル)を混ぜて自家用の生姜油を作っています。
麻の実油は大麻の実を絞った油です。
食用としてもすぐれた効能効果を持っていますが、食用以外でも肌の保湿力と浸透性に富み、血行を良くする働きから化粧品として使用されています。
ベタつきがなく、サラサラしているのでアロマテラピーやマッサージなどのベースオイルとしても利用されています。
麻の実油を配合するとさらに改善効果が
実は、一昨年オーストラリアに講演に行った時に、麻の実油を配合したスキンクリームを買ってきました。
これがなかなか良かったので、生姜油に配合することを思いついたのです。
すると、皮膚炎の改善効果が胡麻油だけの時よりも格段に上がりました。
量的には胡麻油と麻の実油同量に対して、油の総量と同じ量の生姜汁を加えて混ぜます。乳化しにくい場合は、胡麻油を少量足してください。
ワンプッシュ式の保存容器(私の場合、美容液の空き容器を活用しています)だと酸化しにくいので、冷蔵保存すれば1ヶ月くらい長持ちします。
密封容器がない場合は、1週間以内に使いきってください。
塗る前に容器をよく振って乳化させ、塗る時は、マッサージしながらベトつきがなくなるまですり込むのが秘訣です。
ただし、食べ過ぎていると効果が薄くなるので、少食や素食、プチ断食と並行しながら手当てを行ってくださいね!
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月刊「むすび」 2016年04月号より
正食協会では、月刊誌「むすび」を毎月発行しています。「むすび」は通巻600号を超える息の長い雑誌です。
マクロビオティックの料理レシピや陰陽理論、食生活、子育てや健康、環境問題など幅広いテーマを取り上げています。
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Profile おかべ・けんじ
大学在学中に渡米し、肥満の多さに驚いて「アメリカ社会とダイエット食品」をテーマに研究。
日本の伝統食が最高のダイエット食品と気づいた後、正食と出会う。正食協会講師として活躍後、2003年、福岡県の田舎に移り住み、日本玄米正食研究所を開設。
2005年にムスビの会を発足させ、講演や健康指導、プチ断食セミナーやマクロビオティックセミナーを九州各地で開催している。正食協会理事。
著書は「マワリテメクル小宇宙〜暮らしに活かす陰陽五行」(ムスビの会)、「月のリズムでダイエット」(サンマーク出版)、「心とからだをキレイにするマクロビオティック」(研究所)、
「家族を内部被ばくから守る食事法」(廣済堂出版)、「からだのニオイは食事で消す」(河出書房)、「ぐずる子、さわぐ子は食事で変わる!」(廣済堂出版)、「月のリズムで玄米甘酒ダイエット」(パルコ出版)。
ムスビの会ホームページ http://www.musubinewmacro.com