認知症を含め様々な生活習慣病に断食や半断食が有効である

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磯貝昌寛の正食医学【第60回】 認知症

65歳以上の7人に1人が認知症になるといわれる現在の日本。

認知症はもはや個人の病気ではなく、社会全体の病気であり、社会問題である。テレビが一億総白痴化を招く、と大宅壮一が言ったのはもう半世紀も前。

白痴と認知症は病理的に違うものであっても、心身の機能低下という点では共通する部分が少なくない。

認知症やがん、糖尿病などの生活習慣病は、食と生活の間違いから発生している。いやむしろ、生活習慣病の症状は、症状そのものが心身改善の働きで引き起こされているといっていい。

認知症の症状である健忘、徘徊なども心身の活性を高めようとする自然治癒力のひとつである。

家の鍵をかけ忘れたのではないか、ガスの火を消し忘れたのではないかと家に戻ったり、健忘が出てくると必然的に歩かなくてはならない。

歩くことで腸と脳が活性化され、脳機能が高まっていく。

もちろん程度があって、歩くことができなくなったり、生活そのものが崩壊するに至る認知症では自然治癒力が及ばない。

ところが、重度の認知症の方に共通しているのが、食や生活の乱れだけなく、長年の投薬が下地としてある。

現代一般の化学物質で作られたクスリは、自然治癒力を阻害して症状を抑え込む力が強い。臭いものにはフタ的な処方の果てに重度の認知症患者を作り出している。

全国各地にある認知症患者を受け入れる介護施設での現状は、いつ崩壊してもおかしくない状態に追い込まれている。

認知症もまた、原因をフタで覆い隠すのではなく、根本原因である食と生活を見直すキッカケとして改善に取り組んでいけば、有り難いものとなる。

オートファジー

生理学・医学ノーベル賞に大隅良典さんが受賞された。大隅さんは細胞の自食作用「オートファジー」を研究し解明された。

オートファジーは古くなったたんぱく質や異物であるゴミを集めて分解し、分解してできたアミノ酸を新たなたんぱく質に再合成するシステムのことをいう。

オートは自分、ファジーは食べるという意味で、自分自身を食べる、というのがオートファジー。

ヒトの体の中では毎日300〜400gのたんぱく質が合成されているという。一方、食事から摂取するたんぱく質の量は70〜80g程度といわれる。

不足分は、自分の体のたんぱく質をアミノ酸に分解し、オートファジーの働きによって再利用することで補っている。

私たちの体は80%ほどリサイクルのたんぱく質で成り立っている。自給自足を体の中で実現させている。

大隅さんが受賞された理由の大きなひとつに、オートファジーの医学への利用がある。オートファジーを活性化させればがんや神経疾患の症状が改善されるのではないかという。

逆にオートファジーの機能を止めることでもがん治療に応用できるのではないかとも考えられているからオモシロイ。

オートファジーは体内の自給自足システムである。この機能は体が飢餓状態の時に最も高まるという。

断食状態の時にオートファジーの働きによって体に蓄積されたたんぱく質を再利用し、さらに体内の異物であるゴミ(老廃物)も再利用してしまうことから、オートファジーは体内の浄化システムとしての働きもある。

しかし一方で、オートファジーはがんなどの腫瘍が増大した状態では、腫瘍が生き残る方法としてオートファジーが使われることがあるという。

腫瘍自身も自給自足し、自らの生きる道を必死に探している。

病気治療としてマクロビオティック指導にあたる場合でもオートファジーの研究には大きな示唆がある。

がんの進行状況、患者の体力によって断食や半断食が合う場合と合わない場合がある。断食や半断食が合う場合はオートファジーの浄化システムが上手に働き、正常細胞を主に活性化させ生命力を高める。

ところが、がんの状況次第では断食や半断食が正常細胞よりもがん細胞を勢いづかせてしまう場合がある。

この時にオートファジーは正常細胞よりもがん細胞に働いていると考えられる。

オートファジーを体内の浄化機能として最大限発揮させるのは日々の生活ではないか、と私は考えている。

がんの増殖を助けるオートファジーでなく、浄化システムとしてのオートファジーを優位にするのが各人にあった食事と手当て、生活にある。

2006年、英科学誌「ネイチャー」にオートファジーがアルツハイマー病に関係しているとする論文(東京都臨床医学総合研究所などの研究)が掲載された。

マウスの遺伝子を改変し、全身で自食作用(オートファジー)を起こらなくしたら、神経と肝臓の細胞に異常なたんぱく質がたくさん溜まり、人間のアルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患の様な症状が出たという。

認知症を含め様々な生活習慣病に断食や半断食が有効であると現代科学が証明する時代になった。

陰陽と認知症

私たちは成功体験よりも失敗体験の方が記憶が鮮明だ。成功した時よりも失敗した時の方が脳の神経細胞が活性化するという国内外の研究は多い。

また、答えが決まったものよりも、正解が一つでない、多様な解のある問題を思考することもまた、神経細胞を活性化するという。

桜沢先生の著書や禅問答などは、考えることそのもので認知症予防になり、その思考を深めることが判断力を高める。

認知症は現代社会への警鐘だろう。

カネによる経済至上主義に対する自然からの警告を人の体を通して私たちに与えている。自然な生き方の果てには認知症はない。

老いては子孫後人から頼りにされて敬われるのが自然な生き方である。飛ぶ鳥跡を濁さず、食と生活が慎ましく豊かでなければ実践できるものではない。

日本人だけでなく、世界の人々が健康で自由に生きていく基本にマクロビオティックがある。

月刊マクロビオティック 2016年12月号より

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磯貝 昌寛(いそがい まさひろ)

1976年群馬県生まれ。

15歳で桜沢如一「永遠の少年」「宇宙の秩序」を読み、陰陽の物差しで生きることを決意。大学在学中から大森英桜の助手を務め、石田英湾に師事。

食養相談と食養講義に活躍。

マクロビオティック和道」主宰、「穀菜食の店こくさいや」代表。