磯貝昌寛の正食医学【第58回】 前立腺がん
近年、前立腺がんも他のがんと同様に急増しています。食生活の欧米化と動物食に含まれるホルモン剤、抗生物質が大きな原因となっています。
前立腺がんは、男性ホルモンの過剰かつ異常な働きによって引き起こされています。
動物食は主に男性ホルモンを活性化しますが、成長ホルモン剤などを与えられて育てられた家畜動物の肉を摂ると、男性ホルモンが過剰かつ異常な働きを引き起こし、前立腺がんを発症させるのです。
陸上の家畜動物だけではありません。水中の養殖魚も同様、成長ホルモン剤を多用されて育てられた魚も前立腺がんの原因となっています。
マクロビオティックの食事療法において、多くのがんでは原則的に完全菜食が必須となりますが、特に前立腺がんでは動物食を徹底的に排除します。
ホルモン剤や抗生物質が使われていない動物性のものであっても、前立腺がんの方は摂らない方が賢明です。
前立腺がんの陰陽
前立腺がんは、動物食過剰からくる陽性ながんと言えます。
動物食が男性ホルモンを刺激して陽性な症状を様々に引き起こしますが、食養指導から分かったことの一つに「声がれ」があります。
前立腺がんが進行、あるいは排毒反応が顕著となると「声がれ」がひどくなることが多いのです。
男性ホルモンは体の筋肉や組織を硬くします。
声帯の動きも硬くし、声帯の振動数が減少します。声帯の振動数によって声の高低が変わってきます。振動数が少なくなれば声が低くなるのです。
前立腺がんの進行、あるいは排毒反応の時には、男性ホルモンが顕著に活性化し、声帯の振動が低下して「声がれ」を引き起こしているのです。
現代医学では、前立腺がんの一般的な治療法としてホルモン療法があります。男性ホルモンを抑制するホルモンを補充するのです。
ホルモン療法をしている方々では「声がれ」は稀です。
ホルモン療法は根治療法ではなく、小康状態を保つ療法です。食養療法では前立腺がんの排毒時に「声がれ」がしばしば起こります。
陽性な排毒反応です。
この時に、陽性な毒素を中和するような食事と飲み物、手当てを行うことで根治を目指すのです。
私の経験から、前立腺がんの元となる毒素を排泄して根治を目指すならば、ホルモン療法でなく、マクロビオティックによる食と生活を正す食養生活療法が大事だと感じています。
(急いで根治を目指すと焦りに繋がりよい結果になりません。
10〜20年かけて治していくというゆったりした気持ちで実践していくことが大事です。多くのがんはマクロビオティックを実践して10年以内は何度か大きな排毒反応があるものです。
10年実践すると排毒反応も減り、心身が調和されたことを強く実感します。)
前立腺がんの食箋
前立腺がんはがんの中ではとても陽性さの強いがんです。しかし、前立腺がんの中では陰陽の度合いは様々です。
「声がれ」の強弱でも陰陽をはかれます。声がれが強い方が弱い方に比べて陽性ですが、弱い声がれであっても基本的には陽性です。
また、前立腺がんは骨に転移することが多いのですが、骨の部位のどこに転移するかで陰陽をはかります。
骨盤や大腿骨への転移よりも、膝や膝下の骨に転移する方が陽性です。体の下へ行けば行くほど陽性が強いのです。
声の様子や骨の転移だけでなく、その他の症状も複合的に診ていきます。
白髪が多いか少ないか(白髪が多くなるほど陽性)、ホクロが多いか少ないか(ホクロが多いほど陽性)、左右どちらの足に強く転移があるか(右に多いほど陽性)などの複眼思考は、マクロビオティックの基本です。
前号の「乳がん」の回でも書きましたが、現代のがんには一時的あるいは短中期的に無塩食料理をすすめています。
陽性が強いがんであればあるほど無塩食の期間は長くなる傾向があります。前立腺がんは乳がんよりも陽性ですから、無塩食の期間も長くなります。
しかし、実際その期間はあくまで味覚や症状に応じて臨機応変に変えるのです。
一週間を目標に無塩食を始めても、3日目にどうしても無塩料理が「おいしくない」と感じることもあります。
どう工夫しても無塩料理がおいしく感じられず、箸が進まない時は塩気を入れます。これも前号に書いたことですが、塩に害があるから塩分を摂らないのではないのです。
一時的に排毒を強烈に促す場合に、それも陽性の排毒を促すときに無塩食を行うのです。
前立腺がんの方の食養指導をさせていただいていると、多くの場合、排毒反応として「声がれ」や「骨転移の痛み」が起こってきます。
強い排毒反応は数年に一度の頻度で起こります。
数年に一度、期間は長いときは数ヵ月、短くても数週間起こります。「声がれ」はひどくなると声がなかなか出ないこともあります。
骨転移の痛みは経験したことのない方はわからないほど、周りの人が理解できないほどの痛みのようです。
前立腺がんだけではありませんが、がんの排毒反応の時、極端な食欲不振に陥ることがあります。
「何を食べてもおいしくない」「食べられない」という状態です。食欲は生命力です。生
命力が落ちると食欲もなくなります。
しかし、排毒反応によって、体が陰陽どちらか極端に偏ると、日常食べていた食べ物が食べられなくなることがあるのです。
前立腺がんの方で排毒反応時にリンゴや柑橘類ばかりを食べて乗り切った人もいます。ブロッコリーやセロリをシナモンやカレー味で摂って回復した人もいます。
数週間から数ヵ月間、野菜や果物だけ、それも塩分も入れずに過ごして排毒反応を乗り切るの
ですから、相当陽性が強いのです。
排毒反応を乗り切ると徐々に塩分や穀物も「おいしい」と感じられるようになります。
玄米や塩気が「おいしく」なると症状も落ち着き、安定した日常を送れるのです。
前立腺がんの手当て法
食養手当て法の基本はしょうが湿布と里芋パスターですが、前立腺がんの場合は、陽性さが強ければ全身をしょうが風呂で温めます。
特に骨盤から下半身への骨転移のある場合は、しょうが風呂への入浴がとても効果的です。しょうが風呂でよく温めた後は患部や痛みのある箇所へ里芋パスターを施します。
しょうが風呂に入れるしょうがはすりおろして木綿の袋に入れて風呂の中で揉み出します。
しょうがの量は痛みや症状に応じて変えますが、少なくても300g、多い時は1㎏以上入れる場合もあります。
それほど陽性でない人が濃いしょうがの風呂に入ると、脱塩し過ぎてフラフラになることありますから要注意です。
入浴中から入浴後に「気持ち良い」と感じる程度のしょうが量と入浴時間を見つけてください。
しょうが1㎏のしょうが風呂に1時間入り続け、それも一日に何度も入り、骨転移の痛みから解放された前立腺がんの方がいます。
前立腺がんに限らず、様々な手当てや食を通して、がんの陰陽の度合いを見つけて、その人に合った食事と手当てをしていくことはとても重要なことです。
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磯貝 昌寛(いそがい まさひろ)
1976年群馬県生まれ。
15歳で桜沢如一「永遠の少年」「宇宙の秩序」を読み、陰陽の物差しで生きることを決意。大学在学中から大森英桜の助手を務め、石田英湾に師事。
食養相談と食養講義に活躍。
「マクロビオティック和道」主宰、「穀菜食の店こくさいや」代表。