食は人が自然と繋がっていることを一番身近で教えてくれているもの【すべてはひとつ】

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磯貝昌寛の正食医学【第93回】すべてはひとつ

人生の四つの段階

人生の歩みには4つの段階があります。仕事、学業、結婚、研究、様々な人間関係においても4つの段階があると思うのです。

例えば仕事では「やらされている」「やってあげている」「やっている」「なっている」この4つの段階があります。

やらされていたりやってあげていたりするのは、自分の意志よりも他者の意志が強く、嫌々やっていたり食べるためにしょうがなくやっていたりと、やらされている中にもさらに細かな段階があるでしょう。

一方、自らの意志で「やっている」のは難しい中にも楽しさと充実感があり、自分の足で歩みを進めているわけですから不平不満がありません。

さらに「なっている」状態になればすべて楽しく、創意工夫しながら取り組んでいます。

いわゆる三昧という心境が「なっている」状態です。

仕事三昧の人は、仕事こそ人生という生き方です。

「やらされている」「やってあげている」段階では、その中にもさらなる細かなレベルがありますが、心へのストレスは決して小さいものではないでしょう。

実は、この4つの段階は食養そのものにも当てはまるのです。体質改善するために自らの意志で食養を「やっている」ならばいいのですが、妻や親から( あるいは子どもたちから)強く勧められて、やらされていたりやってあげていたりするのでは、その効用も弱いものです。

食養が長く続かないのは、「やらされている」「やってあげている」感覚が強いからに他なりません。

自らの意志で食養をやっているのであれば、困難の中にも楽しさがあって継続できるでしょう。

さらに、生活すべてが食養になっていたら、続ける続けないということではなく、食養人生そのものです。

食養三昧、陰陽三昧というと特殊な世界に入り込んだ趣がありますが、当の本人は泰然自若、ただ自然に食養人生を歩んでいるでしょう。

この4つの段階は、人生のレベルを表したものでないことを、私たちは肝に銘じなくてはなりません。

「やらされている」「やってあげている」人たちがレベルが低く、「やっている」「なっている」人たちがレベルが高いわけではありません。

「やらされている」「やってあげている」状態から「やっている」「なっている」状態に変化していくこともよくあり、場合によっては逆の方へ進むことさえあります。

「やらされている」「やってあげている」人たちは、人生のアクセルよりもブレーキの方が効きがよく、「やっている」「なっている」人たちはブレーキよりもアクセルの方が効いているのですが、社会全体をぐるりと見渡すと、これで調和をとっているのです。

地球上に「やっている」「なっている」人たちばかりになり、その方向性が万が一環境に合わないものになってしまったら、私たち人類は一族郎党いっぺんに消え失せてしまうかもしれません。

人間は陰陽が調和した生命体ですが、これは人類全体を見た時にも陰陽が調和しているのです。

今の自分自身が様々な生き方において「やらされている」「やってあげている」「やっている」「なっている」のかを俯瞰したとき、自分の目指す方向にただ自然に歩んでいくことが何より大切なことです。

「やらされている」「やってあげている」人たちも、なぜ「やらされている」「やってあげている」のかを考えたとき、人生は転換していきます。

また、他者を「やっている」「なっている」状態に引き上げてあげようなどというのは、傲慢の極みです。

どんな時でもどんな状態でも、ただ同行することが人が生きていくということなのだと思うのです。

すべてはひとつ

食とは何か、改めて考えてみました。

日に何度も人は食べものを口に運びます。口に入った食べものは体の神秘的な働きによって人の細胞に転化されます。

この世に生まれて一切の食を摂らずに生きている人は一人もいません。例外なく人は食物を食べています。

ある昼下がり、私は弁当をいただきながら「食とは一体なんだろう」としみじみと想ったのです。

そう、食は人が自然と繋がっていることを一番身近で教えてくれているものだということに気づいたのです。

食物を育てる人、食物を流通する人、食物を食品に加工する人、食物・食品を販売する人、料理をする人、そして食べる人。皆、食物・食品を通じて繋がっています。繋がりはもっともっと深い。

食物は土と太陽と水の産物で、人は土にも太陽にも水にも繋がっています。

太陽は地球に不断に光を降り注いでいます。大地は何億年をかけて地球の中を隆起しては沈降してを繰り返しています。

まさに壮大なる陰陽で大地は動いています。水は大地よりもずっと速いスピードで世界を巡り、さらに早く天地を巡っています。

自然は常に絶え間なく変化しています。変化の流れの中から生まれた食物によって私たちは命を繋いでいるのです。

この世はすべてが繋がっている。自然界に壁はなく、今ここでも、皆さんのいるそこでも、同じ空気が流れています。

呼吸は空気を通じてみなが繋がっていることを教えてくれます。人は出会った時に握手をしたり、抱き合ったりします。

これも私たち生命はみな繋がっていますよ、ということなのです食はすべてが繋がっていることを様々なことで教えてくれます。

健康であれば、人が自然と正しく繋がっている証拠。

一方で病は、自然と正しく繋がっていないことの警告でもあります。

自然との正しい繋がりを健康と病が教えてくれているわけだから、病と闘ったり、病を排除しようという姿勢では決して本当の健康が訪れません。

食が正しければ、この世はすべてが繋がっていることが体感できます。

自他一体がこの世のマコトの相(スガタ)と食から教わることができるのです。

もちろん、食からだけでなく呼吸からも掃除からも、家事からもどんな仕事からだって知ることができます。

どんなことからもすべては繋がっていると体感できるのです。

月刊マクロビオティック 2019年9月号より

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磯貝 昌寛(いそがい まさひろ)

1976年群馬県生まれ。

15歳で桜沢如一「永遠の少年」「宇宙の秩序」を読み、陰陽の物差しで生きることを決意。大学在学中から大森英桜の助手を務め、石田英湾に師事。

食養相談と食養講義に活躍。

マクロビオティック和道」主宰、「穀菜食の店こくさいや」代表。