日本の酒にまつわるタブーを完膚なきまでに裸にした「ほんものの酒を!」キャンペーン

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船瀬俊介連載コラム

『ほんものの酒を!』(三一新書)という本が手元にある。

なつかしい一冊だ。サブタイトルは「あなたはニセモノを飲んでいる」


ほんものの酒を! (三一新書 921)

私が日本消費者連盟(日消連)のスタッフだったときに執筆した。当時30歳。

若き私は、アメリカのラルフ・ネーダー氏の活躍に魅了され、日本でもネーダーグループのような市民組織をつくらなければ、と燃えていた。

消費者運動といえば、なんだか堅苦しい。しかし、発想の基本は「安全性」と「公正性」のみ。

英語でいえばセイフティアンドフェアネスだ。偶然か、私の頭文字と重なることも、なんとなく愉快だった。

堅苦しい消費者運動というイメージではなく、身近な感覚でとらえてほしい。

その願いで、女性向けに展開したのが「あぶない化粧品」キャンペーンだ。

執筆した『あぶない化粧品』(三一新書)シリーズは100万部を超えるベストセラーとなり四半世紀を経たいまでも版を重ねている。


あぶない化粧品―美しくなるために (三一新書 (896))

居酒屋の飲みニュケーションで

もうひとつ、男性軍にも関心をもってもらいたい。

そこで、大々的に取り組んだのが「ほんものの酒を!」キャンペーンなのだ。

この本は、日本の酒にまつわるタブーを、完膚なきまでに裸にした。やはり約20万部ほどのベストセラーとなり、このシリーズによって日本の酒の世界はガラリと様変わりした。

化粧品問題は、文字通り皮膚感覚で理解していただいた。酒問題は、”飲みニュケーション“で、ロコミで広がって行ったのだ。

私は運動という言葉が嫌いである。もっと肩の力を抜いて世の中を見ていきたい。世の中をよくしていきたい。私の夢は、ただ安心してノンビリ暮らせる世の中だ。

そのためには、身の回りの商品が、アブナイものでは困る。ゴマカシがあっても腹が立つ。その素朴な思いと、若さでとりくんだのが、お酒のキャンペーンだ。

清酒の世界の「五悪六悪」

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まず、清酒——

日本酒の業界では昔から「五悪六悪」という言薬がささやかれてきた。最初聞いたときは、何だろう?と思った。その意味を知ったときには驚き、呆れ、腹が立った。

そこには、清酒業界のゴマカシが凝縮されていたからだ。むろん、消費者にはいっさい知らされない。

業界の裏でささやかれた符丁だったのだ。

[1]三増酒:一升の酒から三升つくる「水増し酒」三倍増醸造酒の略称。

まるでマジックみたいだ。業者は三倍儲かるのでやめられない。ルーツは第二次世界大戦末期の満州の地。

米の枯渇で、なんとか清洒を確保するために苦肉の策であみだされた”水増酒“。三倍に水を加えた分だけ「水っぽくなる」ので、アルコール、ブドウ糖、乳酸などで味を調味した(ごまかした)。

これが敗戦下の焼け跡の日本で生き残り、戦後ニセ酒のルーツとなってしまった。

[2]アル添:日本の清酒の四割は添加アルコール

アルコール添加の略である。俗にアル添酒とよぶ。一九五二年、政府は三増酒をつくるよう業界に行政指導した。

政府がニセ酒づくりを奨励したのだから、呆れる。つまり政府も業界もグルだったのだ。これは、いまも変わらない。

あらゆる業種でこの癒着は横行し当たり前となっている。知らぬは純粋素朴でお人好しの国民ばかりだ。

[3]糖添:ブドウ糖、水アメ、粉アメで甘味つけ糖類添加を略してこういう。

三倍増醸をしてアル添をすると、酒が辛くなる。アルコールが増えるので当然だ。そこで「甘くすりやいいだろ」と、ブドウ糖をぶちこんだ。

さらに水アメ、粉アメまで!ラベルに「醸造用糖類」とあったらブドウ糖、水アメなどが入っていると思うべし。

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戦後の一時は、甘口の酒が流行、一升瓶の中にグラニュー糖換算で茶碗半分くらいの添加糖分Iが含まれていたこともあった。

お酒を飲んだら歯を磨こうーーーと、いいたくなる。むろん気持ちの悪い甘さであったことは、いうまでもない。

[4]合成添加物:味の素から合成乳酸など添加物まみれこのアル添に使われるアルコールが、廃糖蜜アルコールだ。

廃糖蜜とは、南米などで畳サトウキビから大量に砂糖を精製したあとに残るコールタール状の廃棄物。

ブタに食わせても下痢をする。捨てると環境汚染になる。そのやっかいものが、連続式蒸留装置の開発で、工業用アルコールの原料として着目された。

廃棄物で原価もバカ安。酒の増量にももってこいだ。清酒のラベルを見ると「醸造用アルコール」とある。

それが廃糖蜜アルコール。

だいたい日本洒全生産量のアルコール換算で、約四割を占める。つまり日本酒の三増酒からの悪習。

三倍に水増しすれば、風味、旨味なども薄まって当然。そこで味付けをしなければならない。

どんな食品添加物が使われていたのか……?

清酒用添加物の一覧をお目にかける。

▼グリセリン、▼ソルビット、▼グリシン、▼アラニン、▼イソロイシン、▼乳酸、▼酢酸、▼コハク酸、▼フマール酸、▼カエン酸、▼洒石酸、▼塩酸、▼硫酸、▼燐酸、▼炭酸カルシウム酸、

▼硝酸カリウム、▼酸性燐酸カリウム、▼硫酸アンモニア、▼イノシン酸、▼グアニル酸、▼シチジル酸、▼ウリジル酸……など(『日本酒用食品添加物』より)。

書いててイヤになる。ニセ酒をごまかすためには、こんなに食品添加物が必要なのだ。はじめから本物を作ったほうがはるかにカンタンだろうに……。

酒の添加物で大活躍したのが味の素ことグルタミン酸ソーダ。年間に10トン近くが清酒に密かに混入されている……という。

これは脳神経生理学では「神経毒物」に分類されている。

かつて、日本酒を飲んでビンビンに頭が痛くなる二日酔いに悩まされたことがある。このグルタミン酸ソーダの神経毒にやられたのだろう。

[5]オケ買い:下請けに造らせてラベルをペタリ

いまは大幅に減ったが、これも洒業界の悪習のひとつ。つまり有名酒メーカーが、下請けの中小零細メーカーに造らせて自社ラベルをペタリと貼る。

たとえば「剣菱」などオケ買い率が82.4%に達していたこともある。「松竹梅」も75%。つまり四本のうち三本は、他社生産だったのだ。

これには有名ブランドを信仰する消費者にも非はある。

最近は、名前で選ばず、品質で選ぶ酒好きが増えたので、オケ買いも減少している。

[6]級別制:一級よりまずい特級がゴロゴロだった

これは、いまや懐かしい制度だ。これは、私たち消費者運動が廃止においこんだ。消費者はここまでやれることを知ってほしい。

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とにかく級別制ほどメチャクチャ、いい加減なものはなかった。その定義がデタラメ。

特級とは品質が「優良なるもの」、一級とは「佳良なるもの」。そして二級は「それ以外のもの」……にはたまげた。

国税庁は毎年級別審査なるものを開催していた。そこで厳正に審査され特級、一級、ご級が決定されるのかと思えばさにあらず。

特級、一級は税金が高くなるので、それを嫌って出品しない酒が約半数もあった。これらは「それ以外」なので自動的に二級となるのだ。

風味も品質も審査しないで二級ラベルを強制するのだから、これは国家ぐるみのサギ同然だ。これらは「無監査酒」とすべきだったのだ。

だから、特級をしのぐ素晴らしい風味の清酒がゴロゴロあるという奇妙なことがまかり通った。

つまりは税金を多く取りたい国税庁と、高く売りたい有名酒メーカーが組んだサル芝居だったのだ。

日消連などの告発と廃止要求で、政府は慌てて、このサギ表示制度を一九九二年四月、廃止した。

だまされてきた飲ん兵衛こそ、いい面の皮である。

続き: 「旨い!」と唸る酒は昔ながらの製法にこだわっている蔵から生まれる

月刊マクロビオティック 2002年02月号より

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船瀬俊介 (ふなせ しゅんすけ)地球環境問題評論家

著作 『買ってはいけない!』シリーズ200万部ベストセラー 九州大学理学部を経て、早稲田大学社会学科を卒業後、日本消費者連盟に参加。

『消費者レポート』 などの編集等を担当する。また日米学生会議の日本代表として訪米、米消費者連盟(CU)と交流。

独立後は、医、食、住、環境、消費者問題を中心に執筆、講演活動を展開。

船瀬俊介公式ホームページ= http://funase.net/

船瀬俊介公式facebook=  https://www.facebook.com/funaseshun

船瀬俊介が塾長をつとめる勉強会「船瀬塾」=  https://www.facebook.com/funase.juku

著書に「やってみました!1日1食」「抗がん剤で殺される」「三日食べなきゃ7割治る」「 ワクチンの罠」他、140冊以上。

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