お粥を徹底して噛む半断食は排泄排毒の力を最大限に高める

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磯貝昌寛の正食医学【第63回】 春の半断食

季節と陰陽

春夏秋冬は陰陽のメグリそのものである。春が一年のスタートに感じられるのは陽の芽吹きを強く感じるからだろう。

太陽の力が強くなり、眠っていたものが目を覚ますのも春である。

春は心身ともに活性化する季節である。秋と冬に溜め込んだ脂肪を活性化させる季節でもある。

春に心の変調を来たすのは、秋冬に溜め込んだ脂肪に問題があったのだ。

一年二年の問題ではない。数十年と溜め込んだ脂肪に毒素があったのだ。

それらが飽和状態となったとき、心理的な排毒反応が精神的な症状として現れる。

花粉症も秋冬に溜め込んだ毒素の排毒反応である。

秋冬に溜め込んだ脂肪が清浄なものであったら、春はあけぼの、春の日差しに心は踊り、体は浮雲のように軽い。

冬の間にしっかり寒さに晒されると体は浄化され、毒素の蓄積が少ない。

暖房の効いた部屋にばかりいて、ろくに運動もしていないと、体はなまって毒素の蓄積が多くなる。

寒中行は身を清める代表的な行いである。どんな体にとっても春は始めの季節である。

春の半断食

半断食は食を断ち、基礎代謝を高めることで、今まで蓄積していた毒素の排泄を促す。

食を断つだけで基礎代謝が高まる人もいるが、現代ではそういう人が減って、その他の活動がないと基礎代謝が高まらない人が増えてきた。

半断食プラスアルファの運動、呼吸、手当て、思考の整理。これらの相乗効果で基礎代謝を高めて排毒を促す。

現代人の毒素は複雑・重層的に体の芯に蓄積してしまっている。

そんな現代であっても有り難いことに、毎年春が来る。春は排毒の季節でもある。溜め込んだものを活性化させる季節である。

私の半断食ではお粥を徹底して噛む。お粥を噛むことがコツである。

お粥は本来、それほど噛む必要がないが、そのお粥を噛むことで、胃腸を活性化させる。

胃腸は消化吸収と造血の器官でありながら排泄排毒器官でもある。

お粥を徹底して噛む半断食は排泄排毒の力を最大限に高めて、後の消化吸収、そして造血を高める。

お粥を徹底して噛みながら、半断食期間中は、運動、呼吸、生姜シップ等の手当て法で体を活性化させると基礎代謝が短期間でグッと高まる。

短期間で体温が一度以上、上がることも珍しくない。

基礎代謝が上がると、多くの人が排毒反応を体験する。頭痛、だるさ、胃のむかつき、体のコリなど人それぞれである。

時には精神的な症状が出てくることもある。五感も過敏になることがある。

半断食中、他人の顔が阿修羅に見えたと言っていた人が、排毒反応が消えると、同じ顔が菩薩に見えて涙が出てきたという。

五感は外の世界を内に映す鏡である。

そのカガミ次第でこの世は善となったり悪となったりする。半断食はそのカガミを磨く大きな助けとなる。

春は肝臓が活性化する季節でもある。春は臓器全体が活性化するが、肝臓は臓器の中でも特に大きな臓器のため、肝臓の活性度合いが顕著に目立つ。

肝臓への負担が強く、毒素の蓄積が多い人には、春の半断食は絶好の機会だ。

排毒反応の陰陽

排毒反応

●発熱、痛み、かゆみ、だるさ、咳、痰、炎症、下痢、便秘、眠気、イライラ感、不安感、など

●味覚、嗅覚、視覚、聴覚、皮膚感覚の変化

陰性の排毒反応

●全身のだるさ、昼夜問わずの眠気、思考の停滞と無気力、頭痛( 眉間のあたりのみ)、涙、鼻水、よだれ、全身の冷え

陽性の排毒反応

●下半身のだるさ、昼間の眠気と夜の不眠、イライラ、ほてり、首、肩、背中のコリ、関節の痛み、しびれ、発熱、頭痛(側頭部、後頭部、頭頂部など)、焦り

排毒反応の手当てと対処

陰性排毒には陽性な飲み物・食べ物、陽性排毒には陰性の飲み物・食べ物が基本になる。

排毒反応時、体をよく動かすことも大事だが、心身全般を診てゆっくりと休みが必要な場合もある。

逆に体を休めたいと感じていてもしっかり動いたら排毒反応が消えて楽になることも少なくない。

排毒反応( 症状)の時、動いたらよいか、休んだらよいか、その判断は、顔の艶から伺い知ることができるが、それらの経験を積んで感覚として理解することがとても大切だ。

排毒または状態によっては無理に半断食や断食を継続するのでなく、十分な量の食事をした方がよい場合もある。

「果報は寝て待て」と云う。

試験の結果などをハラハラドキドキしながら待っている、さらにはそれが高じて気を患って待っているよりも、寝て待っていたほうが体にも心にもよい、という諺。

ひるがえって、わたしたちの生命の秩序を表現した言葉でもあると納得させられる。

病気を患い、早く回復したいと願う気持ちは誰にもある。

回復したいという気持ちがなくては元も子もないわけだが、早く早くという焦りは禁物。

一般的には風邪を引いたくらいでも病院でクスリを処方してもらい飲んでしまう。

風邪の症状から一刻も早く逃れたい、ひどくなりたくないという気持ちがそうさせるし、社会全体がそれらをよしとしている。

しかし本来の生命は治る時がこなければ治らないし、治る状態にならなければ治らない。

風邪ひとつとってみても、治るということは体の掃除が一段落しなければ症状は治まらない。

症状だけ消したところで掃除が済んでいなければ治ったということにならない。

せっかく風邪というありがたい反応で体の毒素を体外へ排出しようと、細胞や組織に蓄積した毒素を血液に溶け出させて咳、鼻水、熱などの症状を出させてくれているのに、西洋医学のクスリは毒素を細胞や組織に戻して排毒をストップさせてしまう。

結果、汚れた体をきれいにするという大きな問題( 排毒)を先送りしているに過ぎない。

「果報は寝て待て」というが、「排毒( 症状)も寝て待て」というのが生命の秩序。

もちろん食っては寝て、食っては寝て腹いっぱいにして寝ることではない。少食にして、というよりも排毒の時は自然と食べられなくなるが、食養的な手当て・自然療法を適切に施して寝て待つということが肝要であり、排毒症状の緩和は「待つ」以外にない。

どんな病気でも「待つ」ことは一番重要なことである。

月刊マクロビオティック 2017年03月号より

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磯貝 昌寛(いそがい まさひろ)

1976年群馬県生まれ。

15歳で桜沢如一「永遠の少年」「宇宙の秩序」を読み、陰陽の物差しで生きることを決意。大学在学中から大森英桜の助手を務め、石田英湾に師事。

食養相談と食養講義に活躍。

マクロビオティック和道」主宰、「穀菜食の店こくさいや」代表。