マクロビオティック one テーマ18 (文)ムスビの会主宰 岡部賢二
人間の思考を管理する顕在意識と潜在意識
今、書店で自己肯定力を高める本が大人気ですが、なぜなのでしょう。
人間の意識には思考を管理する顕在意識(認知脳)と無意識(感情脳)があります。
顕在意識は自分にとって良いか悪いかという善悪の判断を行っており、これは理性や知識、言語機能を司る大脳新皮質が管理しています。
それに対して潜在意識は、好き嫌いや、快・不快といった情動や本能を司る大脳辺縁系によって管理されています。
潜在意識は私たちの身のまわりに関する情報の97%を自動で処理していて、食べものの好みや生活のリズム、言葉や考え方のクセ、表情、人間関係、外からの情報や刺激に対する反応など、無意識下で行われる全ての行動を支配しています。
また、血液や体液の循環、呼吸、消化、排泄といった肉体の不随運動(意識しなくても行われている営み)もコントロールしており、いわば無意識下で正確に動く自動制御装置のようなものです。
潜在意識には顕在意識の30倍から50倍もの力が
この潜在意識に何らかのプログラミングがなされると潜在意識ではそのパターンを手離さないという慣性の法則が働きます。
たとえば12歳くらいまでに教育や宗教、マスコミ等によって徐々に先入観、思い込み、決めつけ、常識といったものを埋め込まれると、ある種のフィルター(色メガネ)が形成され、それが固定観念化していきます。
また、過去に体験した辛い経験(トラウマ・心理的外傷)は、劣等感や自責の念、罪悪感といったネガティブエネルギーとして感情脳である潜在意識の中に刷り込まれ不安や心配、執着、嫉妬、疑心、孤独といった感情として残ります。
こうした経験は数十年にわたっても消えず、同じ状況になったり、思い出したりすることで感情の乱れを生じさせます。
つまり感情の乱れは過去の経験がデータ化し、潜在意識から湧きあがっている状態というわけです。
そして、この潜在意識から湧きあがる感情を抑圧し続けると、抑圧されたエネルギーがいつの日か爆発する状況を招きます。
例えば、甘いものを食べたいのに〝我慢〟をしていると、いつか我慢が爆発し甘いスイーツのやけ食いをしてしまうことになります。
なぜなら潜在意識は顕在意識の30倍から50倍もの力を持つと言われていて、頭でいくら食習慣を変えようと決心しても、なかなか継続できないのはこの潜在意識によって引き戻されるからなのです。
潜在意識を味方につける自己肯定の言葉かけ
よって、潜在意識を敵に回すのではなく、味方につけることが必要です。
何をやってもうまくいかない人には、ダメになること(破壊的に働く)が好き、タメになること(建設的に働く)が嫌いという間違った情報がプログラムされています。
潜在意識は繰り返しイメージしたことがインプットされるので、好品を食べたいと思うのではなく、代わりにスリムになった自分、美しくなった自分をイメージすることで、潜在意識を良い方へ振り向けることができるようになります。
いっぽう顕在意識は潜在意識と比べるとはるかに力は弱いのですが、微弱な意志(意図)も意識的に繰り返し入力することで、潜在意識の方向を変えることができます。
例えば、自己嫌悪や自己否定といった固定観念や決めつけ情報がすり込まれている人は、「私って素敵!」とか「自分よありがとう!」、「今の自分が大好き!」、「今日も頑張ったね!」といったような自己肯定の言葉かけを2万回から3万回繰り返し唱えることで、自己否定プログラムを幸せプログラムに上書きすることができるようになります。
感情脳と密接に関係する腸内環境の浄化を
アメリカの神経生理学者のマイケル・ガーション博士が、「腸は考える臓器である」と提唱しているように、腸と感情脳(潜在意識)は密接に関係しています。
実際、感情によって食欲がなくなったり、出てきたりすることからも、その関係性がわかります。
これは見方を変えると腸から潜在意識にフィードバックできるということになります。
時々プチ断食をすると頭がすっきりし、気持ちが穏やかになるのは、腸と感情脳が関係していて、腸の浄化によって潜在意識に蓄積されたネガティブな過去の感情データが上書きされるからだと思われます。
私がこのことに気づいたのは、プチ断食をした後に、物や人への執着、将来への不安や心配がなくなり、あるがままの自分やその状況を受け入れることができるようになり、人生が好転した、という人をたくさん見てきたからです。
さらに腸内環境の浄化に自己肯定のアファメーションを組み合わせることで、潜在意識のプログラムの上書きが効率よくできるようになります。
何をやってもうまく行かないという方は、ぜひこのやり方で潜在意識を味方につけてくださいね!
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月刊「むすび」 2017年6月号より
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Profile おかべ・けんじ
大学在学中に渡米し、肥満の多さに驚いて「アメリカ社会とダイエット食品」をテーマに研究。
日本の伝統食が最高のダイエット食品と気づいた後、正食と出会う。正食協会講師として活躍後、2003年、福岡県の田舎に移り住み、日本玄米正食研究所を開設。
2005年にムスビの会を発足させ、講演や健康指導、プチ断食セミナーやマクロビオティックセミナーを九州各地で開催している。正食協会理事。
著書は「マワリテメクル小宇宙〜暮らしに活かす陰陽五行」(ムスビの会)、「月のリズムでダイエット」(サンマーク出版)、「心とからだをキレイにするマクロビオティック」(研究所)、
「家族を内部被ばくから守る食事法」(廣済堂出版)、「からだのニオイは食事で消す」(河出書房)、「ぐずる子、さわぐ子は食事で変わる!」(廣済堂出版)、「月のリズムで玄米甘酒ダイエット」(パルコ出版)。
ムスビの会ホームページ http://www.musubinewmacro.com