食養手当て法の基本【生姜シップと里芋パスター】

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磯貝昌寛の正食医学【第62回】 食養手当て法

血液と手当て法

酸性食品やアルカリ性食品を食べても、血液はすぐに酸・アルカリに傾くわけではない。血液はPH7・3~7・5を常に保っているといわれる。

これは、肺と腎臓の働き「緩衝作用」によって血液を弱アルカリ性に保っているからである。酸性食品を食べても血液は直ちに酸性に傾かないのは、肺と腎臓の働きによるからなのだ。

しかし、酸性食品を食べ続けていると肺と腎臓には負担がかかる。

その負担が積み重なれば、血液の弱アルカリ性は不安定になる。これが様々な病気の元となっている。

糖尿病やがんなどの生活習慣病は、血液を酸性化させる食品の過剰で肺や腎臓の機能を低下させた結果である。

そして、血液の汚れが常態化し、合併症や増殖転移を繰り返す根の深い病気となっていく。

正しい食は、あらゆる病気の養生にもっとも大事なことである。

呼吸と運動、手当てによって血液循環を徹底的に改善していくことが次いで大事である。

どんなに素晴らしい食物を食べていても、血液の流れを後押ししてあげなければ、効果は半分にも及ばない。

大森英桜先生は「温かくてキレイな血液を患部に3分流せば、どんな病気もよくなるよ」と言われた。

生活習慣病の手当ての基本は、徹底して身体を温めることにある。身体を温めると滞った毒素が溶け出してくると想像している。

溶け出した時に患部に里芋パスターを貼ると、ビックリするほど身体は楽になる。身体を温めては毒素を溶かし、里芋パスターで吸い出す。

この単純な繰り返しが食養手当て法の基本となる。

そして、それらを援護射撃するものが呼吸であり、運動である。

しかし、もっとも大事なことは、毒素の融解と排出を邪魔している心の不安を取り除き、納得安心してマクロビオティックに取り組むことである。

生姜シップと里芋パスター

生姜シップと里芋パスターは、患部への手当ての陰陽の対になるものである。食養手当ての両輪なので、大きな病気に関してはどちらか一方では治りきらないものである。

とはいえ、一時的に生姜シップを中心に手当てをすすめていくこともあれば、里芋パスターを中心に進めていくこともあるので、常にイーブンの比で行っていくわけではない。

陰陽は常にどちらかに多寡があるのと同じである。

実際に手当てをしてみると、まったく同じ「気持ちよさ」ではない。どちらかが気持ちよかったり、心地よかったりする。

生姜シップは気持ちよいけれど、里芋パスターはまったく受けつけない、または逆ということもある。

また、手当て法は運動と相通じるところがあるため、やり過ぎはよくない場合もある。頻度に関してもよい按配で行っていくことが大事である。

手当てをしながら、健康が増進され、症状が少しずつ緩和されてくることが理想の手当てである。

現代の国民病ともいえるがんの食養手当て法の中心が生姜シップである。

生姜には様々な薬効がある。そのひとつに、血液中の酸素濃度を上げる効果があると広島大学が発表している。

がん細胞は酸素を嫌う性質がある。生姜のエキスは血管を開かせ、血液循環を促すだけでなく、血液中の酸素濃度も高める。

さらに熱が加わり、がん細胞をどんどん浄化していく。

手当て法はその内容と、根気よく続けること、この2つが揃った時に初めてチカラを発揮する。

生姜による温活

生姜シップの目的のひとつは、血液を温めることにある。血液は全身を1~2分で巡っているといわれている。

血液を温めると、全身に温かい血液が巡り渡ることになる。

血液を温めるのに最も適しているところは「お腹」である。お腹は骨に囲まれておらず、生姜シップの熱を伝えやすい。

コツは、手足が温まるまですることである。お腹を温めて手足が温まる経験をすると、血液が全身を巡っていることに感激する。

手足が温まる時間は、人によって異なる。

30分の人もいれば、2時間、それ以上かかる人もいる。私の経験では、12時間続けてやっと温まったという人もいる。

卵巣がんの人で、過去にメスを入れている方であった。手術経験のある人は、なかなか温まりづらい傾向にある。

それでも徹底して生姜シップをしていくと、熱によってがん細胞が浄化されていく。

以前の食養手当て法では、生姜シップは長時間してはいけないとあったが、現代の肉食の過剰な病気には、むしろかなりの長時間、生姜シップ等で身体を温めた方がいい場合が少なくない。

しかし、温めるのがよいといっても、身体の芯が温まってくると汗が出てくる。

がんの場合、発汗後の冷えががんを勢いづかせることがあるので気を付けなくてはならない。身体が充分温まったところで終了せず、身体が冷えてくるようでは逆効果となる。

生姜シップや生姜風呂の後は、ゆっくり休むことが肝腎である。

生姜シップの後は、できたらそのまま眠ってしまうのがよい。生姜シップをすると副交感神経がよりよく働く。

副交感神経は心身をリラックスさせて、身体の中を活性化し、自然治癒力を高める。

生姜シップで副交感神経の働きを高めた後は、そのまま眠りに入ってしまえば、自然治癒力をより促進することができる。

手当てと睡眠

深い眠りにまさる手当てはない。

眠りを妨げる手当てであれば、逆効果になることもある生姜シップや里芋パスターは、手当てそのものが毒素を浄化するということもあるが、一方で副交感神経の働きを優位にさせて身心全体の浄化力を高めている。

食養手当て法をして、どっと疲れが出てくるよう場合は、内容を変えるか一時的に止めてみることが必要である。

しかし、疲れが出ても睡眠後はスッキリしているということであれば、手当てによって排毒が促されたわけであるから問題はない。

食養手当てが合っているかどうかは「心地よさ」がバロメーターになる。心地がよいと感じる食養手当て法を、外用・内用共にいくつか試し、継続していくことが大事だ。

生姜風呂や大根干葉の風呂に入るだけでも大きな手当てになる。

数年前、ぎっくり腰になってしまったときは、生姜シップと里芋パスターの効力にあらためて驚嘆した。

貼る前は痛くて腰の置き所がなかったのに、3回目に貼った里芋パスターを取った直後、飛んで跳ねても大丈夫なくらい痛みがまったくなかったのだ。

その後はすっかり痛みなく過ごしている。

マクロビオティックを志して25年、病院の世話にならずに済んでいるのは食養手当て法を実践しているからこそだろう。

もちろん、手当て法で大過なきを得るには、日々の食養は欠かせない。

日々の食養で身心が調ってくれば、手当て法を使う機会も減るが、万が一、ケガや病気をしても、自然な手当て法で乗り切ることができる。

そして、何よりも自然な手当て法で乗り切っていこうという、信念の根が深くなる。不信感のある手当て法では治るものも治らない。

「治る」という信を持つことが手当て法においても最も大事なことになる。

月刊マクロビオティック 2017年02月号より

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磯貝 昌寛(いそがい まさひろ)

1976年群馬県生まれ。

15歳で桜沢如一「永遠の少年」「宇宙の秩序」を読み、陰陽の物差しで生きることを決意。大学在学中から大森英桜の助手を務め、石田英湾に師事。

食養相談と食養講義に活躍。

マクロビオティック和道」主宰、「穀菜食の店こくさいや」代表。