本物の梅干しが消えていく・・・梅干しあっての和食文化

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船瀬俊介連載コラム 

梅干しと聞いて、年配者なら、まず思い出すのが日の丸弁当であろう。

「日の丸弁当というのは九九%が米で、副食は梅干しだけである。栄養学的にみれば、こんな低カロリーで野蛮な弁当はないだろう」

これは名著『梅干しと日本刀』(上・樋日清之著・祥伝社)の一節。


梅干と日本刀 日本人の知恵と独創の歴史(祥伝社新書)

この著は「日本人の知恵と独創の歴史」を見事に活写したことで戦後の優れた比較文化論として名声を博した。

文章はかく続く。

「……だが、これは間違いである。大量の白米とひと粒の梅干しだが、これが胃の中に入ると、この梅干しひと粒が、九九%の米の酸性を中和し、米のカロリーは食べたほとんどが吸収される。

すなわち、日の丸弁当は食べてすぐエネルギーに変わる。労働のための理想食なのだ」

碩学の頼もしい教えではないか。

樋口氏(当時、国学院大学名誉教授)はさらに言う。

「日の丸弁当は、カロリーこそとれるがビタミンの種類が足りないし、これだけを毎H食べているわけにはいかない。

しかし、ビタミン類というものは毎食事、つねに一定の量を摂取しなければいけないというものではない。

たとえば、夕食時にそれを補えばいいのである。いま必要な力ロリーを摂るという意味では、日の丸弁当は、近代的な知恵なのである」

樋口教授は、白米弁当を想定している。これが玄米の日の丸弁当だと、ビタミン類なども各段に優れている。

日の丸弁当もより、さらににパワーアップする。

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梅干しあっての和食文化

私は梅干しに、思い入れが強い。それは九州の田舎の祖母が、手づから漬けてくれた梅干しの味が忘れられないからだ。

梅の実を筵に並べて、何日も土用干しを繰り返す。しだいに黄色くしなびた梅を大きなカメに、たっぷりの紅紫蘇と漬け込む。

だから、できあがった梅は見事に真っ赤な紅に染まっている。果肉も鮮やかに美しい。こう書いているだけで、口のなかにツバが溜まる。

梅干しの漬け汁も真っ赤。そして、たっぷり。これが嬉しい。

梅干しの漬け汁は、さまざまな料理に使えるからだ。また紫蘇もたっぷり梅干しに乗っていると、さらに嬉しい。これもまた、ごはんに乗せてもじつに美味しいからだ。

ときどき母が田舎から送ってくれる梅干しは、亡き祖母が漬けた梅干しとまったくおなじ味。

だから、なおのこと嬉しい。昔は、ご飯に必ず一個の梅干しが欠かせなかった。お握りにも梅干し。日本人のご飯に梅干しは欠かせない。つまり梅干し無き和食文化は、考えられない。

その梅干しが、日本人の食卓から急速に消えようとしている。

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本物の梅干しが消えていく……

その理由の一つに、本物の梅干しが、あらかた姿を消してしまったことがある。

駅弁などにあるカリカリの固いやつは論外。東京に住んでいたときデパートの梅干し・漬物専門店で、本物の梅干しを探して往生したことがある。

成分表示に「赤色x号」とか「はちみつ」とか「アミノ酸等」(正体はグルタミン酸ソーダ)などが堂々と添加されているものばかり。

「無添加のものありませんか?」と聞いたら「ウーン……ないねえ」にはガックリ。「これかなァ?」と出された「田舎漬け」なるものが唯一、無添加だったが色が黄色っぽい。

つまり、紅紫蘇をケチっているわけで、これでは梅干しとはいえない。

ハチミツなど入れるのは邪道だ。「酸っぱいのは、好まれないからねえ……」と店頭の親父さんも困ったようにつぶやく。

かつて梅干しの名産地、紀州、和歌山を訪れたことがある。

さすが道路沿いに梅干し屋さんの看板が並ぶ。なかに「酸っぱくない梅干し」があったのでビックリした。

これは「ツンと来ないワサビ」「臭くないクサヤ」……とうたうに等しい。

私は請われて「紀州梅、応援団長」として現地で村おこしノウハウを講演をした。

そのとき「酸っぱくない梅干しなど、自己否定もはなはだしい。買ってくれるな、と言っているようなもの」と苦言を呈した。

アドバイスとして「酸っぱいは、成功のもと」と下手な洒落で締めたが、爆笑が巻き起こってホッとした。

アメリカでは一個ードル……!

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梅干しの酸っぱさとは、そのクエン酸等によるもの。それがなくなれば、大切な梅干しの薬効Iもなくなってしまう。

かつてアメリカなどでは梅干しが一個一ドルで売られていると聞いて驚いたことがある。

健康づくりに熱心な彼等は、この”レッド・プラム(?)“を東洋の奇跡の栄養食品として厳かに、かつ顔をしかめながらいただいているのだ。

専門家によれば、梅干しのルーツは中国揚子江の奥地。漢方薬の一種として用いられていた。

日本に伝来したのは奈良時代。胃腸やノドの病気に卓効あり、と伝えられた(これは科学的に実証された。後述)。

昔から「梅はその日の難のがれ」といわれてきた。古人は、健康増進、病気治療の梅干しの薬効を熟知していたのだ。

その伝承治療ー— ーー。

◎風邪:梅干し黒焼きにお湯か番茶をさして飲む。

◎のど痛:梅酢を薄めうがいする。

◎打ち身:梅肉を和紙にうすくのばして湿布。肩凝りにも。

◎腐敗防止:おひつ、弁当に入れる。

◎疲労回復:梅酒を飲むと効く。夏バテにもよし。

◎大腸カタル:さかずき一杯ほどの梅酢を飲む(私の母は、これで一発で治った)。

◎食中毒:クエン酸など有機酸やベンズアルデヒドなどの強い抗菌性で予防。

続きはこちらから→ 梅干しは疲労回復、ピロリ菌退治、動脈硬化などにも効果的

月刊マクロビオティック 2002年06月号より

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船瀬俊介 (ふなせ しゅんすけ)地球環境問題評論家

著作 『買ってはいけない!』シリーズ200万部ベストセラー 九州大学理学部を経て、早稲田大学社会学科を卒業後、日本消費者連盟に参加。

『消費者レポート』 などの編集等を担当する。また日米学生会議の日本代表として訪米、米消費者連盟(CU)と交流。

独立後は、医、食、住、環境、消費者問題を中心に執筆、講演活動を展開。

著書に「やってみました!1日1食」「抗がん剤で殺される」「三日食べなきゃ7割治る」「 ワクチンの罠」他、140冊以上。

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