森下敬一 『食べもの健康法』●山いも
「正月の松の内に山いもをすりおろしたトロロを食べれば、中風にかからない」 という俗説がある。
これは、モチの過食による害を避けるための知恵と考えられる。
モチは見かけよりもずっと実質的分量のあるもので、つい食べ過ぎてしまう。
これが連日ともなると、胃腸に大きな負担をかけ機能減退をおこして血液を汚し、腹部の動脈を圧迫して血圧も上昇する。
脳の血管が弱っている人では、脳卒中を起こしその後遺症である中風すなわち半身不随にもなりやすい。
そこで、とろろを食べ胃腸の負担を軽減せよというわけだ。
山いもはめざましい消化促進作用を持っている。
澱粉の消化酵素であるアミラーゼが4~5%と、大根おろしをしのぐほどの高い割合で含まれている。
しかも、山いもの澱粉自体も、大変に消化がよい。
普通の澱粉は加熱することによって消化しやすい状態に変わるのに山いもの場合は、ナマのときにすでにその消化しやすい状態になっているのである。
だから、山いもの消化酵素は、一緒に食べた他の食品や、すでにおなかの中に入っているものの消化を促すほうにふり向けられる。
したがって別に正月の胃もたれだけに限らず、幅広い効用を表す。とくに胃腸病全般に有効で高血圧の予防に役立つ。
山いもを食べると性がつく、といわれる。これも酵素作用と密接な関係がある。
山いもにはアミラーゼのほかにウレアーゼ、オキシターゼ、グルコンターゼなどの多彩な酵素が含まれている。
これらが腸内細菌の性状をよくするとともに腸粘膜の機能を高める。こうして腸の生態系が健全になると、対蛋白の生合成の力は大いに高められる。
即ち、しっかりした質の体細胞がつくられるようになり、スタミナは増強されるのだ。
一般には、動物蛋白食品を食べると体のたんぱく質が十分に作られてスタミナがつく、というように誤って考えられている。
それは、消化の生理を正しくとらえていない、現代栄養学の考え方だ。
本当は我々の体を構成する蛋白質は、炭水化物を素材として生合成される。その作業を順調にすすめられるかどうかは、腸内細菌の性状にかかっているのだ。
山いもの酵素は加熱すると効力を失うからトロロ汁を作るときは、煮汁は適当にさましてから加えるようにすること。
また、いかに山芋と一緒に食べるとはいえ、ご飯をろくにかまずに流しこむのは感心しない。
できるだけご飯にかけないで食べるようにしたい。
山芋のヌルヌルは、蛋白の一種であるブルプリンと、コンニャクの成分であるマンナンが結合したもので、すぐれた強壮効果を持っている。
このため常食していると、基礎体力が増強し、呼吸器障害、虚弱体質、ノイローゼ、精力減退などに卓効をあらわす。
■山いもの納豆和え
材料(7人分)
・やまいも・・・200g
・にんじん・・・50g
・玉ねぎ・・・100g
・納豆・・・100g
・けずり節・・・5g
・もみのり・・・少々
・しょう油・・・大さじ2
・自然塩・・・小さじ1/2
<作り方>
①山いも、にんじんはすりおろし、納豆、玉ねぎはみじん切りにしておきます。
②材料全部を合わせ、調味します。
③器に盛り、もみのりを飾ります。
■山いもののり巻き
材料
・やまいも・・・300g
・のり・・・3枚
・わさび・・・適量
・タレ(米酢大さじ3、みりん大さじ1と1/2、自然塩、しょう油少々、だし汁大さじ3)
<作り方>
①山いもは千切りにします。
②のりはタテ半分に切り、裏を遠火であぶります。
③巻きすの上に表を下にしてのりをおき、①を巻きます。つぎ目を下にしてしばらくおき、6つに切り、わさびとタレを添えます。
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森下敬一 (もりした けいいち) 医学博士
お茶の水クリニック 院長 千島・森下学説『腸管造血』提唱者
東京医科大学卒業後、生理学教室に入り、血液生理学を専攻。千葉大学医学部より学位授与。
新しい血液性理学を土台にした自然医学を提唱し、国際的評価を得ている。
独自の浄血理論と、玄米菜食療法で、慢性病やガンなどに苦しむ数多くの人々を根治させた実績をもつ自然医学の第一人者。
著書に「血液をきれいにして病気を防ぐ、治す 50歳からの食養生 」「ガンは食事で治す」など約80冊がある。