今月のFACE 生産者紹介 山彦鰹節(三重県志摩市大王町)
●薪100%の伝統技法
日本が誇る伝統食のひとつ「鰹節」。
古くは奈良時代、鰹を煮て干したものを食べたり、煮汁を煎じて堅魚煎汁(かつおいろり)と称して旨味を含む調味料として使った、と文献にあります。
その後、天日干しからワラを燃やして乾燥する方法へと進化し、江戸時代前期には薪の火力で燻(いぶ)す方法が発明されました。
近年は短時間で大量生産するため、業界ではガスの熱風を吹きつける機械乾燥が主流です。それだけでは風味が出ないので、仕上げに薪を焚いて香りづけした品も。
また、インドネシアやフィリピンなどで加工した輸入なまり節を国内で焙乾(ばいかん)したり、輸入荒節を国内でカビ付けすれば「国産」と表示できることも、消費者には知られていません。
こうした中、山彦鰹節(三重県志摩市大王町)は、あくまでも昔ながらの薪による焙乾にこだわります。
「薪100%の節作りは全国でもまれでしょう」と社長の山下勝日己さん。志摩地方の鰹節は江戸時代“波切節”と呼ばれ、鳥羽藩への献上品でした。
山彦鰹節はその伝統技法を継承し、節本来の深い風味を提供しています。
●炎の力と燻した香りが命
原料の鰹は、伊豆半島沖以南の北太平洋から中・西部太平洋で巻き網漁で漁獲して、船上で急速冷凍し、静岡・三重に水揚げされたもの。
まず鰹の頭・内臓・背骨など不要な部分を取り除き(生切り)、生の節を篭の中に並べ(篭立て)、沸騰寸前の湯に浸けて煮崩れしないように煮て(煮熟)冷まします。
ここまでの工程でできた節を「なまり節」といいます。
なまり節の皮を一部残して取り、花かつお用はそのまま、鰹節削り節パック用は骨を1本ずつ抜いてから、薪火による焙乾に入ります。
「焙乾とは“焙(あぶ)り乾かす”こと。薪の炎の力と燻した香りが命です」と山下さん。薪は近在のナラ・クヌギなどの堅い木を買うほか、近所の山の間伐を請け負って分けてもらいます。
1日2トン使う薪の小割と運搬も大仕事です。
乾燥室は炎との闘い。地階ではタオル鉢巻の男たちが、朝8時から夕方5時まで火加減をみながら30分ごとに薪をくべます。
その上に節を並べて重ねたセイロを置き、まんべんなく熱や煙があたるよう積み替え、夜は火を落として自然に放冷。
この焙乾を一番火から七番火まで10~15日間繰り返して「荒節」ができます。
●節作りから削りまで一貫生産
ここからは削り工程。作業場のドアを開けたとたん、郷愁を誘う香りにうっとり。
軽く蒸した荒節をカンナ式の削り器に落とし込むと、28枚の刃がカタカタカタ…花吹雪のようにひらひらと、削りたての薄片が積もっていきます。
「花かつおは一般に薄いほど上質とされ、他社では3/100mmに削りますが、うちは5~7/100mm。あえて厚めに削ることで酸化を防ぎ、風味を極力損なわないようにしています」。
削りたてをフルイにかけて放冷し、袋詰めして窒素ガスを封入して出来上がりです。
10325(ムソー)花かつお
50g 440円(本体価格) 475円(税込価格)
原材料:かつお・ふし(国産)
10327(ムソー)かつお削り節パック
4g×5 450円(本体価格) 486円(税込価格)
原材料:かつお・ふし(国産)
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月刊「むすび」 2012年09月号より
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