肝臓と身土不二

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磯貝昌寛の正食医学【第125回】食養指導録 肝臓と身土不二

肝硬変の食養法

肝硬変は多くの場合、脂肪肝の脂肪がこれ以上蓄積できないくらいまで溜まり、肝臓の解毒力を超えた脂肪分が硬化していく病気です。

肝硬変が重度になると、顔色が土気色になり、急激に痩せてきます。

肝臓が硬化するだけでなく、体全体が硬くなり、ほとんど動けない状態になることもあります。

舌も硬くなり、代謝が滞りますから、黒い舌苔が出てきたり会話がしにくくなったりします。

陰陽五行では肝臓に対応する五味に酸味があります。

肝臓には酸味が合うことを示していますが、肝硬変に関しては酸味が合わないことがしばしばです。

酸には、ものを溶かす働きとともに締める働きもあります。

重症の肝硬変の人では酸味が食べられないという人もいるのです。

脂肪肝や肝炎には酸味が合いますから、五行が確立されていた時代には肝硬変に至るまでの病気は存在しなかったのではないかと想像しています。

肝硬変の食養生でもうひとつ重要なのが塩です。

肝硬変の人は塩分はあまり必要としないのですが、もし使うのであれば岩塩をおすすめします。

海塩に比べて岩塩はマグネシウム(にがり)が少ないのです。

マグネシウムは私たちの体には必要不可欠なものですが、肝硬変に関しては塩から摂るマグネシウムは極力少なくします。

豆腐はにがり(マグネシウム)がないとできないように、マグネシウムはタンパク質を固める働きがあります。

肝硬変は肝臓だけでなく、体全体が硬化してくる病気なので、一時的にマグネシウムを断つのです。

肝硬変も肝臓のタンパク質がどんな食品で硬化してしまったのかによって合う食べものが大きく変わってきます。

チーズやバターなどの乳製品由来で肝硬変になっているのか? 牛肉なのか? 豚肉なのか? 鶏肉なのか?

または鰹節や魚の煮干しなのか?

これらの判断が望診であり、味覚なのです。

私たちの五感は環境と調和するためのセンサーですから、体に合っているものは「おいしい」のです。

「良薬口に苦し」といいますが、「良薬口に不味し」とはいいません。

「良薬口に苦し」という言葉が生まれた時代は、苦みという陽性を好む陰性な病が多かったのでしょう。

動物食と添加物食の増えた現代においては、それらの毒素を消すような食物がとても大事になってきます。

ニンニク、ニラ、ネギ、タマネギ、ラッキョウのことを五葷といって、これらは強いニオイがあるため、仏教の精進料理では敬遠され、お寺の山門前の立看板に「葷酒山門に入るを許さず」という文字が書いてあったりします。

しかし、五葷は動物性食品の毒消しにあたるものですから、肉食をしていると五葷を好むようになるのです。

逆に考えると肝硬変の人は五葷を積極的に摂った方がいいのです。

私の経験でも肝硬変の人でニンニクを毎食摂り続けて治ったという人がいます。

肝臓がきれいになれば五葷も必要なくなり、「葷酒山門に入るを許さず」の意味がよくわかります。

日本人の動物食と身土不二

日本人の栄養摂取量年次推移という統計があります。

終戦直後の1946年から現代までの食生活の変化が数字としてはっきり出ています。

それを見ると現代人の肉、卵、乳製品など動物性食品の摂取量は40倍ぐらいに増えています。

戦後、私たち日本人は動物性食品を急激に摂るようになったのです。

それは私たちが好んで食べるようになったというよりも、1954年に酪農振興法なる法律ができて、国を挙げて乳製品を中心に動物食が推奨されるようになったのです。

幼少期の私は明治生まれの曾祖母に育てられたのでよくわかるのですが、曾祖母は乳製品はもとより肉は一切口にすることはありませんでした。

「牛乳の何がおいしいのかわからない」と言っていたのです。

12歳頃までに食べてきた食生活が、その人の生涯の基礎的な食生活になるといいます。

それまでに味覚の基礎が出来上がるのです。

曾祖母には牛乳をおいしいと感じる味覚がなかったのです。

これは戦前生まれの多くの人に共通したものだったと思います。

戦後できた日本の酪農振興法は農業国であるアメリカの余剰穀物を積極的に消費させるためにできた法律です。

乳製品を中心に動物食は、私たち日本人が好き好んで積極的に食べだすようになったわけではないのです。

風光明媚な日本は自然環境に恵まれて植物が豊富です。

湿潤温暖な気候は発酵文化も発展させて、多種多様な植物性の発酵食品を生み出してきました。

穀物と野菜を中心に、植物性の発酵食品を取り入れて、世界無形文化遺産になった和食の基礎を生み出したのです。

豊富な植物食を基本とした日本人の本来の食には動物食は基本的に必要ありません。まして酪農を振興する必要はまったくなかったのです。

身土不二、体と環境は二つに分けられるものではないのです。

植物食豊富な日本で動物食がこれほどまでに多くなってしまったらどうなるか。

現代の多種多様な難病や奇病が多発している日本をみると、環境に適さない食生活の末路を見る以外にないのです。

現代人にあった塩断ち

とはいえ、私たちは失敗をしないとわからない生きもののようです。

病をえて健康の意味を知り、動物食をして植物食・穀物食のありがたさがわかるのです。

動物性食品は、そのもの自体にナトリウムが多いので、動物性たんぱくは、ある意味で古い塩の塊と言えます。

海からの新鮮な塩ではなくて、セカンドメイドの古い塩で、活性を失って塊になっています。

それが体内にあると、本来体が必要とする新しい塩が入っていかないのです。

その古い塩を塩断ちで抜いて、新しい良い塩を入れるのが、塩断ちの目的です。

動物食が一般化した現代では、多くの方が塩断ちをした方がいいと思います。

ただし陰性さが強い人には向いていません。そういう人は、無塩料理をおいしく感じないのです。

積極的に塩断ちをした方がいいのは体の凝りの強い人、大腸がんや子宮筋腫のような腫瘍や強いしこりがある、肝硬変がある、明らかに体内に硬いものがある人です。

高血圧の人にも塩断ちはお勧めできます。古い塩を抜くことで体質改善が進むのです。

私は減塩ではなく、一時的な塩断ちをすすめています。

一時的に塩断ちをしたら、その後は自分で「おいしい」と感じる塩気でいいのです。

塩断ちをすると、自分の満足できる適塩が分かるようになるからです。

数年前、2泊3日で塩断ちに来た人がいました。その人は長年、高血圧のため降圧剤を飲んでいましたが、合宿後はその薬を完全に止めることができて、一年ほど正常な血圧だったのです。

医者から減塩を勧められてずっと減塩していたけれど、高血圧は治らなかった。

でも塩断ちで一旦抜いたら、食べたいだけ塩を摂っても全く血圧が上がらなかったのです。

塩断ちを経て、塩のありがたさを感じます。塩はなくてはならないものだと思い知らせてくれるものが塩断ちなのです。

月刊マクロビオティック 2021年5月号より

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磯貝 昌寛(いそがい まさひろ)

1976年群馬県生まれ。

15歳で桜沢如一「永遠の少年」「宇宙の秩序」を読み、陰陽の物差しで生きることを決意。大学在学中から大森英桜の助手を務め、石田英湾に師事。

食養相談と食養講義に活躍。

マクロビオティック和道」主宰、「穀菜食の店こくさいや」代表。