森下敬一 『食べもの健康法』●にら
昔から、北海道や東北地方などでは、ニラを盛んに食べてきた。それというのも、ニラには優れた保温作用があるからだ。
ニラを刻みこんだ味噌汁や雑炊をたびたび食べていると、耐寒力がうんと高まる。
それと同時に、冷え性、寝小便、神経症、シモヤケなど、冷えから来るいろいろな障害もすっかり治ってしまう。
そればかりかニラには、生殖腺の機能も盛んにする作用もあるので、性的能力も大いに増強される。
特に、男性の性機能の強化に役立つことから「起陽草」という別名もつけられているほど、精力減退や早漏などに卓効をあらわすのである。
このニラも、戦前は、東京の八百屋ではみられなかった。
寒冷地の人達に愛されたニラもその特有の臭気のために、都会人には敬遠されたわけだ。
しかし、この臭気成分には硫黄質が含まれているので、すぐれた殺菌・防腐作用を表す。腸内に有害細菌が繁殖するのを防止するのである。
加えて、ニラの揮発成分は、胃壁を刺激して胃液分泌を促し、繊維は腸の働きを盛んにする。このため、ニラは腹痛や下痢症に卓効を表す。
消化機能障害を根本的に直し、体力回復を促すのである。
ともあれ、食品公害時代に生きる現代日本人は胃腸機能が大きく狂わされているから、健胃・整腸効果の大きいニラを大いに利用すべきだ。
胃腸機能の失墜こそ、すべての慢性病の元凶なのである。
またニラには、カロチン、ビタミンB1、B2、Cなどが豊富に含まれているが、食べることによってビタミンB1の補給効果が飛躍的に大きくなるという特性を持っている。
熱によっても破壊されにくいビタミンCが、B1の吸収をよくする上に臭気成分である硫化アリルがB1と結合して、B1の吸収や体内保留を助けるからだ。
ビタミンB1を十分に補給することは、穀物中心食であるわれわれ日本人にとって、特に重要である。
澱粉質をスムーズに代謝して、エネルギーを効率よく生産するためにはB1が大量に必要だ。
白米や精白小麦製品を常食していると例外なくB1欠乏になるから、せいぜいニラを食べるべきだ。
ニラは懶人草(らんじんそう)ともいわれる。懶とは、なまける、めんどうくさがるの意。
一年中栽培できるし、摘めば次々と新芽が出てくるから、なまけ者がつくる野菜としてはもってこい、というわけである。
ニラは葉緑素や鉄もたっぷり含まれているから、貧血に有効で、鼻時の出やすい体質にも有効だ。
また不眠症の人はニラを枕元において匂いをかぐとよい、
ニラをもんだ汁をつけると止血効果がある、痔にはニラを煎じた汁で患部を洗うと有効・・といった即効的効果もある。
■にらのごまみそ
材料(4人分)
・にら・・・300g
・油揚げ・・・2枚
・しょうが・・・1かけ
・黒ごま・・・大さじ2
・ごま油・・・大さじ3と小さじ1
・だし汁・・1/2カップ
・麦みそ・・・大さじ2
・自然酒・・・大さじ1
・みりん・・・大さじ1と1/2
<作り方>
①にらは5cmに切り、油揚げは熱湯で油抜きして水気を取り、千切りにし、しょうがも千切りし、黒ごまは香ばしく炒っておきます。
②ごま油大さじ2杯を熱し、しょうがを炒め次ににらを加えて塩少々で炒めて取り出し、さらにごま油大さじ2杯で油揚げをサッと炒めます。
③ごま油小さじ2杯、だし汁、みそ、自然酒、みりんを合わせて弱火でよく練ります。
④にらと油揚げを、器に盛りつけ、③のごまみそをかけて召し上がってください。
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森下敬一 (もりした けいいち) 医学博士
お茶の水クリニック 院長 千島・森下学説『腸管造血』提唱者
東京医科大学卒業後、生理学教室に入り、血液生理学を専攻。千葉大学医学部より学位授与。
新しい血液性理学を土台にした自然医学を提唱し、国際的評価を得ている。
独自の浄血理論と、玄米菜食療法で、慢性病やガンなどに苦しむ数多くの人々を根治させた実績をもつ自然医学の第一人者。
著書に「血液をきれいにして病気を防ぐ、治す 50歳からの食養生 」「ガンは食事で治す」など約80冊がある。