森下敬一 『食べもの健康法』●ほうれんそう
緑黄色野菜というと、大抵の人はほうれんそうを思い浮かべるほど、なじみの深い野菜だが、このペルシャ原産の青菜は、ほかの野菜とちょっと毛色が違っている。
即ち、リジン、トリプトファン、シスチンなどのアミノ酸が多いというように、蛋白質の組成が動物性蛋白質のそれに似かよっているのである。
勿論ほうれんそうは植物性食品だから、消化器官に余分な負担をかけて血液をひどく汚す、ということもない。
優秀な蛋白組成は有効に生かされる。
その結果、体蛋白の合成が促され、体力の増強が図られる。ほうれんそうを食べて元気モリモリ、というポパイの話も、まんざらデタラメとばかりはいえないわけだ。
また、下垂体ホルモンの分泌を滑らかにする。
下垂体の働きが順調になると、内分泌機能全体のバランスが回復されるために、太りすぎの人は体を引き締め、やせすぎの人は健康的な肉付きの体になる。
勿論いまあげたような薬効は、たんぱく質だけがもたらしてくれる功績ではない。ほうれんそうに含まれたビタミン類、ミネラル類も大いに力となっている。
ほうれんそうが貧血、カゼに卓効をあらわすのも、それらの有効成分が総合的に働くためだ。
即ち豊富に含まれるビタミンCは、胃酸分泌を正常化させ、ビタミンAは粘膜の抵抗性を強化し、鉄、葉緑素、葉酸、ビタミンKなどは赤血球の造成を促す。
いずれも、貧血やカゼの防止に重要な条件ばかりだ。
貧血でも足のむくみやだるさはおこるが、脚気でもおきやすい。ほうれん草にはビタミンB1も多く含まれるから、脚気にも有効である。
ビタミンAを豊富に含むほうれん草は、美容効果もきわめて大きい。皮膚の過敏症を直し、肌荒れやニキビを治し、肌のたるみを防止する。
また、とく主成分のピオチンがあって、脱毛や湿疹を治す効果を持っている。
ところで、ほうれん草は蓚酸(しゅうさん)を多く含んでいるので調理上、ちょっと注意が要る。
蓚酸は大量に摂るとカルシウムの吸収を悪くしたり結石症を起こしやすいから、ナマで大量に食べることはやめたい。
必ずゆでるか、油炒めして十分に加熱して用いれば、蓚酸はすっかり処理されるから、まったく心配はいらない。
特に油で調理すると、ビタミンAなどの脂溶性ビタミンの吸収が効果的に行われる。
繊維が軟らかいことに加えて、独特の甘味とヌメリがあることが、ほうれんそうの特有のうまさを生み出しているが、それが子供のほうれんそう嫌いを招いているのだから皮肉である。
無理に食べさせることはないけれど、みすみす捨て置くには惜しい薬効食品。
スープの実にする、ごまで和える、のりで巻く・・・など、おいしく食べられる工夫をして、活用したいものである。
■ほうれん草とモチの炒め物
材料(8人分)
・ほうれん草・・・1束
・干しモチ・・・1切れを16枚に薄く小口切りしたもの48枚
・桜エビ・・・1/3カップ
・にんにく・・・1片
・ごま油・・・大さじ2
・自然塩・・・小さじ1
・しょう油・・・少々
・揚げ油
<作り方>
①ほうれん草は、サッと塩茹でして水に取り、水気をきって長さ3cmに切ります。にんにくはみじん切りにし桜エビは熱湯をかけてザルに上げ、水気を取ります。
②大さじ2杯のごま油でにんにく、塩を加えて炒め、さらに、ほうれん草を加えて強火で手早く炒めます。
③ ②に桜エビ、揚げモチを加えて炒め、鍋肌からしょうゆ少々ふり香りをつけます。手早く仕上げるのが、美味しく作れるコツです。
鍋に入れたままにしないで、すぐに器に盛りましょう。
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森下敬一 (もりした けいいち) 医学博士
お茶の水クリニック 院長 千島・森下学説『腸管造血』提唱者
東京医科大学卒業後、生理学教室に入り、血液生理学を専攻。千葉大学医学部より学位授与。
新しい血液性理学を土台にした自然医学を提唱し、国際的評価を得ている。
独自の浄血理論と、玄米菜食療法で、慢性病やガンなどに苦しむ数多くの人々を根治させた実績をもつ自然医学の第一人者。
著書に「血液をきれいにして病気を防ぐ、治す 50歳からの食養生 」「ガンは食事で治す」など約80冊がある。