船瀬俊介連載コラム
マスコミのタブー100連発〈95〉(月刊『ザ・フナイ』)
世界は急速に木造都市へ――鉄筋コンクリート、鉄骨ビルは終わった
地球環境評論家 船瀬俊介
火の文明から緑の文明へ!近代の正体は帝国主義だ
「火の文明」から「緑の文明」へ――(図A)。
これが、わたしの主張である。それは文明観であるとともに、歴史観でもある。人類が生き残るには、この文明シフトしかないと確信している。
火の文明とは、いったい何か?それは、近代文明である。
近代とは何か? それは産業革命以降から現代にいたる、およそ二世紀にわたる期間をいう。
その期間の思潮を、世の歴史家は近代主義(モダニズム)と呼んでいる。
これは、姑息なごまかしである。その正体を明かせば、帝国主義(インペリアリズム)なのだ。
帝国主義とは何か?
それは辞書を引けば、きちんと出ている。
「……軍事上、経済上、他国または後進の民族を征服して、大国家を建設しようとする傾向」(『広辞苑』)
わかりやすく言えば、強い国家が弱い国家を、侵略し、略奪し、殺戮し、支配することをいう。
つまりは、国家による詐欺、強盗、殺人である。つまりは、国家犯罪そのものである。
だから、強い国家すなわち欧米列強にとって、自らの行動を帝国主義と言い切ってしまうのは、まずい。正体がばれてしまう。自らの国家犯罪を認めてしまうことになる。
そこで、欧米諸国は、自らの正体をごまかすために近代主義(モダニズム)という耳ざわりのいい言葉に置き換えたのである。
私は、近代から現代にいたる文明を、「火の文明」と定義づけている。エネルギー源としては、石炭、石油、ウランという地下資源で栄える文明である。
一番目の特徴は〝闘争〟である。
帝国主義がその根底にあるのだから、当然である。エネルギー源の地下資源は、世界で偏在している。その奪い合いこそが〝闘争〟なのだ。
わかりやすくいえば戦争である。かくして、約200年にわたる火の文明は戦争、戦争に明け暮れた。
二番目に、火の文明がもたらしたものは〝汚染〟である。化石燃料や地下資源に依存する文明は、大量の廃棄物を地球上に生み出した。
それが、地球規模の汚染拡大の元凶となっている。
三番目の厄災が〝格差〟である。
人口の1%が残り99%の資産より多くの富を独占する……という、人類史上かつてなかったほどに、格差は拡大している。
つまり、地球は1%の富裕層にハイジャックされたのだ。
「知識」から「直感」へ 「物質」から「生命」へ……
今、人類は、戦争、汚染、格差という三重苦にあえいでいる。
これらは、国家犯罪を基調とする火の文明の宿業である。だから、火の文明が急速に終焉に向かっているのも、歴史の帰結だ。
この文明の大転換期に、新たな未来文明として台頭してきたのが「緑の文明」なのだ。
緑の文明を支えるエネルギー源は、自然エネルギーである。それは、地球上にあまねく存在している。
よって、資源の奪い合いである戦争も終結する。つまり、闘争が意味をもたなくなる。そして、汚染や格差も収束に向かう。
火の文明の三重苦は、緑の文明によって、解消されていくのだ。
火の文明は「闘争」を基調として隆盛した。
緑の文明は「共生」を基調として繁栄していく。
それは、男性原理の闘争から、女性原理の共生へ、タオイズム(道教)の説く、陰陽の転換原理の現れと見ることもできる。
ちなみに前者を支配したのは「知識」である。
しかし、後者を支配するのは「直感」である。
悪意に満ちた帝国主義は「知識」を支配し教育・メディアにより大衆を〝洗脳〟してきた。しかし、これら悪意の存在に人類は気づき始めている。
つまり、「知識」は支配の道具にすぎなかった。人類大衆は、それに替わる知の武器として「直感」に目覚め始めている。
野生動物たちは、大自然が与えてくれた直感(本能)に生きている。その姿は優美であり、躍動的であり、一片の迷いもない。
古代ヨガは、その生命の有りように、宇宙の真理を見たのだ。
火の文明の本質は「物質」文明である。
緑の文明の本質は「生命」文明である。
行き詰まった火の文明が凋落し、新たな希望の緑の文明が台頭するのは歴史の道理である。
「物質」から「生命」へ。物から心へ……。
文明シフトは、起こって当然なのである。
では――。
人類の新たな希望、緑の文明の胎動を見てみよう。
木造都市こそ、緑の文明の夜明けだ
本論の主張「世界は急速に木造都市へ――」もまた、緑の文明シフトの一環なのである。
私は、一連の著作で、長きにわたって「木造都市」を訴えてきた。
『コンクリート住宅は9年早死にする』(リヨン社、2002年)(写真B)、『木造革命―木の家づくりから木の街づくりへ』(同、2004年)(写真C)……など。
さらに、名古屋国際木工機械展などで「木造都市の夜明け」と題して、講演活動も行ってきた(写真D)。
その活動は、木材業界誌などからも一定の評価をいただいてきた。
「……地球文明のパラダイム・シフトを訴え続けながら、さらにIT革命からGT(緑の技術)革命への転換を主張。そして、環境・健康・生命を尊重するGT革命こそが、日本の本当の実態と価値を支える道だ……と提唱している」(『WOODMIC(ウッドミック)』2007年9月号)
木造都市とは、何か?
それは、従来の鉄筋コンクリートや鉄骨構造から、木造構造の建築やビルにシフトした都市を指す。
つまり、木造ビルによって構成される都市である。
そんなことが可能なのか?
誰でも、首をひねるだろう。
「……船瀬俊介の『木造都市』構想と、その実現には、絶対に欠かせない要素がある……本物の木造を施工する確かな技術と実践知識が不可欠なのだ」(同誌)
木造ビルを可能に! KES構法
その木造都市の実現を決定づける技術が、株式会社シェルターが開発したKES構法だ(写真E)。
同社社長、木村一義氏が開発した画期的な金物ジョイント構法だ。
それは、3S(シンプル、スピード、ストロング)を誇る。その長所がいかんなく発揮された例が、同社が2001年に完成させた岩手県の旧浄法寺町庁舎だ(写真F)。
岩手県二戸郡浄法寺町(建築当時:現二戸市)の庁舎は、木造ビルのエポックメーキングな作品として評価されている。
当初、他業者による鉄筋コンクリート造の同庁舎の見積額は19億円だった。これに対して、株式会社シェルターは木造で、5億9000万円で完成させている。
約3分の1の価格で、見事な木造ビルが出現したのだ。その内装、照明も見事の一語に尽きる。
さらに、この木造庁舎は鉄筋コンクリート構造より4倍以上の長寿命を誇る。
価格は3分の1、寿命は4倍……。
これが、株式会社シェルター、木造ビルの底力なのだ。
この浄法寺庁舎は、照明をはじめ、幾多の建築賞を受賞している。
鉄筋コンクリート建築の3分の1という驚異的コストを実現したのは、KES構法のシンプルさにある。
それまで、旧来の木造工法は、仕口継手という匠の技が求められた。
しかし、KES構法は、接合金具に金属棒(ピン)を打ち込むだけですむ。
「技術はいりません。腕力だけあればいい」と木村社長は笑う。このシンプルさが飛躍的建設スピードにつながる。
なにしろ、店舗建築なら一日で棟上工事が完了する……。舌を巻く驚異的速さだ。その工期の短さが、驚きのコストダウンを可能にする。
震度7、巨大津波の直撃にも耐えたさらに3Sの三番目、ストロング(強さ)も驚嘆に値する。
その強度がいかんなく発揮されるのが耐震性能だ。(写真G)は、阪神淡路大震災の震度7に無傷で耐えたKES構法の三階建て住宅だ。
周辺は、まるで爆撃か空襲にあったかのように住宅街は壊滅状態だった。
そこで、KES住宅だけが完全無欠の姿で立ち残ったのだ。
この阪神大震災はKES構法の耐震性能の得難い実証試験となった。なんと、71棟のKES住宅すべてが無傷で残ったのである。
その耐震強度は、2016 年の熊本大震災でもいかんなく発揮された。
(写真H)は、震度7の直撃にも、ガラス一枚も割れることなく無傷で耐えた保育園だ。
また、KES構法は東日本大震災の高さ20メートル近い津波にも耐えた。
(写真I)の建物右部分は鉄筋コンクリート構造だったが、津波で壊滅した。
左部分のKES構法は、津波の直撃にも原形をとどめている。鉄筋コンクリートビルは地震に脆く、木造ビルは強い。
これは、意外に思われるだろう。その強度の違いを生み出しているのが、ビルの〝軽さ〟なのだ。
同じサイズなら、木造ビルは鉄筋コンクリートの重さの約5分の1。それを地震動が襲ったとする。
鉄筋コンクリート建築は5倍の自重がある。そのため5倍の慣性力が建物にかかってしまう。つまり、自らの重さで建物が破壊される。
これに対して、5分の1の軽さの木造ビルには、地震の破壊力も5分の1以下となるのだ。
続きはこちらより購読をお願いします: ザ・フナイ 2018年2月号
ザ・フナイ 2018年2月号 マスコミのタブー100連発〈95〉 より
月刊『ザ・フナイ』は、船井幸雄が「世の中を変える意識と行動力を持つ人に向けて発信する」と決意し、(株)船井メディアより2007年10月号から創刊した雑誌です。
選りすぐりの豪華執筆陣による、新聞・テレビなどが報道しない世界の裏の動き・情報を、毎月お届けしています。
舩井幸雄が自らの多様な人脈の中から選りすぐった豪華執筆者からの情報をはじめとして、まだ広く知られていない諸分野の情報、先がけた情報を、偏った一方的な見解ではなく様々な視点を用いて、毎月お届けしています。
【マス・メディアには載らない本当の情報がここにはある】
月刊誌『ザ・フナイ』: http://evavision.shop-pro.jp/
月刊誌『ザ・フナイ』年間購読: http://evavision.shop-pro.jp/?pid=112414187
【アマゾン・リンク】
バックナンバー一覧はこちらから: 月刊 ザ・フナイ
船瀬俊介 (ふなせ しゅんすけ)地球環境問題評論家
著作 『買ってはいけない!』シリーズ200万部ベストセラー 九州大学理学部を経て、早稲田大学社会学科を卒業後、日本消費者連盟に参加。
『消費者レポート』 などの編集等を担当する。また日米学生会議の日本代表として訪米、米消費者連盟(CU)と交流。
独立後は、医、食、住、環境、消費者問題を中心に執筆、講演活動を展開。
船瀬俊介公式ホームページ= http://funase.net/
船瀬俊介公式facebook= https://www.facebook.com/funaseshun
船瀬俊介が塾長をつとめる勉強会「船瀬塾」= https://www.facebook.com/funase.juku
著書に「やってみました!1日1食」「抗がん剤で殺される」「三日食べなきゃ7割治る」「 ワクチンの罠」他、140冊以上。