電気に依存した生活により自律神経が乱れ食欲の異常につながる【文明と食欲】

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磯貝昌寛の正食医学【第90回】文明と食欲

アーミッシュから学ぶ

遺伝子が正常なはたらきを保つような生活を今も実践している人々がいます。

その人々は「アーミッシュ」といい、全米の各州でコミュニティーを作って生活しています。アーミッシュは18世紀前半、宗教的な迫害を逃れてヨーロッパからアメリカに移り住んだ人たちを起源としています。

アーミッシュは電気や車、電話などの文明の利器を使わず、同じ身なりをし、農業中心で自給自足の生活をしています。相互扶助の精神を持ち、皆で助け合って生きています。

20世紀初頭には五千人程だったアーミッシュは、1995年には12万人以上になり、2000年になると16万人を超え、2008年の調査では22万5千人と右肩上がりに増加しています(「アーミッシュ」堤純子著より)

わたしがアーミッシュの人たちを知ったのは、2006年の事件がきっかけでした。

あるアーミッシュスクールで子どもたちを狙った銃殺事件が起こりました。この事件は子どもたちを狙ったという残酷さ以上に人々を驚かせたことがあります。

犠牲になった少女の中で最年長の子が、犯人が人質を殺害するつもりであることを悟って他の子たちを守るために「私を撃って」と申し出て銃殺されたのです(5人の少女が死亡、犯人もその場で自殺している)。

さらに驚くことは、その日のうちに犠牲者の教区の人々が次々に犯人の自宅を訪れて、犯人の妻とその両親にお悔やみを言い、赦しを行ったのです。

私はこの事件を日本の新聞で知り、アメリカにも自他一体を目指す人々がいることに心底驚きました。

アーミッシュの生活は日本の古き良き生活と相似しており、マクロビオティックの考えにつながるものがあると思ったのです。

アーミッシュが電気やガスの使用、電話の個人所有、車の所有や運転などを禁じていることは、これらが後の世代に悪影響を及ぼすだけでなく、ひいてはアーミッシュ全体の衰退につながりかねない、と考えているからです。

アメリカ社会に電気が普及し始めた20世紀初頭、あるアーミッシュの指導者が「電気そのものが悪いわけではない。電気の使用が多くの誘惑につながり、ひいてはアーミッシュ家庭の、そしてアーミッシュ全体の破滅につながると考えられるから禁じているのだ」と発言しましたが、この考え方は今でもアーミッシュの意識の根幹を成しているようです。

文明と食欲

食欲の異常である過食症、あるいは拒食症は、電気に依存した生活から脱却することにより大きく改善すると云われます。

夜遅く起きていればいるほど、正確には夜遅くまで起きていられればいられるほど、過食行動に拍車がかかります。

自律神経の関係で夜になると心身をリラックスさせる副交感神経が本来は働くのですが、電気による照明を遅くまで浴びれば浴びるほど副交感神経は働かず、心身ともに休まりません。

逆に昼間優位に働く交感神経が夜まで続きます。太陽が出ている間はやる気を促す交感神経が、夜まで続くと交感神経過剰となり、緊張と興奮に変化するのです。

人はその緊張感を緩めようとさまざまなモノに手を出します。

交感神経を鎮め、体を緩める副交感神経が優位にならなければ人は眠ることができません。過食行動も副交感神経を無理矢理に発動させる、そのひとつです。

私たちの文明社会と称する社会生活をつぶさにみれば、電気の過剰使用による交感神経優位状態を、食欲を刺激することで副交感神経を発動させています。

テレビを見ながら食事をしているとついつい食べ過ぎてしまうというのも自律神経の陰陽からみると当然のことです。

アーミッシュの人々は科学や陰陽という見方に頼らずとも先人の叡智を大事に受け継ぎ、それを後世まで残そうと本物の生き方を仲間とともに実践していることに驚嘆せざるをえません。

剣によって立つものは剣によって滅ぶ

聖書に「剣によって立つものは剣によって滅ぶ」(マタイ福音書26章)という言葉があります。

武力によって成り立つ国家あるいは社会は武力によって滅びることを暗示したコトバです。原発問題に揺れる日本社会でも、この言葉には非常に重いものがあります。

原子力発電の原料であるウラン、そしてウランから生成されるプルトニウム。ウランやプルトニウムは原子力爆弾の原料でもあります。米ソ冷戦時代に大量に作られたプルトニウムは現在、英、仏、米、露の順で大量に保有されていると云われます。

この4国で合計25万㎏ともいわれるのです。ちなみに日本は約8千㎏を保有。プルトニウムは16㎏もあれば原爆ができてしまうということですから、世界には大変な量のプルトニウムがあるということになります。

原子力発電の元(はじめ)は核兵器として生みだされたプルトニウムの処分方法のひとつでした。

人類を崩壊させることができるほどのプルトニウムを作り出してしまった人間は一体どこに行くのでしょうか。

悲観的に考えると、どうしても聖書の「剣によって立つものは剣によって滅ぶ」の言葉が頭から離れません。人間の知識は聖書でいうところの剣を孕んでいるのでしょうか。

ヒトになる

今から6500万年前、当時大繁栄していた恐竜は巨大隕石の衝突による地球環境の大異変により絶滅したと云われます。

地球に激突した隕石のエネルギーは現在人類が持つプルトニウムを全部爆発させてもまだまだ追いつかないほどの巨大さだったと推測されています。

体の大きな恐竜は絶滅を免れなかったのですが、その中でも生きのびた生物がいました。数年前の新聞でも報道されていましたが、体の小さな草食恐竜が大激変時代を生き延びたというのです。

体の大きな恐竜は大食漢だったために、それとは逆の恐竜だけが生き延びたといいます。

生物の歴史は、大きく見れば見るほどこのような事象がたくさんあります。野生生物の理は弱肉強食と云われるけれど、生物の歴史からはまったく反対に弱いとされていた生物が生き残っています。

人間だって今でこそ頭を使って地球上で一番強い生物になったのですが、その昔、そう恐竜時代にはまともな食にありつけないほど力の弱い生物だったのです。

恐竜時代には人類の祖先はネズミのような小さな動物だったと云われます。恐竜の目を忍んで、恐竜が食べないような食物を人知れず( 恐竜知れず…)食べていたというのです。

繁栄が続くと、それを享受する生物の食物は硬いものから軟らかいものへと変化していきます。恐竜も時代が下るにつれて食べているものが軟らかくなっていったというのです。人間もまた同様です。

恐竜時代に生きたヒトの祖先は、他の生物が食べられないような硬いものを食べていたようです。

恐竜のように体が大きくなく、他の生物を圧倒する力のない弱い生物であったからこそ誰も食べないようなものを食べざるをえなかったのです。しかし、それがヒトの特徴である大脳を育てました。

硬いものを食べるという行為がヒトになる第一歩となったのです。

月刊マクロビオティック 2019年6月号より

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磯貝 昌寛(いそがい まさひろ)

1976年群馬県生まれ。

15歳で桜沢如一「永遠の少年」「宇宙の秩序」を読み、陰陽の物差しで生きることを決意。大学在学中から大森英桜の助手を務め、石田英湾に師事。

食養相談と食養講義に活躍。

マクロビオティック和道」主宰、「穀菜食の店こくさいや」代表。