森下敬一 『食べもの健康法』●なす
「一富士、二鷹、三なすび」とは、吉兆を意味する夢占いだが、数ある食品群の中ら、あえてなすびを選びとったとは、この語録の作成者は、よほどのなす愛好家だったのであろう。
確かに我々のまわりにも、なすに目がない人は少なからずいる。それも無理からぬ話である。
まさしく“日本の味” “おふくろの味”を代表する料理である焼きナス、しぎ焼きなどがあるのだから。
そして、てんぷらや汁の実、漬物など、どれも美味しい。
お隣の中国人のなす好きは、日本人以上のようだ。
美味にして、餅肌のようになめらかで、濡れたカラスの羽のように輝く美しさは、他に比べるものとてない・・という讃辞が、なすに対して贈られているという。
なすの薬効をズバリ一言でいうと血の気の多い人の心身を沈静化させることである。体を冷やす作用が著しい。
肉食過多のために頑固な便秘症になり、血液中に老廃物がどっさり入って血圧が高くなっている人、毛細血管に動脈硬化が起こって、破裂しやすくなっている人、また実際に破裂して喀血や吐血をおこしている人には、なすの常食は卓効をあらわす。
その清涼食としての特性にナスに含まれていつ微量有効成分が加勢しているのだ。
つまり、毛細血管を強化するビタミンPやC、代謝を促進するビタミンB1、B2、血液正常を健全にするカルシウムなのだ。
肉食の中国人がなすをめでるのも、生理的要求がその根源になっている、とみてよかろう。
同様に、雑穀や野性味の強い植物、それにときに野生の鳥や獣を食べていた昔の日本人が、なすを珍重したのも、まったく合理的なことであった。
病気といえば、高熱を発し、七転八倒するような痛みが起こる急性熱性病を起こすのが常だった陽性体質の先輩たち。
そんな彼らには、体質を陰性化することのよって、健全な中庸体質に調整してくれるなすは、何より貴重な薬効食品だったのだ。
だから、これまで人一倍肉食を多くしてきた人で、のぼせ症や高血圧症の人は、積極的になすを取るとよい。
なすがインド原産の夏野菜であることは、暑い季節に体の過熱を防ぎ、涼しく快適にすごすのに役立つわけで、まったく天の配剤とはこのことだ。
なお、食品の色も、食品の基本的性格をあらわしていて、紫色といのは、一番陰性で、冷却作用の強いものである。
このような大自然の原理を素直に受け止めて身を処していくのが、健康長寿のキメ手となるのである。
ビタミンPが含まれているから老年病に最適・・・・・などと、食品分析学的な単純な考え方をしてはだめだ。
体質が陰性化している人が、冬に、温室栽培のナスを食べる、などというのは自殺行為の何ものでもない。
幸い、なすは植物油と大変に相性のよい食べものである。
よく炒めるか、焼くかしてから、じっくり煮込み、味噌、諸油で味を調えると、ずいぶんと陽性化される。
しかも、なすの組織はスポンジ状になっていて、加熱しながら油を作用させると、よく吸収される。
そんな状態の油は、消化管内では徐々に外に出て行って消化される。それゆえ、脂っこくなく、おなかの弱い人でも、効果的に脂肪酸(リノール酸)の補給ができる。
なお、焼きなすは、皮を真っ黒に焦がすほど焼くから、やはり陽性化される。
醤油、おろししょうがで食べると、さらに陽性になる。
へた付きのまま軽くたたき、全体を柔らかくしてからじっくり焼き上げるのがコツである。
■ナスのオーブン焼き
材料(4人分)
・なす・・・4個
・あさり(むき身)・・・200g
・ 玉ねぎ・・・1個
・ピーマン・・・2個
・ しいたけ・・・4枚
・トマトピューレ・・・2/3カップ
・にんにく・・・1片
・ パン粉・・・大さじ3
・ごま油・・・大さじ3
・自然塩・・・少々
・自然酒・・・少々
<作り方>
①あさりは塩水で洗い、ザルに上げて酒少々をふりかけておきます。
②なすは薄切りにし、玉ねぎはみじん切り、ピーマン、しいたけは千切りにします。
③フライパンにごま油大さじ2杯を熱して、なす、あさりを炒めて取り出し、あとにごま油大さじ1杯をたして、たまねぎ、しいたけ、ピーマンを炒めます。
④ ③にトマトピューレ、塩、にんにくのすりおろしを加えて調味し、なす、あさりを混ぜます。
⑤耐熱皿にマーガリンを塗って④を入れ、パン粉をふって200度のオーブンで5~6分焼きます。
■ナスの中華風酢のもの
<作り方>
中なすを、赤とうがらし、米酢、みりん、ごま油のタレで和え、
みじん切りにした玉ねぎを散らします。
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森下敬一 (もりした けいいち) 医学博士
お茶の水クリニック 院長 千島・森下学説『腸管造血』提唱者
東京医科大学卒業後、生理学教室に入り、血液生理学を専攻。千葉大学医学部より学位授与。
新しい血液性理学を土台にした自然医学を提唱し、国際的評価を得ている。
独自の浄血理論と、玄米菜食療法で、慢性病やガンなどに苦しむ数多くの人々を根治させた実績をもつ自然医学の第一人者。
著書に「血液をきれいにして病気を防ぐ、治す 50歳からの食養生 」「ガンは食事で治す」など約80冊がある。