マクロビオティック one テーマ (文)ムスビの会主宰 岡部賢二
今月のテーマ コンニャクを用いた温熱療法の知恵
乾熱と湿熱がある温熱 その違いとは
マクロビオティックの手当て法の中で、生湿布と並んでよく用いられる温熱療法がコンニャ湿布です。
温熱には乾熱と湿熱があり、使い捨てカイロは乾熱に、生姜湿布やコンニャク湿布は湿熱にあたります。なかでも湿熱には乾熱にはない独自のすぐれた働きがあります。
金属が触媒によって酸化し乾熱が発生する使い捨てカイロは、便利な反面低温やけどを引き起こすことがあります。
これは酸化で生じた活性酸素によって赤血球同士がくっつきあい、そのため血流が悪くなり、低温やけどの危険性が生じるからです。
また乾熱は、皮膚表面は温かくなるものの、体の奥に熱が届きにくく、乾熱製品の使い捨てによりゴミが増えるといった問題点があります。
その点、湿熱の場合は水蒸気が皮膚の毛穴から体の深部に浸透するので、低温やけどのリスクが少なく、乾熱とは心地よさが全く違います。
また、湿熱の水蒸気にはマイナスイオンが含まれるので、活性酸素によって団子状にくっつきあった赤血球(血、酸化した血液、食毒化した血液、ドロドロ血液)を本来のサラサラ状態に戻してくれます。これを還元作用といいます。
酸化はサビつきや老化作用を、還元とはその反対のサビ取り、若返りをもたらしてくれます。ここが乾熱と湿熱の一番の違いなのです。
血流よくし老廃物も排泄 コンニャク湿布の効用
コンニャクは97%が水分で、これに多糖類のグルコマンナンと空気の気泡が混じり合ってゲル化(コロイド化)したもので、この気泡が断熱効果として働き、熱を吸うとなかなか冷めにくいという特徴があります。
また、コンニャクにはカルシウムやカリウムといったアルカリ成分が豊富に含まれるので、酸性化した血液を中和し、サラサラ状態に戻す働きがあります。
鍋に水をはり、沸騰してから10分くらいコンニャクをゆでると、1時間くらい温かさが持続します。
温めたコンニャクを3枚のタオルでくるみ、お腹や肝臓、腎臓の上に貼ります。
コンニャクから揮発する水蒸気と熱、コンニャクのアルカリ成分によって血液の流れがよくなり、体内に滞った老廃物が排されて、心地よい感覚に満たされます。
コンニャクは使う毎に小さくなるものの、繰り返し5~6回は使えるので、とてもエコな手当てです。食べ物を使うので、化学物質が皮膚から入り込む経皮毒の心配もありません。
コンニャクが冷めてきたらタオルを1枚、2枚とはがしていき、温度調節をしてください。
「腎」を温めることで不眠症、不妊症にも効果
婦人科と関係する腎臓(陰陽五行の腎・系で「腎」と表現)は、特に冷えに弱い臓器なので、秋から冬場にかけてはコンニャク湿布で温めてあげると元気に働いてくれます。
ホルモンバランスは腎の働きによって管理されているため、腎を温めることで内分泌の状態も改善されます。
そして夜は腎が最も活発に働く時間なので、夜寝る前に腎を温めると、ぐっすり眠れ、朝の目覚めもよくなり、むくみも改善されます。
不眠症の方や生理不順、不妊症、更年期障害、冷え症でお悩みの方は、ぜひ試してみてください。
また、サトイモ科に属するコンニャクには、里芋と同じようにタンパク質や脂肪を分解する成分が含まれています。
牛鍋に糸コンニャクやしらたきを入れるのは、高脂肪・高タンパクの肉を分解するためです。
そのため、腎臓や肝臓をコンニャクで湿布することで、臓器に目詰まりしたタンパク質の腐敗物や油の酸化物を洗い流すことができるのです。
さらに葉のツヤツヤした面を皮膚につけ、その上からコンニャク湿布を施す枇杷の葉コンニャク湿布は効果的です。
枇杷の葉には青酸配糖体のビタミンB17(アミグダリン)が含まれていて、この成分がコンニャクの酵素と熱によって抗がん作用のあるベンツアルデヒドと青酸、鎮痛や殺菌作用のある安息香酸に分解されます。
したがって神経痛やねんざ、がんの痛みなどに優れた効果を発揮してくれます。
塩を入れ保温効果アップ 準備も簡単な手当て法
コンニャクの保温効果を高めるためには、一つまみの塩を入れたお湯でゆでるとよいです。
塩の持つ蓄熱作用が加わり、温かさがより持続します。
さらに、キパワーソルトのような還元力の強い塩を用いれば、コンニャク湿布の還元作用が更に増し、効果が上がるとともに、コンニャクが長持ちします。
また、生姜のしぼり汁を入れたお湯でコンニャクをゆでれば、生姜湿布の代用になります。
生姜湿布よりも準備が簡単で、何度も貼り替える手間が省けるので、忙しいという方におすすめの手当て法です。ぜひ実践してみてください。
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月刊「むすび」 2016年11月号より
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Profile おかべ・けんじ
大学在学中に渡米し、肥満の多さに驚いて「アメリカ社会とダイエット食品」をテーマに研究。
日本の伝統食が最高のダイエット食品と気づいた後、正食と出会う。正食協会講師として活躍後、2003年、福岡県の田舎に移り住み、日本玄米正食研究所を開設。
2005年にムスビの会を発足させ、講演や健康指導、プチ断食セミナーやマクロビオティックセミナーを九州各地で開催している。正食協会理事。
著書は「マワリテメクル小宇宙〜暮らしに活かす陰陽五行」(ムスビの会)、「月のリズムでダイエット」(サンマーク出版)、「心とからだをキレイにするマクロビオティック」(研究所)、
「家族を内部被ばくから守る食事法」(廣済堂出版)、「からだのニオイは食事で消す」(河出書房)、「ぐずる子、さわぐ子は食事で変わる!」(廣済堂出版)、「月のリズムで玄米甘酒ダイエット」(パルコ出版)。
ムスビの会ホームページ http://www.musubinewmacro.com