磯貝昌寛の正食医学【第95回】自然治癒力を高める心と生き方
依存心と免疫力
人間も含め、動物には病気やケガに対応する免疫力というものがあります。
免疫力は病気やケガに対応して、「ナニクソ」という心意気で打ち勝とうとする力といっても間違いではありません。
危機や危険にさらされたときに出てくる「火事場のクソ力」なるものもある種の免疫力といってもいいでしょう。
この免疫力は、依存心や依頼心があると、正常な働きができないことを多くの方と触れ合って痛感します。
「こうしてもらいたい」
「ああしてもらいたい」
誰もが多くの「タイ」を胸の内に抱えているものですが、「タイ」が大きくなればなるほど悲しいかな免疫力は下がっていくのです。
もちろん、依存心や依頼心と免疫力は相関関係ですから、免疫力が下がってくると依存心と依頼心が大きくなってくるという面も多分にあります。
しかし、これまた多くの人を見ていると、日々の生活の乱れに伴って依存心と依頼心の芽が伸びてきているのです。
寝る時間が遅い、夜中に目が覚めたら眠れない、朝の目覚めが悪い、食事の時間もバラバラ、排便も不規則で時間も安定しない等、日々の生活リズムに規則性がなくなってくると自律神経が乱れてきます。
自律神経は、自然につながる神経です。
主として太陽のリズムにつながる神経が自律神経です。
太陽の巡りに合わせて生活していれば自律神経は乱れず、けっして依存心や依頼心が頭をもたげることはないのです。
親やパートナー、自分が関わる人たちに「こうしてもらいたい」「ああしてもらいたい」という気持ちが大きくなってきたら、まずは自分の生活を見直すことです。
早寝早起きし、日中は汗をかいて体を動かすことです。食事はもちろん、住む国の伝統的な食生活です。
伝統的な食生活と生活リズムが調えば、自律神経は安定します。
自律神経が安定すると依頼心や依存心はすっかり消え失せ、免疫力も正常な働きを取り戻します。
それどころか、自らの力で歩んでいこうとする自立心が大きくなってくるのです。
自然治癒力というのは、免疫力をもう一歩深めたもののような気がしています。
私たちの心身を癒す力は、自然とつながっているかどうかです。私たちの細胞が自然とのつながりが強いものであればあるほど癒す力は強いのです。
体の自然性は何といっても自然な食で私たちの体が満たされているかどうかです。
自然な食で満たされた細胞の癒し力は計り知れません。それは自然な栽培で作られた穀物や野菜、あるいは自然な土地に生える野草たちの生命力と同じです。
太陽や月、地球や野草、自然な野菜たちに依存心や依頼心はありません。
太陽が動くのが億劫になって、地球に「おしりを押してもらいたい」などということはありません。
自然は本来、自立心で満たされています。
私たちに旺盛な自立心が出てくるかどうかは、体が自然で満たされたかどうかの大きな指標になります。
私は「依存せず、孤立せず、自立した」状態が心身の中庸を保った状態だと感じています。
自らの心持ちと行動で自分の陰陽をはかってみるのもオモシロイ試みです。
手のひらとエントロピー増大の法則
食養手当て法の「手当て」とは、読んで字のごとく患部に手を当てて病を治したことに由来します。
手からは目には見えない自然な電磁波(自然放射線)が出ています。
今騒がれている人工的に作られた放射線とは「はたらき」が異なる放射線が全身からほとばしっているのが人間です。
人間だけでなく自然界にあまねく存在するものにはすべて、強弱はあっても自然放射線が出ています。
その辺りに落ちている石からも小枝からも自然放射線が出ています。
繊細な測定器で計測すれば、自然放射線も人工放射線も同じ数値で表されてしまいますが、人工と自然には大きな違いがあります。
自然界はエントロピー増大の法則に支配されているといいます。
エントロピーとは、無秩序の状態の度合いを示す物理学用語です。自然界はエントロピーが増大しながら進み、秩序あるものが徐々に無秩序へと向かっているというわけです。
エントロピー増大の法則を陰陽で見ると確かに一理あります。動物である私たち生命は陽性で生まれ、陰性で亡くなっていきます。
命は陽性から陰性へ進み、活発に動き回る陽性な状態から徐々に落ち着いて、最後は静かに眠って陰性な状態で命の幕を下ろすのです。
「おとなしい子」というのは大人のような子ですから、本来陽性な子が陰性を持ち合わせているということです。
一見すると子どもは無秩序に見えるけれど、細胞レベルでは秩序ある状態の度合いは高く、老いていくほど細胞は無秩序な状態へ向かっていくのです。
病も大人になればなるほど多種多様、そして多発するのは細胞が無秩序へと向かっているからでもあります。
私たちに命の側面をみるとエントロピー増大の法則が働いています。
しかし、人間はエントロピー増大の速度を速めることも遅くすることもできます。
エントロピー増大の速度を速める代表的なものが今不安におののく人工放射線(放射能)であり、石油化学物質なのです。
肉食や身土不二から離れた食事、自律神経を乱す不規則な生活もエントロピー増大の速度を速めます。
そして、エントロピー増大の速度を遅くし、人間活動を持続的なものとするのが江戸時代まで営まれていた日本の食と生活にあります。
その食と生活から育まれた人間から発する手のひらにこそ自然放射線が溢れんばかりに出ているのです。
日本人は世界一精細な感性を持った民族でした。
手の器用さだけでなく、手の平から出る微細なエネルギーが溢れていたのも日本人の特徴です。
手のひらから出ている微細なエネルギーにエントロピー増大の速度を遅くするチカラがあり、その力を活用して病を癒す術としていたのです。
「手末の道」と云って、手からは私たちを健康に導く道が示されていたのです。
今、私たちは命の秩序を高める生活に戻らねばなりません。
コンクリートで埋め固めた生活空間は、一見秩序あるものと錯覚します。
しかし、命の観点では逆に無秩序な状態と言わざるを得ません。
自然が溢れる環境と都市の環境は、生命力においては子どもと大人のような関係性にあります。
一見すると無秩序で非効率的な自然な空間こそが命の秩序を高めているのです。
月刊マクロビオティック 2019年11月号より
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磯貝 昌寛(いそがい まさひろ)
1976年群馬県生まれ。
15歳で桜沢如一「永遠の少年」「宇宙の秩序」を読み、陰陽の物差しで生きることを決意。大学在学中から大森英桜の助手を務め、石田英湾に師事。
食養相談と食養講義に活躍。
「マクロビオティック和道」主宰、「穀菜食の店こくさいや」代表。