森下敬一 『食べもの健康法』●ぎんなん
ぎんなんはイチョウの実である。この銀杏という植物は、「生きた化石」といわれるように、太古の姿のままで今日も生き続けている。
大変な生命力をもった植物なのだ。
火事などで、木が焼けてしまっても、すぐ根元から芽が出てくるし、千年も経った木でも、ぎんなんをどんどん実らせる。
種には、その植物の生命力が凝縮されている。
昔の人達が、ぎんなんを珍重したのは、その驚異的な生命力にあやかろうとしたのであろう。実際、ぎんなんを常食していると体に力がみなぎってくる。
すぐれたスタミナ食品なのだ。
そして生理的若返り効果も表す。
食物の薬効の本質を知るには、食品分析表に頼るよりも、このような自然哲学的な考え方をした方が、よほど確かなのである。
それはともかく、ぎんなんを多食すると鼻血が出る。
それはリン脂質の作用によるもので、強壮・強精効果をもたらす本体もこれだと思われる。強い精力剤であるから食べ過ぎてはいけない。
中国の古い文献には「白果(ぎんなん)を食うこと千個に実つれば死す」と書かれているそうだ。
1000個などとんでもないことで、150粒くらい一度に食べると嘔吐や呼吸困難をおこす。
過ぎたるは及ばざるが如し、という言葉があるけれど、ぎんなんだけでなく食生活に関する限りは、過剰は不足よりはるかに有害だ。
というより「よい食物」を「少々不足気味」にとることがバイタリティを最高度に高める秘訣。
全身の組織機能が、その不足分を補うために懸命に働くからだ。ぎんなんを常食する場合は、1日に大人5~6粒、子供2~3粒が適当である。
そのぎんなんを焼いて、あるいは炒って食べると、セキやタンがとれ、肺の働きが強められる。これには微量に含まれる青酸配糖体の作用が関係している。
加えて、保温作用もあるので、夜尿症、頻尿にも卓効をあらわす。夜尿症の場合は寝る3時間ほど前に食べさせるとよい。
ナマのぎんなんは、加熱したものとは逆に、著しい利尿作用があり、淋病やこしけに特効的効果を表す。
新鮮なナマのぎんなん15粒を、水200ccとともにミキサーにかける。はちみつで味を調えて、空腹時に飲むと、1時間ほどで大量の尿が出る。
銀杏はすぐれた外用薬にもなる。
すり潰したものを塗ると、はれ物、皮膚病、ヒビ、アカギレに効く。これはぎんなんに含まれる蛋白分解酵素の作用によるもの。
ぎんなんの油付けを用いる民間療法が肺結核に効くのも、その酵素作用と大いに関係がある。蛋白質性の老廃物が体内に停滞していることが、肺結核の主要原因の一つだからだ。
ぎんなんの油付けは、ぎんなんを100日ほど、ごま油に漬けこんでつくる。これを適量、毎日食べ続ければ良い。
■ ぎんなんのオリーブ油漬蒸し
材料
・ぎんなん
・オリーブ油
・自然塩
<作り方>
①ぎんなんの薄皮をとり、オリーブ油漬けにしておきます。
②アルミ箔を広げて、オリーブ油漬けのぎんなんに、塩をふって包み、蒸します。
■ こんにゃくとぎんなんの串ざし
材料
・こんにゃく
・ぎんなん
・しょう油
・自然酒
・自然塩
・ごま油
<作り方>
①こんにゃくは、ゆでて1.5cmのサイコロに切り、ぎんなんは塩を入れてゆで皮をむきます。
②こんにゃくは、油で炒め、濃いめの醤油にからめておきます。
③ぎんなんは、油で炒め、自然酒、塩で煎りつけておきます。
④こんにゃくとぎんなんを好みの組み合わせで妻楊枝にさします。
※こんにゃくもぎんなんも味は濃いめにつけたほうが美味しく出来上がります。
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森下敬一 (もりした けいいち) 医学博士
お茶の水クリニック 院長 千島・森下学説『腸管造血』提唱者
東京医科大学卒業後、生理学教室に入り、血液生理学を専攻。千葉大学医学部より学位授与。
新しい血液性理学を土台にした自然医学を提唱し、国際的評価を得ている。
独自の浄血理論と、玄米菜食療法で、慢性病やガンなどに苦しむ数多くの人々を根治させた実績をもつ自然医学の第一人者。
著書に「血液をきれいにして病気を防ぐ、治す 50歳からの食養生 」「ガンは食事で治す」など約80冊がある。