「がんと心の治癒力」がんの自然寛解から学ぶ

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ガンの克服・支援活動で、生還実績をあげる NPO 法人いずみの会発行の会報より許可をいただき一部抜粋、転載させていただいています。

演題 「がんと心の治癒力」~ がんの自然寛解から学ぶ ~

講師:黒丸 尊冶 氏(彦根市立病院緩和ケア科部長)

1,はじめに

私は、もともとがんの自然寛解(かんかい)、つまり、積極的な治療をしなくても、がんが自然と小さくなってしまったり、進行が止まってしまったりする現象に興味がありました。

今回は、私が出会ったがんの自然寛解の患者さんを通して学んだことや考えたことについてお話しをさせて頂こうと思います。

2,最初の患者さん

がんの自然寛解の実際の患者さんを初めて診たのは、徳洲会野崎病院で研修医をしているときでした。

その患者さんは6cm ほどの腫瘍がある肝臓がんの患者さんでした。治療はせず、エコーで毎月フォローしていたのですが、三ヶ月経ったある日、エコーをしていた検査技師さんから「腫瘍がなくなった!」という連絡を受けました。

なぜ突然がんが消えてしまったのか、はっきりした理由はわかりませんが、後日家族に聞いたとことによると、初孫が生まれることがわかり、それ以来頑固だった性格が、すごく穏やかになり毎日ニコニコしながら孫が生まれるのを楽しみにしているようになったというのです。

3,グループ療法の体験から

3 年間の研修を終え、その後は関西医大心療内科、九州大学心療内科を経て、平成4 年4 月から京都にある洛和会音羽病院で心療内科医として勤務することになりました。

そこではがん患者さんのブループ療法を開催し、そこにがんの自然寛解を経験された元患者さんを何人かゲストでお呼びし、お話しを聴かせてもらうという試みをしていました。

がんが消えてしまった人や自然寛解した人たちの体験談を患者さんに聞いてもらったらさぞかし、皆さん勇気や希望をもらえると思っていたのですが、結果は全くの逆でした。

参加した患者さんに感想を聞いてみると、自分にはそんなことはできない、自分には自然寛解なんて起こるはずがないと、体験者の方と自分とを比較し、あまりの差に愕然とされたのか、かえって落ち込ませてしまったのです。

今考えると少々身勝手な企画だったなと反省しています。

4,緩和ケア時代

約10年間、心療内科医として過ごした私は、平成14年11月より彦根市立病院で緩和ケア医として勤務することになりました。

緩和ケアの対象は主に末期のがん患者さんです。そんな患者さんの身体的、精神的苦痛を和らげることを目的に、日々外来や病棟で患者さんとかかわらせてもらっています。

さて、緩和ケアを始めてから早いもので15年以上の歳月が経ちました。

その間に2,000 人以上の患者さんを診させて頂きましたが、その中で、これは自然寛解だと言ってもよいだろうと思われる患者さんが10名ほどいました。

例えばある70代の男性の患者さんは、肝臓がんが見つかった段階では、その大きさは約3cm であり、AFP という腫瘍マーカーも50ng/ml 程度でした。

主治医は今の段階なら手術すれば治ると言ったそうですが、その患者さんは「もし手術しなかったらどれくらい生きられますか」とたずねたところ、3 年くらいとの返事だったそうです。

あと3年生きられるのであれば十分なので手術はしませんと言い、結局無治療のままでいました。

それから3 年が経ったある日、私の緩和ケア外来を受診し、今までの経過を話してくれました。

本人は3 年の間、治療は受けませんでしたが、病院には通院し定期的に検査も受けており、几帳面にそのデータを全てノートに書き残していました。

とりあえず現状を把握する目的で採血とCT 検査を撮ったのですが、驚いたことに一時は6,000 以上にまで上がっていたAFP の値は何と600 以下にまで低下しているではないですか。

しかもCT でも肝臓がんの大きさは3cm と最初の頃と変わっていなかったのです。

がんの自然寛解の患者さんをたくさん見てきた私は、この患者さんのがんも自然寛解するかもしれないと思ったため、本人に「もしかしたらよくなるかもしれませんよ」と言いました。

当然、患者さんは喜ぶと思いきや、私のその言葉を聞くと、腕組みをして唸るように「ん~それは困った」と言うではないですか。

なぜ、困るのかとたずねると、3 年の命だと聞いたので、この3 年間は世界二十数カ国を旅行して回り、十分に人生最後のときを満喫したので、あとは楽に逝かせてももらうだけだと思い緩和ケアに来たのに、まだ生き続けなければならないというのは困るとのことでした。

そうは言われても、こちらも困るので、とりあえずしばらく外来で様子を診させてもらうことにしました。

しばらくは全く問題ないと思っていたのですが、それから1 年も経たないうちに、もうダメだと思うとの連絡が入りました。

本人がそう言っているので、とりあえず外来を受診するように伝えました。外来に来たその患者さんを見るとすでに黄疸が出現してしました。

そのためすぐに採血とCT 検査をしたところAFP の値は45,000ng/dl 以上に上昇、がんの大きさも6cm以上になっていました。

状態はかなり悪化していることがわかったので、そのまま入院してもらいましたが、その1 ヶ月後には亡くなってしまいました。

この患者さんの場合、最初から最後まで治療は一度も受けていませんでしたが、その間のデータはすべて残っていました。

このデータを見る限り、一時的ではあれ、がんは自然寛解していたと言えます。

心の治癒力

なぜこのようなことが起こったのか、あくまでも推察でしかありませんが、「心の治癒力」、つまり喜びや満足感といった心が持っているエネルギーが自然治癒力(体の治癒力)を活性化させ、がんの進行を抑えてくれていたのではと思いました。

喜びや充実感、達成感といった心の状態には、そのような力があるのです。

この患者さん以外にも、緩和ケア病棟で経験した、がんの自然寛解と思われる患者さんがいました。

その患者さんは80 代の男性で、前立腺がんの末期ですでに全身の骨に転移がありました。

前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAは、正常値が3ng/ml 以下ですが、その患者さんは3,000 以上ありました。

入院して半年以上経っても、入院時と同じくらい元気であり、特に病気が進行したようには思えませんでした。

そこで何気なく採血をしてPSA を調べたところ、なんと1,500 以下に下がっているではないですか。

通常はがんの進行が進むにつれて値は上がっていきますので、下がってきたということはがんが小さくなってきている可能性があるということです。

ではなぜこのようなことがあったのか考えてみると、もしかしたらカラーセラピーが関係しているのではないかと思いました。

うちの緩和ケア病棟では、様々な代替療法を取り入れており、そのひとつがカラーセラピーです。

これは、簡単な下絵があり、それに色鉛筆などで色を塗るという、いわゆる患者さん向けの塗り絵です。

この患者さんは、2 週間に一度セラピストが来てしてくれるカラーセラピーを、殊の外楽しみにしていました。

毎回、2時間程度二人のセラピストとおしゃべりをしながらカラーセラピーをして過ごしていたのです。

ただ、私が見る限りカラーセラピーを楽しみにしていると言うよりも、それをしてくれていたセラピストと会って話しができることが何よりも楽しみにしていたのではという印象でした。

なぜならば、その二人のセラピストはとてもきれいな女性で、この患者さんは、二人に会うのをいつも楽しみにしており、またセラピー中もニコニコしてとてもうれしそうだったからです。

つまり私の理解では、カラーセラピーを通して、この二人の美人セラピストと時間を過ごすことができ、その喜びやうれしさ、また会えるという楽しみといった「心の治癒力」が自然治癒力を活性化させ、それが腫瘍マーカーの低下をもたらしたのではないかと思っています。

ですから私は、これはカラーセラピーではなく、「お姉ちゃん療法」でPSA が低下した事例ではないかと考えています。

残念ながらこの患者さんは、最後は肺炎で亡くなってしまいましたが、それがなければもっと元気になっていた可能性があるのではないかと思っています。

このように、緩和ケアの外来や病棟では、がんの自然寛解と思われる患者さんに何人も出くわしました。

上顎がんの肺転移で受診した80代の女性は、あと半年くらいと言われて紹介されたにもかかわらず、その後8 年も外来に通院し続けていましたし、肝臓がんの再発で紹介された70 代の男性の患者さんも、その後再発して十数個あった転移がきれいになくなってしまいました。

また、脳腫瘍で3 ヶ月の命と言われて転院してきた50 代の男性は、入院当初は会話もできず、意識ももうろうとしていましたが、その後だんだんと元気になり、冗談が言えるようにまで回復、入院1 年後にCT を撮ったところ、脳腫瘍は縮小していました。

私は、もともと心と体のつながりに関心があり、そのため心療内科を志したのですが、同時にがんの自然寛解にも強い関心があり、きっと「心の治癒力」ががんの自然寛解に関係しているのだろうという思いをずっと抱いていました。

医者になって約30 年になりますが、その間、がんの自然寛解と考えられるたくさんの患者さんとの出会いを通して、その思いをより強くした次第です。

その後「心の治癒力」の何が、がんの自然寛解をもたらすのか、そんなことの関心を持つようになり、色々な本を読んだり、多くの患者さんが学んだことを元に、自分なりにその答を見つけようとするようになりました。

(後略)

* 詳しくは是非DVDを観てください。

NPO法人いずみの会  会報171号(2018年9月上旬発行)より

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