人の体質を食物により中庸化する陰陽調和【植物の陰陽】

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小澤博樹 連載コラム

前回のコラム: 陰陽論は東洋哲学・東洋思想の基礎をなすもの【マクロビオティック食養生】

植物の陰陽をみる際、植物の形状からそれを判断することは可能である。

根が地中深く垂直に伸びていくものや、茎が地上を這うようにして伸びていくもの、茎の丈が短いものは陽性である。

たとえばゴボウ、タンポポ、人参、南瓜などだ。反対に根が地中で横に広がるもの、茎の丈が長いものは陰性である。例えばトウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモなどがそうだ。

これ以外の方法としては、その植物に含まれるナトリウム(Na)とカリウム(K)の比率をみて判断する方法もある。

表1は日本食品標準成分表に示されている無機成分の分析結果である。この結果からも、食物の陰陽を判定する事ができる。

たとえば生の玄米のK/Na値は125あるのに対し、炊いた玄米のK/Na値は55である。

陰陽論では炊いた玄米が中庸、つまり陰陽のバランスが最も整っている食品であり、そこから、炊いた玄米のK/Naの値、55が植物の中庸を示す値と考えられる。

K/Na値が55より大きければ、その植物は陰性であり、逆にそれより小さければ陽性ということである。

また生の植物より加熱した植物の方が陽性が強いことも、この表から分かる。

これは陽性の要素である火を加えることによって、その植物が陽性化するためである。その事は、成分の変化にも表われる。火を加えると植物中のK(陰性)は減少する。

つまりNaが相対的に多くなる。また、陽性のNaは陽性の火を加えてもそれほどの変化は起こさない。陽と陽が反発し合うからである。

そのためマクロビオティック食養生では、基本的に生食はせず、火を加えて陽性化した食材を多く用いる。

生の野菜をバリバリ食べることが健康に良いかのごとく誤ったイメージが蔓延しているが、実は火を通した方が総じて健康に良い。

野菜を生で食べる習慣は西洋人のものである。彼らは陽性の肉食をするため、その陽を中和しようとして生野菜を食すのである。

特に陰性の病気である癌の患者(ただし陽性の癌もある)に対しては、生食を勧めるべきではない。

陰性体質を改善して治療に導くには、中庸から陽性の食物を摂取する事が大切なのである。

ただし陽性の癌患者は生野菜を食すことも可能だ。

玄米(炊いたもの)は人間の食物としてもっとも中庸に近い植物であり、人間の体質を中庸に近い状態に整えるための基本となる植物で、主食として最適なものである。

陰陽は、常にそのバランスをとりながら、ひとつのものを創りあげている。

例えば、暑い夏の気候、熱帯性の気候は陽性だが、夏にとれる植物や農作物、熱帯地域でとれる植物や農作物は逆に陰性である。

ナス、トマト、ピーマン、スイカ、バナナ、パイナップル、コーヒー、ココアなどがそうだ。

陰陽の調和をはかるため、陽性の気候下では、陰性の植物や農作物しか生育できない。

それら極陰性の植物や農作物を温帯域に住む人々が頻繁に摂取すれば、陰性体質となり、冷え症や低血圧、貧血などをきたす結果となる。

これに冷房という陰性要素が加われば、症状は益々悪化していく。

まして、陰性過多状態にある重病人や末期癌患者がこれらを食せば即、死に繋がる危険性が高い。

逆に冬や寒帯性の気候は陰性であるため、そこで育成する植物や農作物は、陽性となる。

自然薯、ゴボウ、人参、大根などが陽性である。こういった陽性の植物ばかり食せば、人体は陽性に傾くが、このため陽性すぎて発病してしまうということはない。

陽性過多で病気になっている人達は、肉や魚、チーズ、卵などの動物性食品や塩気の多い食品を摂取することに原因がある。

赤ら顔で高血圧、あるいは心筋梗塞などを発病している人達がそれにあたる。

植物の陰陽

植物自体の陰陽の見分け方は表2に示す。

陽性の植物、特に自然薯やゴボウなどは陽性過多の体質者には不向きである。

陽性の植物は陰性体質者にとっては陽性すぎるということはなく、体質の陰陽調和をはかるためによく用いられている。

また、それぞれの植物自体も陰と陽の要素を合わせもっている。

大根を例にとると、大根の葉の部分は上方に伸びていくので陰性、根の部分は地下に垂直に伸びていくので陽性である。

冬の寒い時期は陰性の気候であるから大根の陰性の葉の部分は、それに対応し、陽性化するため小さくなる。

反対に陽性の根の部分は陰性化して肥大する。ここでも気候と植物の間で陰陽の調和がはかられている事が分かる。

春になり暖かい陽性の気候になってくると、陰性の葉の部分はますます陰性化して上方に大きく伸び、花を咲かせる。

そして陰陽の転換(陰極まって陽となる)がおこり陽性の種子を形成する。この時、陽性の根の部分はより陽性化し、硬くなる。

この陰陽の一連の変化はどの植物にもみられる。道端に生えているタンポポも同様に陰陽の変化を繰り返している。試しにその変化を観察してみると良い。

陰陽論に基づいた、マクロビオティック食養生(玄米菜食)では、治病や病気予防、健康維持のために、人の体質を食物により中庸化すること、つまり陰陽調和を重要視しているが、他にも身土不二や一物全体という基本的な考え方がある。

身土不二とは、1305年中国の法師がした仏教書「盧山蓮宗宝鑑」の中に記されている言葉である。

身は人間、土は社会、土地のことを意味する。

その土地、気候風土の元に生活する人間は、その土地、気候風土の元にできた食物を食すことにより、その土地、気候風土と調和して健康に生きていけるという意味合いを持つ言葉である。

昨今、発芽玄米がブームになっているが、発芽玄米自体が極陰性な状態にあり、食養生には不向きである。

食物の種子が発芽成長し花を咲かせ、種子を形成して枯れていくという一連のサイクルの中で、種子(玄米)が一番陽性な状態にある。

しかし玄米を発芽させた時点で、陽極まり陰となるのである。陰性の状態になければその植物は大きく成長していけないからである。

人間も赤ちゃんの時が最も陽性であり、その体が赤い陽性をしているために赤ちゃんと呼んでいる。

その後、母乳という陰性な食物(白い色をしている)を与えられ、少しずつ陰性化し成長していくのである。

玄米(種子)の時期が陽性だと言っても、それはその植物のライフサイクルの中では陽性であるが、それを食す人間にとって玄米は中庸な食物であり、人間の主食としては最適の物である。

また、食材となる農作物は、無農薬有機農法産のものでなければならない。

化学肥料や農薬、除草剤などの化学物質を使用した農作物は、陰性化しており、生命力も乏しく、人体にとって有害だからである。

食養生ではなるべく中庸に近い食物を用いて治病にあたるが、健常人であっても、これに順じたほうが安全である。

食養生に用いられるのは、無農薬有機農法産の全粒穀物(玄米など)、野菜、海藻類、自然塩、温帯産の果物(陽性体質者のみ)、天然醸造の味噌、醤油、納豆(陽性体質者のみ)、豆腐(陽性体質者のみ)などである。

ただし、これらの食物も、自然食品店や健康食品店で販売されているものであれば全て安全だ、と考えるべきではない。

例えば、無農薬有機栽培やJASマークが表記してある玄米であったとしても、それを栽培している田圃に家庭排水や工業廃水が流れこむ用水路の水を引いているのであれば、実質的な無農薬栽培とはなりえない。

当然、低農薬や減農薬栽培でも安全とは言えない。

また、隣接した田圃から、農薬や化学肥料が流入してくるのであれば、尚更、無農薬栽培の米を生産することはできない。

当院では農産物やその加工食品が安全であるか否かを見極める為にPRA波動測定装置(コラム「波動療法について」波動測定装置「ラジオニクス」 参照)を用いている。

徹底的な化学分析をして有害成分の有無を調べても、それには限界があるし、高額な費用がかかる。

現在のところ人体にとって有害か有益かを判定するにあたっては、波動測定装置により行なわれる検査法以外には無いのだ。

PDF版 image3-1

表3は桜沢如一が創始した日本CI協会が発行している植物の陰陽表を簡略化したものである。参考にしてもらいたい。

こちらに続く: 免疫力が高まれば体内に溜め込んだ毒素の排泄が活発に行なわれる【好転反応と副作用】

前回のコラム: 陰陽論は東洋哲学・東洋思想の基礎をなすもの【マクロビオティック食養生】

【参考文献】

「治す医者か、ごまかす医者か」 小澤博樹・著 三五館

「日本食品標準成分表(二版)」 科学技術庁資源調査会・編 大蔵省印刷局

「マクロビオティック食事法(上)」 久司道夫,久司・アヴェリン・偕代・共著 アレックス・ジャック・編 田村源二・訳 日貿出版社

「食物陰陽表」 日本CI協会

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小澤 博樹

1949年愛知県碧南市生まれ。1974年東邦大学医学部を卒業後、同付属病院にて消化器外科学、一般外科学を専攻。

1984年、碧南市にて小澤医院を開業し、「食養生」を基本とした代替医療を展開し、現在に至る。

現代医学そのものが金儲け主義であると批判。自らは最少の費用で最大の成果を提供しようと模索する。頑固と良心の共存した、清貧な医者である。

マクロビオテック(玄米菜食)による体質改善、免疫力・自然治癒力の向上を図り、病気を治療に導く有床診療所「小澤医院」のHPはこちら→小澤医院

主な著書に「治す医者か、ごまかす医者か―絶対あきらめない患者学」「医者ができること、してはいけないこと―食い改める最善医療」などがある。