磯貝昌寛の正食医学【第67回】夏の半断食
夏の陽と体の陰
春夏秋冬は、DNAの二重らせん同様、陰陽を織りなすものです。春から夏にかけては陽の気が盛り上がり、陰の気は静まります。
逆に、秋から冬にかけては陰の気が盛り上がり、陽の気が静まります。夏は陽の気が最大となります。
陰陽は相補的ですから、環境が陽性になると、そこに生長するものは陰性となります。赤道直下の植物の陰性さが強いのはそのためです。
そして、私たち人間は環境の陽性さに対応するために陰性な食べ物をいただいて調和しています。
しばしば赤道直下に住む人々は呑気でおっとりしていて勤労意欲に欠けるといわれることが少なくないのはそのためです。
陽性な環境がゆえに陰性をたくさん摂って、おっとりするのは自然なことなのです。
私たちの体は、陰性の要素と陽性の要素を共に蓄えて生きています。夏の陽性な環境下では、陰性なエネルギーを消費して生きています。
断食や半断食ではエネルギーの摂取を極力抑えます。
陽性な夏には陰性のエネルギーを体に入れて調和するのですが、その陰性なエネルギーが断食や半断食で入ってこないため、私たちの体は体内に蓄積した陰性な要素をエネルギー化するのです。
自然とは絶妙にできています。体の中で不要なものからエネルギー化されて排出するようになっているのです。
陰性の排毒反応
夏の陽性な環境下では、体に蓄積した陰性な毒素がより排泄されます。
夏の半断食では、涙もろくなったり、ヨダレがたくさん出てきたり、鼻水がとめどなく出てくるということがよくあります。
涙や鼻水が止まらなくなって、ティッシュを抱えていた女性もいます。
特に、若い世代は砂糖や人工甘味料を知らず知らずのうちにたくさん摂って、陰性の毒素をかなり抱えています。
その排毒反応として涙や鼻水、ヨダレが出てくるのです。
他にも、手足の感覚がマヒしたり、悲しい・寂しいなどの精神状態になったりすることも少なくありません。
無気力になったり思考停止になったりするのも陰性の排毒反応です。昼夜問わず眠いのも陰性です。
梅干しの効用
陰性の排毒反応の時、もっとも効果を発揮する食物のひとつに梅干しがあります。そのまま食べてもよいのですが、梅醤番茶にするとその効果はより早いです。
陰性の排毒反応の時には腸が緩んでいることが多いので、葛湯や、葛練りに練り梅、梅醤番茶のエキスを添えて食べるとよいでしょう。
梅醤番茶に本葛粉でとろみをつけた葛入り梅醤番茶も効果的です。
前頭部のみの軽い頭痛は陰性の排毒反応の可能性があります。
そんな時は梅干しの果肉をちぎって痛い部位やこめかみに貼ると知らぬ間に痛みが消えていきます。
とはいえ、自分自身が排毒反応を迎えると、その反応が陰性か陽性か自分では判断がつかない、ということが少なくありません。
判断力は中庸で最も高い状態ですから、陰陽どちらかに偏った状態では判断力は発揮されないのです。
しかし、陰陽の偏りは総合的な判断力は低下させますが、味覚や嗅覚、聴覚などの原始的な感覚はむしろ敏感になります。
敏感になった感覚を統合させ、判断する大脳が混乱しているのが排毒反応時なのです。
夏野菜の効用
陰性の排毒反応時は、梅干しなどの陽性食品だけでなく夏野菜などの陰性食品も必要です。
陰性の反応だからといって陽性の食品のみでは細胞への浸透が弱いのです。
食器洗いをする時、スポンジに水と洗剤を含ませて握ったり緩めたりを繰り返します。
そうすることでスポンジ全体に洗剤が行き渡り、水と相まって洗浄力を高めます。
私たちの細胞も同じです。陰性の反応だからといって陽性一辺倒の食事をしていては細胞全体に陽性のエネルギーは行き渡りません。
逆もまたしかりです。
陰性の排毒反応時にはもちろん陽性食を中心としますが、陰性の食品も摂っていく必要があります。
その際にとても大事なのが、味覚を中心とした感覚なのです。「おいしい」か「おいしくない」かの味覚が体にとっての「合う」「合わない」を示しています。
陰性の排毒反応時、夏野菜が手に入る状況であれば、夏野菜などの陰性な食物は体に蓄積していた陰性の毒素の入れ替わりを促します。
汚いものとキレイなものの入れ替わりを促進するのです。
夏の半断食
断食や半断食を初めて行うという人は、夏の半断食から始めるのが合っています。
私たちの体は、陰性な要素から排毒されていくという性質があります。
陰性は遠心力が強く、陽性は求心力が強いのです。食養を始めると、最初に陰性さが出てきます。
圧力炊きの玄米やごま塩、鉄火みそ、梅醤番茶がおいしく感じるのは、体に陰性な要素がたくさんあるからです。
体に蓄積した陰性の要素は、その遠心性のため体外に抜けていこうとします。断食や半断食をすればその陰性さの抜け方が早く、中庸になっていきやすいのです。
一方で、陽性の毒素はその働きが求心性の強いものですから、なかなか体から抜けていかない、という特徴があります。
夏の次には秋や冬が来ますから、自然な生活をしていると次は動物性の毒素の排毒が始まってくるのです。
春夏秋冬がはっきりしている日本はありがたい風土です。
月刊マクロビオティック 2017年07月号より
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磯貝 昌寛(いそがい まさひろ)
1976年群馬県生まれ。
15歳で桜沢如一「永遠の少年」「宇宙の秩序」を読み、陰陽の物差しで生きることを決意。大学在学中から大森英桜の助手を務め、石田英湾に師事。
食養相談と食養講義に活躍。
「マクロビオティック和道」主宰、「穀菜食の店こくさいや」代表。