桜沢如一のコトバに学ぶ 第72回
白くて甘いドラッグ
「砂糖の消費は過去20年間におどろくべき増加を示しています。
それは英米仏独何れの国にもかつて見られなかった急速度であります。
それは乳児死亡や、壮丁の丙丁増加や、離婚や、犯罪や、結核や、様々の急速度な社会不安増加の陰影グラフの曲線に併行して増進しています。
この度外れな、そして断然海外に比を見ざる国民体位低下と砂糖(3000年間未だかつて国民の常食品となりし事なき砂糖)の消費増加の秘密の関連が、国民や国家の退廃の原因として確認されるためにはまだ幾年を要するのでしょうか。」 「新しい栄養学」
国民的人気を博した俳優、歌手、野球選手等が相次いで覚醒剤で逮捕。
また、リオ五輪を前にロシア選手団のドーピング問題で参加の是非が問われる事態となった。
このようなニュースを見聞きし驚きはしても「自分にはドラッグなど無関係」と思う人が大半であろう。
しかし実は、私たちの非常に身近な場所に「ドラッグ」的作用を体にもたらす物質が存在する。
それは白砂糖。
砂糖が一種の麻薬であることを警告したウィリアム・ダフティ著の「シュガー・ブルース」と同名の映画が今夏日本でも封切りとなり話題になっているが、縁あってパンフレットにレビューを執筆する機会を得た。
監督が角砂糖の発祥の地チェコ生まれのドキュメンタリー映画作家というのも奇縁。
この女性監督にマクロビオティック料理研究家の天野朋子さんがインタビューしたところ、
「砂糖抜きの食生活は、少しの知識と技術を得れば実現できることを皆に知って欲しい。これは、食卓で始める、誰にでもできる無血の革命なのよ」と、明るい笑顔で語ったという。
コカ・コーラの最初期のレシピにコカインが入っていたり、覚醒剤がヒロポンいう名前で滋養強壮剤として売られていたなど、今は違法薬物とされているハードドラッグも、発見当初は合法的に販売されていた。
白砂糖も、人を中毒にする危険性をはらんだ精製された甘くて白いドラッグであるということが、広く認知される時代の到来を待ち望む。
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月刊マクロビオティック 2016年9月号より
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はたの たけし
1962年熊本県生まれ。
一般社団法人TAO塾代表理事・熊本大学特別講師。
修士論文のテーマは「食の構造的暴力と身土不二の平和論」。鍼灸学生時代、日本CI協会、正食協会にてマクロビオティックを学び、93年KushiInstitute勤務。
著書に「医食農同源の論理―ひとつらなりのいのち」「自遊人の羅針盤」など。