森下敬一 『食べもの健康法』●いわし
栄養のバランスをとる最も確実な方法は、丸ごと食べる事である。
つまり魚であれば、頭・尾・骨・皮・肉・内臓など、生きて泳いでいたときのままを、そっくり食べることだ。
生物は栄養のバランスが完全にとれているから生きていられるわけで、その生きているものを丸ごと食べれば、栄養成分をかたよらないで摂取できる道理であろう。
いわしは、小魚である上に、骨も柔らかいので、丸ごと食べるのにおあつらえ向き。
丸ごと食べると、いわしの主成分である蛋白質、脂肪、炭水化物は、いわし自身が持っているビタミン、ミネラル、酵素などの有効成分によってスムーズに代謝される。
そのため、胃腸に余計な負担をかけず、肝臓や腎臓を痛めつけることもなく、血液を汚さないで、体の構成成分やエネルギー源にできる。
本当のスタミナ食とは、このような食物をいうのである。
食品分析値がどんなにすばらしいものであっても、うまく代謝されないで、内臓を過労に追い込んだり、血液を汚すものでは、スタミナ食とはなりえない。
いわしは大量漁獲されるところから下級魚扱いされているけれど、決して下等な食物ではない。安価な強壮・強精食品なのだ。
いわしには体質を陽性化する効用もある。
細胞の働きを盛んにして、体の活力を高めるのである。
このため特に子供では、虚弱体質・内向的性格を改造して、活発で、頭の回転のよい積極的な性格を作るのに大いに役立つ。
心身の改造は若いときほど容易なのだ。
骨ごとそっくり食べられるいわしは、カルシウム補給源としても最適。
日本の土壌にはカルシウムが非常に少ないから、意識的に補給を心がけないと欠乏に陥りやすい。
病気に対する抵抗力を強め、神経を安定化してイライラやノイローゼを防ぐには、カルシウムを十分に摂ることだ。
またビタミンA、Dが多いから、皮膚や粘膜の抵抗性を高め、骨を丈夫にする。
いわしは、公害物質による汚染も少ないといわれている。
公害物質は、食物連鎖によって次第に濃縮されていくが、いわしは他の魚と違って成魚になってもプランクトンしか食べないからだ。
いわしは、まいわし、うるめいわし、かたくちいわしなど種類が多く、ほとんど一年中売られている。
はらわたが飛び出しておらず、手にとって見てピンと身のしまっている鮮度の高いものを選ぶことが大切。
から揚げにしたり、全体をすりつぶしてつみ入れにすると、骨も苦にならずに食べられる。
釜揚げちりめん、ちりめんじゃこ、シラス干し、カエリ、ゴマメ、煮干し(イリコ)、丸干し、目刺しはすべていわしの稚魚・幼魚を加工したもの。
そのまま、あるいは焼いたり、おろし和えなどで簡単に食べられるから、大いに活用したい。
■ちりめんじゃこの寿司
材料(4人分)
・玄米・・・3カップ
・ミネラル水・・・玄米の2割増し
・ちりめんじゃこ・・・40g
・合せ酢(米酢・・・大さじ4、みりん・・・小さじ3、自然塩・・・小さじ1)
・自然酒・・・大さじ2
・しいたけ・・・中2枚
・油揚げ・・・1枚
・しその葉・・・4枚
・きゅうり・・・1/2本
・しょうが、干し菊、しょう油・・・各少々
<作り方>
①玄米は2割増しの水で普通に炊いておきます。
②合せ酢は、少し煮立てて、冷ましたものを、ご飯にふりかけ、切るように混ぜ合わせ、寿司飯をつくります。
③ちりめんじゃこは自然酒に漬けておきます。
④しいたけと油揚げは千切りにして、しょう油、みりんで下煮します。
⑤しそ葉、きゅうり、しょうがは千切りにし、干し菊は、塩湯にサッと通し、ほぐします。
⑥、③④を寿司飯に混ぜ合わせ、お皿に盛りつけて、上に⑤をきれいに飾ります。
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森下敬一 (もりした けいいち) 医学博士
お茶の水クリニック 院長 千島・森下学説『腸管造血』提唱者
東京医科大学卒業後、生理学教室に入り、血液生理学を専攻。千葉大学医学部より学位授与。
新しい血液性理学を土台にした自然医学を提唱し、国際的評価を得ている。
独自の浄血理論と、玄米菜食療法で、慢性病やガンなどに苦しむ数多くの人々を根治させた実績をもつ自然医学の第一人者。
著書に「血液をきれいにして病気を防ぐ、治す 50歳からの食養生 」「ガンは食事で治す」など約80冊がある。