池田 整治連載コラム
鎮まれ地獄の釜
3.11フクシマから10年の歳月が流れました。果たして我々は、その教訓を活かしているでしょうか。
私の住む愛媛最南端の愛南町から約60キロの伊方原発は、この3月、広島高裁から再稼働が認められました。
南海トラフ巨大地震が差し迫っているにもかかわらず、裁判官は「特段の危険は認められない」。
再稼働阻止を主張していた原告側も、最高裁に上告しても、この裁定は覆すことはできず、かえって他の裁判に悪影響を及ぼすとの判断から上告を断念しました。早ければ、この10月に3号機が再稼働します。
原発問題は、フクシマ以前も以後も、日本における危機管理の最重要課題です。にもかかわらず、裁判所で再稼働を認める判決が出れば、他に情報のない国民のほとんどが、安全だと安心するのではないでしょうか。
実態は、いつ第2のフクシマが起こって、文字通り日本の終焉となってもおかしくない危機的状況なのです。
一方、東京電力の柏崎刈羽原子力発電所で、テロリストなど外部からの不審者の侵入を検知するための設備の複数が故障したまま、十分な対策が講じられずに放置されていたことがわかり、改善するまで再稼働はできなくなりました。
逆から見れば、彼らの策定した「安全基準」さえ満たせば、裁判所も再稼働を認める「ルール」となってしまっている、という日本の現実です。
要するに、すぐにでも廃炉・安全化しなければならない状況にもかかわらず、再稼働で経済的利益を得る亡国の勢力がメディアを通じて、再稼働へ国民を洗脳していると言えます。
そこで、この問題に日本で最初に取り組んで来た責任者として、原発問題の真相を明らかにします。まず、戦略的観点から原発を見てみましょう。
◆北朝鮮危機と原発問題
原発問題が浮き彫りになったのは、ノドン1号が飛んできた1993年の第一次北朝鮮危機の時です。
北朝鮮の国家目標は、軍事力による韓半島統一です。戦争は大きくなるほど第一線を支える「兵站」が勝負となります。
1950年の朝鮮戦争で、半島で戦う米軍主力の国連軍を、日本が兵站基地となり支え、最終的に北朝鮮の侵攻を防ぎ切りました。そうです。
北朝鮮が韓国を軍事制圧するには、日本を兵站基地として使えなくする必要があるのです。
ちなみに、何も日本はしなかったと批判された湾岸戦争でも、兵站基地としての日本からの10万トンの物資の支援がなければ、米軍は勝ちを収めることはできなかったのです。
第一次北朝鮮危機の時、日本を兵站基地として使えなくする方法は二つ考えられました。
1 オウム等を使って米軍基地、都内の中枢をサリンで攻撃し、日本の兵站活動 を止める。
2 若狭湾の原発をコマンドで攻撃、暴走させ日本の兵站基地機能を止める。
この観点から玄海や若狭湾の原発の現地確認に行きましたが、対テロ対策など一切考慮されていなかったのは、唖然としたものです。
いずれにせよ、ここでのポイントは、原発問題と大陸の情勢は密接に関連しているという「戦略思考」を持つことです。
◆地震は一切容赦のないコマンド
実際にコマンドが原発攻撃する時は、世界情勢が極度に悪化するときです。
ある意味、情勢判断できます。また、事前に自衛隊を配置しておく等あらかじめの対応が可能です。
しかし、いついかなる時でも、地震がコマンドの代わりに原発を暴走させることができます。3.11フクシマの最大の教訓です。
なぜなら日本の原発の耐震強度は、住宅よりも低い600ガルであり、震度6で間違いなく機能不全に陥るからです。
この2月の福島沖地震では、震度6強の揺れがフクシマを襲いました。1350ガルの揺れでした。
その結果、メルトダウンして原子炉の底でジブリ状になっている3基合わせて860tの核燃料を毎時3tの水で冷却していたのが、水位が下がり4tに増水せざるを得なくなりました。
使用済み核燃料の冷却プールでも水位が下がり、増水の措置が取られました。言うまでもなく、垂れ流しの汚染水が増えます。
原発のアキレス腱である「パイプ」の破損だと思われますが、高濃度の放射能汚染環境であり、修理どころか、確認にも行けません。
◆原発の構造的・機能的欠陥
そもそも故障すれば海の底に沈めばいい潜水艦のエンジンを、陸上で使うことに無理があるのです。
火力発電も原発も蒸気でタービンを回して発電することは同じです。
ただし、万一のとき火力発電の場合、燃料を止めるか、燃料が無くなれば危険はありません。ところが、原発の核燃料は、一度核分裂反応を始めると、α線・β線・γ線、中性子を放出しながら鉛になるまで止めることはできません。
その期間「24万年!」。特に最初の50年は崩壊熱が高く、使用後も常に水で冷やさないとメルトダウンを起こし爆発します。
そのため11ヵ月使った核燃料を取り出して、冷却プールに収める一連の作業も水の中で行わなければなりません。
それゆえに短時間でできるように、冷却プールは原子炉と同じ高さに作らざるを得ないのです。
原子炉に隣接して建てられるビル5階の建屋です。水が無くなって水面から燃料棒が出ると崩壊熱で高濃度放射能を出しながらメルトダウンを始めます。その危険なプールを不安定な高所に置かざるを得ないのが原発なのです。
しかも、そのプールで数年冷やすと、50年冷やす敷地内の大きなプールに移動します。
そして崩壊熱が収まると、六ヵ所村の中間貯蔵施設に運ばれ、やがて24万年安全に保管する永久保管施設に収められるはずです。
ところが、最終保管施設は未だできず、六ヵ所村もほぼ満杯で、日本の原発はどこも冷却プールで保管せざるを得ない状況です。ほぼ90%満杯状態です。
また、核燃料を冷やすため、一炉あたり毎秒70tの海水を使います。つまり毎秒70tの7℃高い「暖流」を垂れ流します。
日本の54基の原発暖流の影響は甚大です。原発が地球温暖化対策になるという「常識」の嘘からいろいろ学ぶことがありそうです。
しかも、原発はパイプのお化けです。総延長では、80kmほどにもおよび、その溶接箇所は、2万5千箇所にもおよびます。
そのような長大な配管はそこを通る高圧の熱水の高い放射能によって徐々に変質しもろくなっていきます。
原発には、そのような構造上の欠陥があるのです。再度言いますが、地震等で破壊した原子炉や冷却プールの下のパイプは、高濃度汚染で修理できません。
◆驚きの原発耐震強度
東日本大震災では、震度7地域で4300ガルを記録。中越地震で2500ガル、先述の福島沖地震で1350ガルの揺れです。このため4300ガルに耐える住宅も販売されるようになりました。
ところが、日本の原発の耐震強度は600ガル!。建設費の節約なのか、日本の54基の原発敷地内は600ガル、つまり震度5の地震しか永久に起こらないという「前提」の「安全基準」で成り立っているのです。
地震列島に震度7の揺れがなかった地域はありません。
裁判官もこの「安全基準」に合致しているかどうかの司法判断しかしません。
もっとも稼働を始めた原発の、特に配管など強化しようもありません。
◆速やかな廃炉・安全化を
フクシマでは今も15万人の避難者がいます。860tのジブリ化した核燃料の処理が終わらない限り帰郷はできません。ところが、その処理は手つかずの状況です。
40年前のチェルノブイリ原発は、フクシマと違い完全に封鎖していますが、やはり核燃料の処理は手つかず。ロシアでは「500年後に処理できればいいが…」
実は、フクシマは東京を含む4000万人の避難の事態が起こるところを、「奇跡」で現在の被害で済んだのです。
それは、2号機の格納容器が「欠陥」で穴が開き、「圧力」釜状態にならなかったことや、水の止まった4号機の冷却プールに、隣の作業用の水が、仕切り版が欠陥で壊れて流れこんだ奇跡です。
その奇跡がなければ、原爆4000発分の核燃料が東京まで飛んできたかも知れません。
地震列島日本では、54基の原発地域にいつ600ガル以上の地震が来てもおかしくありません。
特に、南海トラフの浜岡原発には、4000ガル以上の揺れが予期されます。二度目の奇跡は期待してはいけません。いますぐに、原発を止め、廃炉・安全化を図る時です。
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池田 整治
1955年3月22 日、愛媛県愛南町生まれ。作家。元全日本実業団空手道連盟理事長。東藝術倶楽部顧問。空手8段。
1973年、陸上自衛隊少年工科学校前期課程修了。防衛大学校入学。2008年、陸上自衛隊小平学校人事教育部長。2010年退官。最終階級は陸将補。
オウム真理教が山梨県上九一色村に作ったサティアンへの強制捜査に自衛官として唯一人同行支援した体験などから、「真実とは何か?」を独自に研究。
自衛官在任中時代に『マインドコントロール 日本人を騙し続ける支配者の真実』(ビジネス社)を出版、ロングセラーとなる。
北海道での単身赴任時代、万が一の場合、4人の子どもたちへ父の想いを残し伝えるためメルマガ『心のビタミン』を開始。
退官後、〝真実の語り部〟として情報発信を始める。現在もブログ、書籍、講演会などを通じて精力的に活動を続けている。
著書に『未だ占領下にある日本の是非を問う 日米地位協定を自衛隊元幹部が告発する』(コスモック出版)『1000年先の地球のために―「滅びの道」から「永久の道」へ』(ナチュラルスピリット)『マインドコントロール2 今そこにある情報汚染』『離間工作の罠 ~日本を分断する支配者の手口~』(以上、ビジネス社)、
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美し国 副代表