船瀬俊介連載コラム
マスコミのタブー200連発〈104〉(月刊『ザ・フナイ』)
中国の子210万人シックハウス白血病死!80%の内装材に発ガン物質ホルムアルデヒド
「毎年210万人もの子どもが、住宅内装材で死亡している……!」
中国から飛び込んできたショッキング・ニュースだ。
「中国では、白血病を発症した児童の9割の住宅が高級リフォームされていた」という。
そして、「発症と死亡の原因は、『内装材』から発する有毒化学物質である」と警告を鳴らす学者がいる。
鐘南山博士。彼は中国工学院・院士の資格を持つ呼吸器疾患の専門家だ。
それにしても、いくら専門家の発言としても、毎年210万人もの児童が、住宅内装材で〝殺されている〟――とは、おだやかではない。
この衝撃発言は、2016年12月12日、広州で開催された「乳幼児の発育と室内環境」に関するシンポジウムで飛び出した。
『広州日報』の報道によれば、講演で鐘博士は「室内の空気が乳幼児の発育・成長、さらに疾病にまで影響を与える」と警告した。
彼は、統計データ(中国環境保護協会)に基づき、白血病を発症した児童のうち9割の家庭で住宅高級リフォームを行っていた、という事実を指摘している。
それは冒頭の衝撃告発に続くのだ。
「……毎年210万人の子どもが、内装材汚染が原因で死亡している」と断言。
その根拠として「80%の内装材で基準値を超えた発ガン物質ホルムアルデヒドが使用されている」現実を挙げている。
さらに「妊婦の流産70%も、これら環境汚染と関係がある」と指摘している。
言論統制が厳しい中国で、このような大胆な告発が、公的シンポジウムの場で出たことじたいが、きわめて異例というしかない。
これは、中国共産党政府の住宅産業政策を、まっこうから批判するものだからだ。
9割がリフォーム、有毒溶剤を吸っていた!
鐘博士の衝撃告発は、中国国内に大きな波紋を広げている。
彼が呼吸器疾病分野の一流研究者であり、さらに発表が詳細統計データに基づくものなので世間は耳目をそばだてたのだ。
公表された驚くべきデータに、中国国内では室内環境の汚染問題にがぜん注目が集まっている。
国内でも賛否の議論がまき起こった。
SNS大手のテンセントでは、医学博士が「鐘さんの発言は信用できない」と否定的コメントを発信。これに対して、擁護する発言も多い。
北京天則経済研究所・国際部主任の王軍氏はこうコメントしている。
「……鐘南山博士は体制側の学者ですが、その発言は、比較的正直です。科学者である以上、嘘は言えないでしょう。だから、彼の言っていることは、信用できると思います。中国では住宅リフォームをするということは『一度死んだも同然』です。(毒物汚染で)疲れますし、ホルムアルデヒド汚染問題が深刻ですから」
賛同意見は、続く。
北京在住の環境ボランティア、張峻峰さんは明言する。
「……本当にそのとおりです。私が見たところによると、白血病患者の家は、たいてい住宅リフォームをしています」さらに、言い足す。
「白血病にならなくても、健康に悪影響があるのはまちがいない」
その原因にも言及する。
「あらゆる建築材料に含まれている化学溶剤が原因です。リフォームの際に、大量に使われる木材や合板、ペンキなどに含まれています。
ペンキや接着剤に含有されるホルムアルデヒドやベンゼンなど多種の溶剤によって、木材を塗装し接着する。
溶剤は216種類にも及びます。これら多様な溶剤で接着・塗装された場合、ホルムアルデヒドが完全になくなるまでに100から200年もの期間がかかります」
中国政府の規制は企業寄りの甘いポーズ
まさに、シックハウスの典型的メカニズムと発症被害……。
張さんは、断言する。
「ホルムアルデヒド汚染問題を予防することは、不可能です。唯一の方法は、このような木材や塗料を使わないようにするしかありません」
まさに、正論である。これは、中国当局の住宅政策を真正面から否定するものでもある。
「……ですが、現時点では、無理なことです。それが、現実です」
言論統制と弾圧が厳しい一党独裁の共産党政権の現実を、彼は嘆いているのだ。
むろん、中国政府も、これら住宅汚染による健康被害に、手をこまねいていたわけではない。
政府も15年前から、民間建築にたいして、室内汚染を抑制するためのルールは定めてきた。
それは、10種類の有毒物質を含む建築材料の使用量を制限するものだ。
しかし、現実に使用されている有毒な化学溶剤は216種類。わずか10種類の規制では、ほとんどなきに等しい。
つまりは、世論を手なずける見かけのポーズにすぎない。
この住宅汚染で年間210万人児童が死亡――というショッキングな話題は、同国の『新唐人テレビ』もとりあげている。
同テレビは、次のコメントで締めくくっている。
「……政府の規制にもかかわらず、人体の健康に影響をおよぼす建築材料の汚染問題は、あとを絶ちません。これは、政府が定めるホルムアルデヒドの『安全基準』が低いうえに、家具などの『環境基準』が低いことが原因と専門家は指摘しています」
中国共産党政権が、建材のホルムアルデヒド汚染に甘い対応をしてきたのは、企業側の論理にすり寄ってきたからであろう。
官庁の役人の本性とは、えてしてそういうものだ。
しかし、鐘博士の勇気ある告発は、習近平政権を根底から揺るがしかねない。
毎年210万人もの中国の子どもが、室内汚染という〝人災〟で亡くなっている……。
この警告は、中国全土を震撼させるだろう。
この中国の騒動は、日本にとっても対岸の火事ではすまされない。
日本人も、かつては深刻なシックハウス地獄に苦しめられてきたからだ。
そして、この潜在的被害は、今も根深く続いている……。
「室内」は地球上で最悪の汚染空間だ
地球上でもっとも化学汚染が激しい場所がある。それが、住宅の「室内」だ。
その汚染濃度は、化学工業地帯での大気汚染をはるかに上回る。
このように汚染された「室内」に住むと、さまざまな疾病に見舞われる。
これを、現代では〝シックハウス〟症候群と呼ぶ。
そもそも「家」とは人間にとっては「巣」と同じだ。野生動物たちは、どうして「巣」を造るのか?
それは、みずからの家族の「安全」のためである。そこで、愛を育み、子どもを育て、安らぎを得る。
これが、「営巣」の最大の目的である。だから、野生動物にとって「巣」は、この地球上で、もっとも安全な場所なのだ。
しかし――。
どうも、人間という動物だけは、異なるようだ。
高度な(?)現代文明を用いて、わざわざ、「危険」極まりない住宅を大量生産し、供給している。
人間にとって「巣」に当たる「家」は、地球上で、もっとも危険な空間と化しているのだ。
そこに住む人間を危険にさらすものは、三つに大別される。
それが、「化学物質」「電磁波」「コンクリート」だ。
不可思議なことに、世界各国の政府は、まるで、申し合わせたかのように、これら三つの〝危険源〟から、目をそらす。
あるいは、その危険性には、故意に触れない。警告しない。予防しない。
そうして、無知な状態に置かれているおびただしい数の人類は、なにも知らされないままに、この見えざる危険にさらされて、人生を送っている。
むろん、知らぬうちに体も心も冒され、病んで、命を縮めていく……。
日本でも459種類の化学物質が建築材料
冒頭、中国の告発ニュースを読めば、だれでもビックリする。
かの地の環境対策のずさんさに、顔をしかめるだろう。ところが、室内汚染の実態は、日本もほとんど変わらない。
日本で建築に使用されている化学物質の総量を調べて絶句した。
その数459種類。
わたしの手元に『建築に使われる化学物質事典』(風土社)という本がある。(写真A)
そこには――「素早く分かる459物質の特徴と有害性 設計者・工務店 必携」とある。
まず、日本の建築に459種類もの化学物質が使われていることに、だれしも仰天するはずだ。
以上のように室内汚染では、中国も日本も五十歩百歩なのだ。
これら化学物質群は、戦前は建築分野で使用されることは、ほとんど皆無だった。
建築とは、世界各地の風土にのっとり、各々の自然素材で造られてきたのだ。
だから、数百種類もの化学物質が登場する余地は、まったくなかった。それが、近代から現代にかけて、急速におびただしい種類と数量の化学物質群が、建築分野に侵入してきた。
この激変は第二次世界大戦後、世界中で起こった。この激動は、石油化学工業の台頭と、軌を一にしていた。
つまり、戦後、世界の建築業界を急激に支配したのは、石油メジャーなのだ。
石油化学は、現代の〝錬金術〟である。
石油を原料に、なんでも〝お望みの物〟が生まれる。手に入る。
その典型が医薬であり、農薬であり、プラスチックだ。その生産量の伸びは、ただ驚倒するしかない。
プラスチック建材等は50年で900倍!
日本でのプラスチック生産量は1950年に比べると、50年間で約900倍に達している。そして、その生産量は、さらに急激に伸び続けている。(グラフB)
プラスチックといえば、すぐに思い浮かぶのがポリバケツであり、洗濯バサミだ。
しかし、これら日用品だけで900倍も生産量が増えるわけがない。
もう、おわかりだろう。膨大なプラスチックは建築現場に〝新建材〟としてなだれ込んでいたのだ。
そもそも、建築文化とは食文化に通じるものがある。
身土不二とは、生まれた土地の四里四方の物を食べれば、長寿健康は約束される、という意味だ。
それに、ならえば……。
建土不二とは、産まれた土地の四里四方の材で建てれば、理想住居は約束される。
食も建築も風土を抜きにしては考えられない。理想の食とは、風土が培った自然な食材で調理
されたもの。
理想の住とは、風土が培った自然な建材で建築されたもの。
じっさいに、世界各地の建築文化は、そうして発展してきた。
そうしてできた建築群は、自然と調和した美しい風景を醸し出してきた。
それが、一転したのは第二次大戦後からである。
石油化学工業の〝発達〟は、プラスチックなど多種多様の〝化学建材〟を大量生産し始めた。
それが、建築分野に大量進出してきたのだ。こうして、世界の建築文化は一変した。伝統の〝自然建材〟は〝化学建材〟にとって代わられたのである。
それは、まさに伝統建築の根底からの破壊であった……。
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ザ・フナイ 2018年11月号 マスコミのタブー200連発〈104〉 より
月刊『ザ・フナイ』は、船井幸雄が「世の中を変える意識と行動力を持つ人に向けて発信する」と決意し、(株)船井メディアより2007年10月号から創刊した雑誌です。
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船瀬俊介 (ふなせ しゅんすけ)地球環境問題評論家
著作 『買ってはいけない!』シリーズ200万部ベストセラー 九州大学理学部を経て、早稲田大学社会学科を卒業後、日本消費者連盟に参加。
『消費者レポート』 などの編集等を担当する。また日米学生会議の日本代表として訪米、米消費者連盟(CU)と交流。
独立後は、医、食、住、環境、消費者問題を中心に執筆、講演活動を展開。
船瀬俊介公式ホームページ= http://funase.net/
船瀬俊介公式facebook= https://www.facebook.com/funaseshun
船瀬俊介が塾長をつとめる勉強会「船瀬塾」= https://www.facebook.com/funase.juku
著書に「やってみました!1日1食」「抗がん剤で殺される」「三日食べなきゃ7割治る」「 ワクチンの罠」他、140冊以上。